どんなに気を付けていても、クルマを運転しているかぎり避けがたいトラブルといえるのがフロントガラスへの飛び石です。周りのクルマがたまたま巻き上げた小石が、運悪く自分のクルマのフロントガラスにあたってしまっただけのこと。仕方があません。
しかし、もし自分のクルマにそのようなキズを発見したらどうすればいいでしょう。もちろんダメージが広がらないうちにすぐにでも修理するべきですが、そのクルマがリース車であった場合はどうするのが正解なのか。勝手に修理していいのか、そのことによって違約金などは発生するのか?また、ガラス交換となった場合車検は大丈夫なのか?リース車ユーザーにとって気になる問題。では実のところ、どのように対応するのが正解なのか、調べてみました。
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ヒビが広がって前方視界がゼロに!
なんてことは起こらない。
クルマを運転中、突然“ビシッ!”という衝撃音が聞こえて驚いた、という経験を過去にしたことはないでしょうか。おそらくそれはどこからから飛んできた石(飛び石)がクルマの前面、グリルやバンパー、ボディやフロントガラスにぶつかった音でしょう。
タイヤが巻き込み跳ね飛ばした小石の速度は思いのほか高速です。それがクルマに衝突すれば当然なんらかのダメージを受けます。それがボディなら塗装にキズが付くだけですがぶつかったのがフロントガラスであればどうなるのか。昔の映画やドラマなどでは、フロントガラスに石などが衝突した瞬間、ガラス全面にクモの巣のようにヒビが広がり、あっという間に視界が奪われてしまうというシーン見ることがあります。そのようになってしまうのか?
実は今どきのクルマのフロントガラスは、飛び石などで簡単に割れないような構造を持つ合わせガラスが使われています。合わせガラスとは、2枚のガラスの間に可塑(かそ)化ポリビニールブチラールという樹脂でできた中間膜を挟み込んだもの。そのため、飛び石の衝突程度なら小さな亀裂が入るだけで簡単に粉々にはなりません。そして小さな破片に砕けて飛び散ったりすることもありません。ですから、飛び石程度では、視界を遮ることはなく、そのまま運転を続けることはおそらく可能でしょう。
この合わせガラスの樹脂は優れモノで、ある程度柔軟性があるので、万が一事故などでドライバーや同乗者の身体がフロントガラスに衝突した場合も、衝撃を緩和・吸収してくれる機能も持っています。そういった意味ではとても安全性の高いガラスなのです。とはいえ割れなくても表面にキズがつくことはよくあることです。目立たない小さなキズであれば走行にとりあえずは支障がないかもしれません。中には飛び石によってフロントガラスにキズが付いているのに、気づいていないというケースもあるでしょう。でも、とりあえずヒビも入らず割れなかったからといって、そのまま放っておくわけにはいきません。後で後悔することになります。ではどうするべきなのか。
割れたまま走行するのは危険
違反行為で捕まってしまうかも
まず、飛び石がクルマに衝突したことに気づいたらすぐにクルマを安全な場所に駐車します。そして、フロントガラス周りを入念にチェックしましょう。ガラスの端へのダメージは危険なので特に端っこをチェックします。もしかしたら石がぶつかっただけで、特にダメージを受けていない可能性もあります。しかし、明らかなキズができているかもしれません。また、ガラスにヒビが入り運転に支障がありそうというケースもあるでしょう。
もし、単なるキズではなく明らかにヒビが入っているという場合は、そのまま運転を続けるのは危険です。フロントガラスが割れたまま走行するのは違反行為なのでその場で走行は中止してください。
万が一、フロントガラスが割れた状態で走行してしまうと「道路交通法第62条」に違反する行為となってしまいます。交通の危険を生じさせるような整備状況のクルマ(フロントガラスがわれている視界不良のクルマなどもそれに該当します。)に乗っている、つまりは整備不良ですから警察に発見されれば違反行為として切符を切られてしまう可能性があります。それに、そもそもそのような状態で安全な運転ができるわけもありませんし、非常に危険です。
自分で運転するのはあきらめて、安全な場所にクルマを停め自動車保険のロードサービスやJAFに連絡して、レッカー移動してもらいましょう。そのうえで修理業者に持ち込みリペアもしくは交換を依頼します。これは購入したクルマでも、カーリース車両でも同じです。
そのキズが比較的小さなものであれば交換ではなく修理ができるかもしれませんが素人判断は危険です。目安としては500円硬貨のサイズよりもキズが小さく、また、表面を爪でこすってみて爪が引っ掛からないくらいの浅いキズであれば交換をせず修理で済む可能性があります。
ただし、ガラスの端から10~20㎝以上離れていないとキズが浅くても修理できないとこともあるようです。ガラスの端は走行による振動の影響を受けやすく、修理してもキズが広がってしまう可能性があるのだそうです。
また、前述した目安よりも深手のキズとなっていた場合は交換となります。修理は高額になりますが任意保険の車両保険に加入していれば飛び石によるガラス修理に保険が使用できます。車両保険には補償範囲の広い一般型と、狭いエコノミー型がありますが、飛び石による被害の場合はどちらの補償対象となります。
ただし、車両保険は一度使うと翌年度は1等級ダウンとなり、翌年度の保険料が高くなってしまいます。また、等級が進むのも遅くなってしまいます。見積もりをとり修理代が比較的少額で済むようであれば、車両保険を使わずに自己負担で修理したほうが安くなることがあります。もし、迷うようであれば保険会社や保険の代理店に相談してみてください。
キズを確認したら
まずはリース会社に連絡
では、キズを確認したあと、すぐに修理は必要と判断したのち次はどう行動するべきか。自分で購入したクルマであれば、自動車保険やJAFなどのロードサービスを頼み修理工場に持ち込むのがベストです。ただし、それがリース車だった場合はすぐに修理依頼をするのではなく、まずはリース会社に連絡するべきでしょう。なぜなら、リース時の契約によっては、ユーザーが勝手に修理をしてしまうことを契約違反としているケースもあるからです。
また、ユーザー側で修理工場に持ち込む場合もリース会社があらかじめ指定した工場で修理しないと、契約違反とされている場合や、事前に報告が義務付けられているということもあります。
もし、ドライブ先でトラブルが起き、指定工場の持ち込むことが困難でユーザー側でその地域の他の業者に修理を依頼するとなったという場合ですが、その時も事前にキズの状況などをリース会社への報告が義務付けられてる場合があるので、とにかく修理を行う前にリース会社に問い合わせてみてください。
もしかしたら飛び石のような不可抗力による修理はリース会社側の費用負担で修理が可能な場合もあります。まずはリース会社に連絡するということが大切です。
問い合わせをして、ユーザー負担による修理してくださいとされた場合はロードサービスを依頼し修理業者にクルマを持ち込みましょう。しかし、キズの程度を見てガラス表面にわずかな跡が残るだけであれば、ロードサービスを利用せず自走して修理業者に持ち込むということも可能です。
ただし、その際も運転は慎重に行ってください。走行中の振動はガラスにストレスを与え小さかったキズが広がってしまう可能性もあります。特に、ガラス表面に爪が引っ掛かるようなキズは危険です。振動などでキズが大きく広がりヒビとなってしまう可能性があります。取り返しのつかないダメージにまで広がらないように穏やかな運転を心がけましょう。
もし、近くにコンビニなどがあったらセロハンテープを入手しキズの上から貼ることで応急処置するのも良いでしょう。キズをセロハンテープで保護し、走行時の風圧から保護することでキズの拡大を防ぐ効果があるといわれています。ただし、これはあくまで応急処置であり、その効果は限定的なものなので衝撃を受けないように運転はとにかく慎重に行ってください。
フロントガラス交換なら
修理費用は5万~10万円!
ガラスの修理費用はキズの大きさや損傷を受けた場所によりますが大体1万5,000円~2万5,000円ほどのようです。そして交換となった場合は一気に費用はかさみ5万円から10万円くらいはかかります。輸入車や高級車などの場合はそれよりも高額になるかもしれません。修理だけでもそんなにかかるなら市販のガラスリペアキットなどで修理してしまおうと考える方も中にはいるかもしれません。
大手ネット通販サイトなどを検索すると安価なガラスリペアキットがたくさん販売されています。それらはキズの中にUVレジン(紫外線で硬化するレジン)などの透明な樹脂を埋め込み、キズを目立たなくするというものです。こういったキットで対応できるキズは1㎝以下の極小さなものですがうまく作業をすれば、素人でも遠目にはわからない程度にまで補修することは可能です。
しかし、そういった市販キットの使用はあまりおススメできません。なぜなら素人による修理では強度などが不安ですし、また仕上がりも完ぺきとはいきません。とりあえずキズがふさがりヒビも広がらなければいいやと自分でリペアした結果、不完全な修理となり、のちにそのせいで車検が通らなくなってしまったなどということも起こりえます。
クルマの保安基準の大29条(窓ガラス)、告示(第195条)の規定では、窓ガラスが損傷している場合でも、運転者の視野が確保でき、容易に貫通されない状態で運転者の視野を妨げるひずみの無いものであれば車検に通るとされています。
つまり補修されたガラスでも基準を満たしていれば問題ないということですなのですが、DIYでのフロントガラス修理が不完全な場合、前述した基準を満たしていないと検査員に判断され車検をクリアできないこともあるのです。あえてそのようなリスクを負うよりも、完璧な仕上がりが期待できるプロの手による修理を行うべきでしょう。
さらに、リスクはもう一つあります。それはリース契約満了時の査定額に影響が出る可能性です。カーリースの契約ではじめにはクルマの残存価格(残価)が設定されます。そしてリース契約終了後は原状回復させて返却するのがルールです。しかし、不完全(と判断されかねない)な修理を行ったクルマでは、リース契約時に設定した残価に満たないと判断されることもないとは言えません。そうなった場合は残価と契約満了時の車体価値の差額分を清算金として支払うことにあるかもしれません。
修理代金をケチったばかりに後で高額の清算金を支払うことになったというのでは、せっかく経済的なカーリースを利用した意味がありません。そもそもフロントガラスの修理は安全にもかかわるものなので、プロによる修理を行うのがベストなのです。もしリース会社による指定の修理工場がない場合は、ネットなどで実績や評判などをチェックしたうえでクルマのガラス修理や交換などを専門に行っている業者に修理を依頼しましょう。
飛び石によるフロントガラスへのダメージは不可抗力でありいつ起こるかわかりません。リース車両の場合はガラスを修理する際に契約しているリース会社によってその正しい対応が変わってきます。万が一のトラブルの際にはどのように対応するべきなのか、契約時にあらかじめ確認しておくのも良いかもしれません。