セダンにかわり今やSUVこそがスタンダードなクルマだ、といってもいいほど勢力図が完全に書きかえられてしまいました。あのクラウンでさえ時期モデルはSUVになると噂されているくらいですから、もはやこの流れは変えられないのかもしれません。

そんなSUV全盛となる前から高く評価されていたのが日産のエクストレイルです。いわばこの分野の先駆者。初代から優れた悪路走破性とやりすぎない適度に硬派なスタイリング、さらにアウトドアでの優れた使い勝手を売りにして独自のファンを増やしてきました。

また、手ごろなサイズながらミニバンのように広々とした室内だったことも高く評価されています。そしてもう一つ大きな魅力となっているのが、3列シートが選べるということ。ミニバンからの乗り換えの際、3列シートが選べるかどうかは家族を説得するにも大きな問題です。それが選べるというのは大きいポイント。

でも、実際のところエクストレイルの3列シートは実用的なものなのか。また同じグレードに2列シートと3列シートがあるなら、あえて3列シートを選ぶだけのメリットがあるのか、検証してみました。

SUVらしい優れた走破性と
存在感満点の個性的なデザイン


(引用:日産公式HP)

日産エクストレイルは現行モデルが3代目。こちらが2013年登場なので、すでに8年経過(2021年現在)しているわけです。かなりのロングセラー。

しかし、すでに次期型がうわさされており、兄弟車である英国向けの「ローグ」はその姿がすでに発表されていますので、次期型4代目エクストレイルもおそらく2021年中には投入されるとことになるのでしょう。

とはいえ、現行の3代目もまだまだ根強い人気があります。2代目までの、直線を基調として武骨なデザインをブラッシュアップし、クロスオーバーSUVテイストを盛り込みながらも、ハードなイメージは決してなくしていない、絶妙なバランスのデザインはエクストレイルならではのもの。

また、フロントマスクも印象的。日産のアイコンであるVモーショングリルがインパクト満点で、独自の存在感を醸し出しています。

それに、そのサイズ感もちょうどいい。幅1820㎜とコンパクトとは言えませんが、全長は4.7mを切っており街中でももてあますことはありません。その分室内も広くファミリーカーとして問題なく使える。そのうえ、オフロードの走破性は一級品。エクストレイルは初代から、その走りの良さが高く評価されてきましたがそれはこの3代目も同様。

4WDはロックモードを備えたインテリジェント4×4を採用し、雪道など滑りやすい路面でもトラクションを確実に伝えてくれる。さらにインテリジェント ライドコントロール(車体振動抑制システム)機能によって、でこぼこ道でも車体振動を低減。快適な乗り心地を提供してくれます。

ランクルやジムニーといった本格SUVと同等とはいきませんが、クロスオーバーSUVの中でも随一の悪路走破性を持っています。

キャンプやアウトドアスポーツの足としても間違いなく期待に応えてくれるでしょう。こういった独自の個性によって、モデル末期のいまでも根強い人気を保っているのですね。

さらに、エクストレイルならでは大きな特徴がもう一つあります。それは3列シートの7人乗り仕様を設定しているということ。限られたグレードだけですが、これが選べると選べないでは大違い。3列シートがあるからエクストレイルを選んだというオーナーも多いと聞きます。

でも、SUVの3列シートは実際実用的なのでしょうか。エクストレイルの魅力の一つである3列シートがどのようなものなのかあらためてチェックしてみましょう。

ミニバンでなくあえて3列シートの
SUVを選ぶ理由とは


(引用:日産公式HP)

3列シートが欲しいならそもそもミニバンを選べばいいのでは? そんな疑問がまずわきます。でも、ミニバンのいかにもファミリーカー然とした見た目と印象がどうしてもいやだ! という方は一定数いるようです。数は少ないですがSUVに3列シート仕様が一部用意されているというところから見ても間違いないでしょう。

そもそも今のSUVはかつてのような“オフロード専用車“のイメージはありません。むしろセダンやクーペに変わるカッコ良いクルマ、スタンダードなクルマというイメージの方が強いでしょう。

確かに今どきのクロスオーバーSUVはスタイリッシュですし、都会的で土の臭いなんて全くしない。それでいて、広い室内を持ち、荷物もたくさん載せられ実用性にも優れている。確かに魅力的です。車重が重いので燃費面では不利でしょうがセダンやクーペ、ステーションワゴンを駆逐してしまったのは当然かもしれません。

そんなカッコよくて実用的な今どきのクロスオーバーSUVは子育て世代のファミリードライバーにとっても魅力的に映るでしょう。しかし、いざミニバンからの乗り換えとなった場合、ネックになるのがその乗員数。3列シートの7人乗り8人乗りのミニバンから、5人乗りのSUVへの乗り換えだと家族が納得してくれない可能性があります。

たとえ使用機会がほとんどなかったとしても、いざというときに7人(8人)乗ることができるというのは大きなメリットでしょう。

でも、エクストレイルなら3列シート7人乗りを選ぶことができます。これはライバルに対してのアドバンテージといえるでしょう。

とはいえ実際のところエクストレイルの3列シートはどれだけ実用的に使えるのでしょうか。エクストレイルを狙っているという方にとっては気になるところでしょう。そこで詳しく調べてみました。

ライバルに比べてわずかに長い室内長
3列目がリクライニング可能な点も魅力


(引用:日産公式HP)

エクストレイルに限りませんが、基本的にSUVの3列シート車は、2列シート5人乗りグレードと全長は変わりません。つまり同じ室内長に中に1列分シートが追加されているということ。そのためヴォクシーやアルファードのような背の高いミニバンに比べると3列目シートの居住性は決して高くはありません。これは外から見てもすぐに想像できますよね。

SUVの3列目シートはどれも床と座面の間隔が接近していて座ると膝が持ち上がり、腰の落ち込む窮屈な姿勢になってしまいます。

とはいえ座れないかというとそんなことはありません。窮屈ではありますが小さな子供や小柄な方なら十分座ることは可能です。もっともそれで長時間ドライブはきついかもしれませんが。
ちなみにエクストレイルと、3列シートSUVのライバルとで室内長を比較してみましょう。以下になります。

  • エクストレイル 2,555㎜
  • CX-8 2,690㎜
  • CR-V 2,520㎜
  • ランドクルーザープラド 2,520㎜

全長がほぼ5mのCX-8は別格として、CR-Vやプラドに比べるとわずかですがエクストレイルの方が、余裕がある。また、サードシートの背もたれにはリクライニング機能も搭載されていまのでほんの僅かですがエクストレイルの方が快適と言えるのではないでしょうか。もちろんあくまで比べればですが。

それにエクストレイルの3列目シートは簡単にフラットにたたむことができ、さらに防水仕様。普段はステーションワゴン的に使用することもできます。シートをたたんでも荷室でかさばってしまう背の高いミニバンよりもむしろ使い勝手はいい

フレキシブルに使えることを考えればほとんど使用しない3列目シートのために、背の高いミニバンを選ぶよりも、スタイリッシュで走行性能にも優れたSUVを買うほうが合理的と言えると思います。そのほうが運転だってきっと楽しいはず。アウトドアに出かけるにしてもエクストレイルならピッタリです。

くわえて、もう一つ大きな魅力が、エクストレイルの3列シート仕様(20Xi 2WD車)は、同じグレードの2列シート仕様と比べて価格はわずかプラス7万3,700円ということ。その程度の価格差なら、とりあえず3列シート仕様にしておこうかなという気にもなるのではないでしょうか。

モデル末期で熟成された今だからこそ
あえて選ぶ選択も有り


(引用:日産公式HP)

使うか使わないかは別として、エクストレイルの3列シート仕様なかなか魅力的ということが分かりました。ただし、気を付けなくてはいけないのが選択できるグレードが2WDなら20Xi(323万5,100円)、4WDは20Xi Vセレクション(332万9,700円)のみであるということ。

どちらも装備も充実したお買い得なグレードですが、ガソリンエンジンのみで、ハイブリッドは選べないという点が残念なところです。ただ、それが納得できるなら、エクストレイルの3列シート仕様はとても魅力的だと思います。

エクストレイルは新型の登場も遠くはありませんが、改良が繰り返され熟成された、いわば完成形ともいえる現行エクストレイル、意外に良い選択といえるのではないでしょうか。特に3列シート仕様はなかなか魅力的。もしかしたら新型が出てみたら期待はずれだった、などという可能性もないとはいえません。それだったらモデル末期とはいえあえて今のエクストレイルを選ぶという選択も有りなのではないでしょうか。