コンパクトサイズながら箱形ボディで車内は広々。狭いスペースでも乗り降りしやすい後席スライドドアに優れた燃費と高い安全性能も満載。そんな欲しい機能を全て持ち、ファミリードライバーに圧倒的な人気を誇るのが軽自動車のスーパーハイトワゴンです。そして、その軽スーパーハイトワゴンに少しサイズ的な余裕を持たせ、軽自動車ではなく小型車としたのがコンパクトハイトワゴンというジャンルで、その代表がトヨタのルーミーです。今や軽スーパーハイトワゴンに匹敵するほどの人気を誇り、トヨタの中でも圧倒的な人気を持つ大ヒットモデルです。

そんなベストセラーであるルーミーが、つい先日マイナーチェンジを実施しました。いったい何が変わったのか。また兄弟車のタンクや、ベースであるダイハツトールに関しても何か変更はあったのか。くわしいマイナーチェンジの内容についてチェックしてみました。

軽スーパーハイトワゴンよりも
余裕あるスペースと高い安全性

ファミリーに人気のミニバンとして定番となっているのがいわゆるMクラスミニバンです。代表的なのはノア/ヴォクシーやステップワゴン、セレナなど。5ナンバーサイズいっぱいのボックス型ボディで広い室内を実現し、それでいて視点が高いので運転もしやすい。加えてカスタム系のグレードなら見た目にもなかなか迫力があることから、所有する楽しみも味わえると人気の一大ジャンルとしてもはやファミリーカーの定番となっています。

また、それらMクラスミニバンよりも全長が短く、それでいて広い室内を持つのがいわゆるコンパクトミニバン。トヨタシエンタやスペイド。同じようなクルマとしてホンダのフリードなどがありますが、これらのコンパクトミニバンはMクラスミニバンよりもちょっと小さいけれど広さも十分。また経済性の高さもあって人気です。とはいえ、以前に比べるとその人気に少し陰りがみられるようになっています。

おそらくコンパクトミニバンに変わるさらに使い勝手がよくて経済的なクルマが登場したためでしょう。そのクルマとはコンパクトハイトワゴンです。

シエンタやフリードなどよりも全長が短く、ルーフ高は高い。そして後席ドアは両側スライドドアが基本。いうなれば軽自動車のスーパーハイトワゴンの普通車バージョンというイメージ。実に絶妙なサイズ感です。コンパクトミニバンよりも位置づけ的には下になるので価格設定もお買得ですし、燃費も良く安全性能も満載。日本の交通事情を考えるとこれは実によくできています。実際その魅力が受け入れられ今や普通車の中でもトップクラスの人気のジャンルとなっているのです。

恐らくN-BOXやタントなど軽スパーハイトワゴンオーナーが、もう少し広いクルマが欲しいなとなった時におそらくベストなサイズ感なのでしょう。確かに軽自車よりもちょっとだけ長い3.7mの全長に5ナンバーサイズいっぱいではないけれど軽自動車よりも余裕あるワイド感。四隅の間隔もつかみやすいので運転もしやすいでしょう。

軽スーパーハイトワゴンの広さには不満はないけれど幅がギリギリで側面衝突時の安全性がちょっと不安…、などと感じていた方にとってはまさにぴったりなのです。価格も比較的リーズナブル。軽スーパーハイトワゴン+20万円程度とかなり魅力的な設定。これは人気なのもうなずけます。

トヨタのルーミーとタンク、
ダイハツトール、スバルジャスティは4兄弟


(引用:トヨタ公式HP)

そんな今大人気のコンパクトハイトワゴンですが、その中でも特に注目度が高い(つまり人気が高い)のがトヨタのルーミーです。兄弟車として同じトヨタのタンクもありますが、どちらも登場から4年近くたちのにもかかわらずその人気は全く衰えていません。これは凄いことです。

ちなみにどちらもベースとなったのはダイハツのトールです。いわゆるトールのOEM車。さらにスバルのジャスティも同じダイハツトールをベースとした兄弟車。つまりは同じグループ内で(ほぼ同じスペックと似たデザインを持つ)4つの車種があったということ。そんなことすれば人気を食い合ってしまうような気がしますが、実際には全く問題なくそれぞれヒットしているのですから驚きます。ただ、実際にはディーラー網が充実していてブランドとしての人気の高いトヨタバージョンのルーミーとタンクが人気では圧倒しているようですが。

では実際ルーミーとタンクはどれくらい人気なのかと言うと、2020年1月から6月の登録販売台数ランキグを見てみましょう。するとルーミーは半年で3万7,622台を売り、ランキングは8位です。そしてタンクは同じく半年で2万8,458台を売り14位でした。「なんだ、どっちもたいしたことないじゃん」順位だけ見るとそのように思うかもしれませんが、そんなことはありません。この2車を合計してみると6万6,080台です。1位のライズが5万8,492台ですから合計すると2020年上半期普通車登録台数ランキング1位となってしまうのです。

この2車、基本的にはデザイン違いのほぼ同じクルマ。ベースとなったダイハツトールのベースグレードとカスタムグレードを2つに分けて、別系列のトヨタディーラーで販売していただけなので合計するのは決しておかしくはありません。むしろ販売側の都合で2つの名前に分けられているだけ。つまりは普通車として今一番売れているクルマであるといっても決して過言ではないのです。

ルーミーマイナーチェンジの陰で
兄弟車タンクは廃番に!


(引用:トヨタ公式HP)

そしてその人気車であるトヨタルーミーが、2020年9月15日マイナーチェンジを実施しました。人気車種ゆえにどのような変更があったのか非常に気になりますね。新車カーリースでも人気の車種ですし、兄弟車のタンクやダイハツのトールなどと比べてカーリースで選ぶならどれにしようかなと迷っていた人もいるのではないでしょうか。

今回のマイナーチェンジですが実はベース車であるダイハツのトールにマイナーチェンジが実施されたことに伴って行われたもの。ようするにダイハツトールと基本的に同様のマイナーチェンジがルーミーにも実際されたというわけです。

さらに気になるトピックもありました。それはルーミーの兄弟車であった「タンク」がこのマイナーチェンジを受けて廃止、ルーミーに統合されたということ。なぜ十分に売れていたタンクが廃止となってしまったのか?その理由は2020年5月からトヨタの全ラインアップが全店舗で取り扱いできるようになったためです。それ以前はディーラーによってタンクかルーミーどちらかした扱うことができなかったのです。そのためわざわざ別々の車種(中身は同じですが)として販売されていたのですね。でも全店舗で取り扱いが出来るようになってのですからわざわざ姉妹車としてラインナップする必要性がなくなったわけです。

そこでマイナーチェンジをきっかけに車種を統合。その際、販売台数の多かった「ルーミー」に一本化されたというわけです。大型メッキグリルでゴージャスなイメージのルーミーの方に人気も偏っていましたから、今までタンクしか扱えないディーラーからすれば、人気車を売ることができなかった不公平が是正されたということにもなります。そう考えるとタンクの廃止は仕方がないといえるかもしれません。

安全装備と快適装備が充実化
価格はわずかにアップ!


(引用:トヨタ公式HP)

では、今回のルーミーのマイナーチェンジではどのような点が変わったのか。まず価格ですが、155万6500円から209万円(税込)です。旧価格は146万3400円から196万5600円だったのでちょっと上がっています。でも、その分安全装備や快適装備(後述)などが充実しているので、妥当な価格設定と言っていいでしょう。内容を考えればむしろお得かもしれません。

では、なぜお得なのか、一番の理由は予防安全機能の充実化でしょう。以前は一部グレードにはなぜか設定されていなかった「スマートアシスト」が全車標準装備となりました。いまさらという感はありますが、今時のクルマであればむしろ当然ともいえるでしょう。これで安心してどのグレードでも選ぶことができるようになりました。

具体的には衝突回避支援ブレーキ機能(対車両・対歩行者[昼夜])、衝突警報機能(対車両・対歩行者[昼夜])、車線逸脱警報機能、路側逸脱警報、ふらつき警報、ブレーキ制御付誤発進抑制機能(前方・後方)、先行車発進お知らせ機能が全てのグレードに標準搭載されています。

機能的に進化しているものとしては衝突回避支援ブレーキ機能と衝突警報機能の検知対象に、同じ方向を走っているバイクや自転車などの二輪車が加わり、さらに夜間の歩行者も追加となっています。アプリ系のフードデリバリーサービスの自転車による接触事故などが最近問題となっていますが、そういったデリバリー自転車も新型ではカバーされたというわけです。

また、これはカスタム系グレードだけですが、全車速追従機能付ACC(アダプティブクルーズコントロール)なども搭載されました。これは渋滞時の停止までカバーする高機能なタイプで電気式のパーキングブレーキを使うことで停車中にもブレーキペダルから足を離せる「ブレーキホールド」機能も搭載。このように車格から考えると、かなり充実したスペックに進化しています。

他の装備としては快適装備であるウェルカムパワースライドドアが標準化されています。これは降車時にセット(運転席側、助手席がどちらかを選択しておける)をしておくとクルマに近づくだけで全ドアのロックが解除されスライドドアが自動でオープンしてくれるという機能です。子育て世代のファミリードライバーなら、大量の子供の荷物やベビーカーなどを乗せる際などにきっと重宝するはずです。この装備は最廉価グレードであるX以外の全車に標準装備となっています。

また他には、むしろない方が不思議ともいうべき充電用のUSB端子が標準装備(Xグレードのみオプション)となったほか、スマートフォンと連携する9インチディスプレイオーディオが全車にオプション設定となっています。

エンジンは従来型と基本的に同じ1L 3気筒のNAとターボを設定しています。基本はFFですがNAグレードでは4WDを選ぶことも可能です。

気になる燃費ですがWLTCモード燃費でFFターボが16.8km/L、FFのNAでは18.4km/L。ちなみにマイナーチェンジ前のJC08モード燃費では、NAが24.6km/L、ターボで21.8㎞/Lでした。いかにも空気抵抗の大きそうなデザインに小型ながら車重は1.1tもあることを考えれば十分に優秀といえると思います。ただライバルであるスズキのソリオにはさらに燃費に優れたハイブリッドやマイルドハイブリッドが設定されているのにルーミーはないというのがちょっと気になりますが。

タンクのデザインはルーミーの
標準グレードとして新たに設定


(引用:トヨタ公式HP)

装備以外にもエクステリアについても気になるところですが、フロントフェイスのデザインやシート形状、シート表皮などの変更が実施されています。またボディカラーには「クールバイオレットクリスタルシャイン」「ターコイズブルーマイカメタリック」が新採用されました。

そして新しいルーミーでは、標準グレードとカスタムグレードが設定されています。マイチェン前のルーミーにも標準グレードとカスタムグレードが設定されていましたが基本デザインは同じでグリルやバンパーなどディテールの違いによって分けられており基本的なテイストは一緒でした。しかし、新しいルーミーでは標準グレードとカスタムグレードのデザインテイストが明確に分けられています。

ルーミーの標準グレードは、バンパーの大きな台形グリルが特徴的です。スッキリとしたスポーティな雰囲気もあり、そのイメージは旧「タンク」そのもの。そう車名としてはタンクは廃止となりましたがこのようにタンクのデザインテイストはルーミーに受け継がれたのです。

そして、カスタム・シリーズがいわば旧ルーミーの後継車的な位置づけ。特徴であった大きな横桟のメッキグリルをさらに拡大しイカツイ雰囲気をより強調したものとなっています。コンパクトサイズながら迫力満点で、旧ルーミー同様こちらが人気となるのは間違いないでしょう。

このように新しいルーミーでは2つのデザインバリエーションが設定されたのでベースとなったダイハツのトールと同様、一つの車種で2つのデザインバリエーションが選べるようになりました。廃番となったタンクが好きだった方もかつてのタンクのデザインを引き継いだ標準グレードが設定されたのでそちらを選ぶといいでしょう。

ただ、ちょっと残念なのはデザインバリエーションが結果的に減ってしまったということ。旧ルーミーではベースデザインは同じでカスタムと標準グレードが用意されており、そしてそれとは別にタンクにもカスタムと標準グレードがあって、タンクとルーミーで計4つのデザインバリエーションを選択することができました。それなのに、統合されたことで結果的にそのバリエーションが2つに減ってしまったのです。

ただ、トヨタではモデリスタブランドやGRブランドで新型ルーミー用の豊富なカスタマイズパーツをラインアップしているので、個性を演出したいならそういったアイテムを駆使してドレスアップするという選択もありでしょう。ディーラーで購入できる純正オプションパーツなのでカーリース車であっても装着は可能ですし、改造には当たりませんので違約金なども発生しません。気になる方はそちらもチェックしてみてください。

新型ルーミーは正真正銘の
登録台数ランキング1位となるかも


(引用:トヨタ公式HP)

ルーミーとタンク、人気車種が一つに統合されたことで新ルーミーの人気はますます盛り上がること間違いないでしょう。従来は販売台数実質1位でしたが、次は正真正銘日本で一番売れている普通自動車となるかもしれません。今後の販売台数ランキグは要チェックですね。