軽自動車の人気ジャンルといえばスーパーハイトワゴンです。1,700㎜を超える高い全高とスペース効率を重視した四角いボディによりゆったりとした室内空間を持ち、さらにファミリーユースに使いやすスライドドアなどを装備。実用性が高く多くのファンから支持を受けて、今や、軽自動車における販売台数ランキングの上位を占めています。

ホンダのN-BOXダイハツのタント、そしてスーツケースをモチーフとしたスッキリとしたデザインで人気の高いスズキのスペーシアがその代表です。

中でもスズキのスペーシアは先代モデルよりも全高を50mmアップし、室内空間をさらに広げ、安全性装備も充実。加えて質感や使い勝手なども大幅に向上したことで、ホンダのN-BOXと軽自動車ランキングのトップを競い合う人気車となっています。

そんなスズキ・スペーシアに新たな派生モデルとして2018年12月に導入されたのが『スペーシアギア』です。

ハスラー+スペーシア
=スペーシアギア?

スペーシアギアというくらいなので、もちろんスペーシアがベースとなっています。当然ボディシェルやインテリアなどもスペーシアと基本デザインは共通です。しかし、見た目の印象は単なる派生車種の枠を超えて大きく印象が変わっています。まるでハスラーのようなジムニーの用なオフロードテイストがふんだんに盛り込まれているのです。

軽のスーパーハイトワゴンにSUV的なオフロードテイストを盛り込むというのは、今までありそうでなかったジャンル。ダイハツのウェイクなどにアウトドアイメージが多少ありましたが、ここまで徹底したものはおそらくなかったでしょう。

そのためか登場したばかりですがその注目度は非常に高く、ライバルひしめくスーパーハイトワゴンというジャンルなかで大ヒットとなる可能性を秘めています

そんな新ジャンルのスーパーハイトワゴン、スペーシアギアについて、その魅力やどんな点が従来のスペーシアと違っているのがくわしく調べてみました。

デザインも個性的実用性も高い
スペーシアに新たな魅力を加えた

まずスペーシアギアを紹介する前に、ベースとなったスペーシアがどんな車だったのかあらためて見てみしょう。

まず、ジャンルとしては前述の通り軽のスーパーハイトワゴンです。2017年12月にフルモデルチェンジが行われ登場したスズキの軽自動車で、まだ歴史の浅いモデルです。N-BOXやタントなどと同様に全高は1,700mm以上ととても背が高く、後席ドアはスライドドアという特徴を持っています。

また、ファミリーユースにもぴったりなソフトな印象のベースとなるスペーシアに加え、大型のフロントグリルで個性を主張するクールなスペーシアカスタムの2種類のモデルが用意されており、どちらも人気となっています。

エクステリアとインテリアは、スーツケースをモチーフにデザインされており、ボディサイドにはそんなスーツケースを思わせる独特のプレスラインがあしらわれ、それがデザイン上のアクセントにもなっています。

インテリアも凝っていて、インパネアッパーボックスなどにエクステリア同様スーツケースを思わせるデザインが採用され、細部の作りもとても上質収納もたっぷりあり実用性も満点です。

もちろん車内も広々。全高が1,780㎜もあるので大人四人がゆったりと過ごせる余裕があります。

パワーユニットは全てハイブリッドです。いわゆるマイルドハイブリッドでモーター機能付き発電機が減速時に発電、さらにアイドリングストップ後の再始動からエンジンのアシストなどを行います。また、モーター駆動のみで発進することも可能なので従来のマイルドハイブリッドよりはハイブリッドらしさがあるといえるでしょう。

このような特徴を持つスペーシアをベースに、ノーマルやカスタムとは違った新たな個性を加えたのが『スペーシアギア』となります。

並べてみるとこの3つのタイプのスペーシアはベースが同じということが分かりますが、それぞれ見事に独自の個性を放っています。特にスペーシアギアに関しては、SUVテイストの演出の仕方がとても巧み。この辺はハスラーや、大ヒット中のジムニーなどオフロードテイストの軽を作り慣れているスズキだからこそといったところでしょうか。オフロード好きの心をとらえるディテールの処理は大変見事です。

ではどのようなポイントが、ベースとなったスペーシアと変わっているのか、次のパートではそこに関して細かく探ってみましょう。

丸目ヘッドライトにプロテクター
アウトドアテイストを巧みに演出


(引用:スズキ公式HP)

まずこのスペーシアギアのコンセプトですが、スズキによると「広い室内空間とアクティブスタイルを融合したSUVな軽ハイトワゴン」だそうです。

なるほどそのコンセプト通り、エクステリアにはSUVテイストがふんだんに盛り込まれています。例えばフロントフェイスです。SUVをイメージさせる武骨な丸目ヘッドライトとプロテクター風のガーニッシュがとても個性的です。スペーシアやスペーシアカスタムとは大きく印象が変わっており、合わせてバンパー部分にも同じテイストのプロテクター風の処理が施されたことで存在感が大きく増しています。

ボディカラーも、バンパーと同色のガンメタリックツートーンとなっており、ブラックのルーフレール(ルーフレール自体は専用装備ではありませんが)によってアウトドア感を強め、タフな印象を与えています。

また、ボディサイドのプレスラインがあった部分には樹脂製のサイドアンダーガーニッシュが装着されています。ヨーロッパブランドのSUVなどにも使われている定番のアイテムでこれもタフな印象強めるのに一役買っています。

このようなエクステリアのディテールに合わせて、14インチのアルミホイールもカラーをガンメタリックとすることで統一感を演出しています。

インテリアはシートなどがブラックを基調としたものでオレンジ色のステッチを施すことでアウトドアギア的な印象を与えてくれます。

インパネ周りはシルバーやガンメタリックを使ったハードなイメージで目を引くのがツールボックスをモチーフにしたインパネのアッパーボックスです。アルミ製のツールボックスなどに使われている補強用のリブのようなX字のプレスのようなクセントがとても力強い。実際には樹脂製ですが大きく開いてくれるのでデザインだけでなく使いやすさも配慮されています。

さらに、メーターもベースとなったスペーシアと差別化したアウトドアウォッチ風のデザインを採用しており細かな部分まで手を抜いていません。

このようなアウトドアイメージは演出だけでなく機能面にも反映されています。例えば鮮やかなオレンジのステッチが印象的なシート生地は、はっ水加工を施した専用ファブリックなので多少の汚れならすぐに取り除くことができ汚れを気にせずに済みます。アウトドアレジャーやウインタースポーツを楽しむ方であればとてもありがたい装備でしょう。ラゲッジスペースも同様です。

あくまでSUV風なので、
走破性についてベースモデルと同等


(引用:スズキ公式HP)

アウトドアで使う荷物を積めるように、しっかりとラゲッジスペースにもSUVテイストが盛り込まれています。ラゲッジのフロアはハードが樹脂製の防汚タイプになっており、さらにシートバック背面も同じように樹脂で覆われているのです。これなら掃除も簡単。濡れていても、多少汚れていても気にせず積み込む事ができるでしょう。アウトドア風なのではなく、ちゃんとアウトドアユースにも耐えられる作りこみがしっかりなされているのです。

リアシートはレバーを引っ張るだけのワンアクションで倒すことができ(これは他のスペーシアも同様)ます。自転車やサーフボードなども(助手席まで倒せば)積み込むことが可能です。こういった特徴もアウトドアユースにはとても便利なはずです。

ただし一点注意が必要なのが走破性です。見た目はSUV風ですが、最低地上高などはベースとなったノーマルのスペーシアと変わりません。

ですから、SUV風だからといって本格派のクロカンであるジムニーや、ハイトワゴンよりも高めの最低地上高を持つSUVのハスラーのような悪路走破性を期待してはいけません。4WDも用意されていますがあくまで生活四駆走破性に関してはSUV風であることを頭に入れておく必要があるでしょう。とはいえこのクルマに本格的な走破力を求めるという方はほとんどいないでしょう。広く、スライドドアなどが使いやすく、装備なども充実といったスーパーハイトワゴンならではの特徴の方がありがたいはずです。

それでいて、普通のスーパーハイトワゴンには飽きたという方にとってこの今までにないアウトドアテイストを持つスペーシアギアはとても魅力的な一台に映るはずです。まさに“ギア”的なイメージをふんだんにまとったスタイルは他にはない物といえるでしょう。

N-BOX一強のスーパーハイトワゴンの
勢力図を変えることができるか

現在軽自動車の販売台数ランキングはホンダのN-BOXがライバルを圧倒しています。その人気は恐ろしいほどで軽自動車だけでなく登録車含む販売台数ランキングにおいても2018年はナンバーワンとなっています。さらに軽自動車のランキングでは、4年連続販売台数ナンバーワンです。なかなかその牙城は崩れそうにありません。

しかし、スペーシアはその登場以来注目度も高く、N-BOXに対してライバルとして存在感を示してきました。さらにこのスペーシアギアの登場によって、N-BOX一強の勢力図をもしかしたら変えることになるかもしれません。

次の愛車として軽のスーパーハイトワゴンを狙っているという方も、ベストセラーのホンダN-BOXも確かに良いですが、他にはない魅力を持ったこのスペーシアギアに注目してみてはいかがでしょう。特にアウトドアレジャーが好きなファミリーならスペーシアギアは最高の相棒になってくれるはすです。