コンパクトSUVの大ヒットモデル、ロッキーが先日マイナーチェンジを実施しました。このマイナーチェンジによる変更点でなにより気になるのはパワーユニットが刷新されたことです。どう変わったのか既存オーナーは特に気になることでしょう。すでに話題になっていますが、新しいパワーユニットのバリエーションとしてダイハツの乗用車としては初となるハイブリッドシステムが採用されたのが自動車業界界隈では大きなトピックとなっています。

ダイハツが新たに開発した、トヨタのハイブリッドとはちょっと違ったロッキーのハイブリッド。それはいったいどんなものなのか。どんな特徴があって果たして燃費や走りはどうなのか。さらにどれだけお買い得なのか? 気になる新型ロッキーのハイブリッドにスポットを当てて詳細にチェックしてみましょう。

人気のコンパクトSUVダイハツロッキーが
マイナーチェンジを実施


(引用:ダイハツ公式HP)

コンパクトサイズながら存在感ある堂々としたスタイルを持ち、車内も広く実用性も高いということから、発売以来人気を集めているのがダイハツのコンパクトSUVの「ロッキー」です。

2020年度登録台数ランキングでは24位なので、さすがに大ヒットとは言いにくいですが、ロッキーはOEM車としてトヨタにも供給されています。そして、そちらは「ライズ」の名前で売られておりそちらのランキングは2020年の販売台数ランキング第2位です。

ロッキーとライズはバッジ違い(エンブレムや車名が違っているだけ)の同じクルマ。ということはロッキー(と兄弟車)がとにかく大ヒットしている、と考えて間違いではないでしょう。

そんな人気車であるロッキーが先日の2021年11月1日にマイナーチェンジを実施しました。人気車種であるロッキーはマイナーチェンジによっていったい何が変わったのか。

まず、エクステリアでは新デザインのグリルが採用されています。そして専用デザインのホイールなども新たに設定されるなど見た目も変更が実施されています。

また、装備的には上位グレードには電動パーキングブレーキが搭載されていますし、さらに先進安全装備では「全車速追従機能付きクルーズコントロール」が採用されるなど、着実な進化が見られます。

ダイハツの乗用車としては初の
ハイブリッドモデルを投入


(引用:ダイハツ公式HP)

そういった変更も、もちろん重要ではあるのですが、なんといっても最大のトピックはロッキーにハイブリッドグレードが新たに設定されたということでしょう。ダイハツが新開発したハイブリッドシステム「e-SMART HYBRID(イートスマートハイブリッド)」がダイハツ車としてははじめてロッキーに搭載されたのです。

これは、ダイハツオリジナルの乗用車では初のハイブリッド!クルマ詳しい人なら「昔ハイゼットにもハイブリッドってなかったっけ?」なんて思うかもしれませんが、ハイゼットは商用車です。なのでダイハツの乗用車としてはこのロッキーが初のハイブリッドカーなのです。

ちなみにセダンのアルティスにもハイブリッドモデルがありますが、これはトヨタのOEM(カムリのダイハツバージョン)なので、トヨタ製ということで除外です。

ではロッキーにはいったいどんなハイブリッドシステムが採用されたのか? トヨタ系のダイハツだからやっぱりハイブリッドシステムはプリウスやヤリスなどと同じエンジンとモーターの出力を緻密にコントロールして優れた燃費をたたき出す複雑な構造のTHSⅡ(トヨタ・ハイブリッド・システム)なのでしょうか。

ロッキーのハイブリッドは
日産のe-POWERと同じ仕組み?


(引用:ダイハツ公式HP)

結論を先に言いますとロッキーのハイブリッドシステムはトヨタのTHSⅡではありません。いわゆるシリーズハイブリッドです。複雑で高コストなTHSⅡではなく、シンプルで車内スペースなども圧迫せずコスト的にもあまりかからないシリーズハイブリッドシステムを採用しています。確かにこれならコンパクトで低価格が魅力のロッキーにぴったりですね。

このシリーズハイブリッドとはどのような仕組みなのかというと、エンジンと電気モーター、バッテリーを搭載しているという点はTHSⅡと同じですが、エンジンはクルマの駆動力として一切使われません。発電機として働いて電気モーターを駆動するための電気を作っています。

そして、その電気をバッテリーに溜めて、電気モーターを駆動して走行しているというわけです。この仕組み、どこかで聞いたことありませんか? 気が付いた人もいるでしょう。そう、日産のe-POWERとまったく同じ仕組みなのです。両車は同じシリーズハイブリッド。別にシリーズハイブリッドは日産のものではなく、ハイブリッドシステムとしてはかなり古くからあるもの(第二次世界大戦中にポルシェ博士が開発した戦車、マウスがこのシリーズハイブリッド)なので何の問題もありません。

このシリーズハイブリッドはエンジンと電気モーターの役割をきっちりと分けているのでTHSⅡのような動力割機構などの複雑なメカニズムも、高度な制御もいりません。それでいて発電に徹したエンジンの作動効率は非常に高いので、燃料の消費を抑えながら発電し、電気モーターによるトルクフルでスムーズな走りが得られるというわけです。

1.2Lガソリンエンジンで発電を行う
シリーズハイブリッドを採用


(引用:ダイハツ公式HP)

ではスペックを詳細に見てみましょう。ロッキーに新たに設定されたハイブリッドシステムの名前は「e-SMART HYBRIID」です。発電用のエンジンは新開発の1.2Lエンジンで、この1.2Lエンジンは、細かなセッティングなどは違い(ハイブリッド用は発電用として最適化され熱効率がアップしている)ますが2WDのガソリン車にも新搭載されています。

1.2Lエンジンのスペックとしてはハイブリッド用が、パワーが60 kW/ 5,600 rpmでトルクが105 N・m / 3,200~5,200 rpm。ガソリン車用は、パワーが64 kW/ 6,000 rpmで、トルクが113 N・m / 4500 rpmとなっていて、ハイブリッド車の発電用エンジンは、ガソリン車用よりも低回転型で幅広い回転域で効率よく発電しているということが見て取れます。

ちなみに4WDグレード用としては1Lターボエンジンというのも用意されています。こちらはマイチェン前からの継続となるエンジンです。こちらのパワーは72 kW/ 6,000 rpmでトルクが140 N・m /2,400~4,000 rpmと、よりパワフルなスペックとなっています。ロッキーは4WDでも車重は1トン強と比較的軽量なのでこれならきびきび走ってくれるはずです。

ロッキーの4WDモデルはこの1Lターボエンジンのみの設定でハイブリッドは用意されていません。スペース的な問題なのか、それとも価格的な問題なのかわかりませんが、雪国にお住まいの方はこの点がちょっと残念ですね。

そして、ハイブリッドと言えば気になるのは燃費ですが、ロッキーのハイブリッドモデルのWLTCモード燃費は28.0㎞/Lです。対して2WDのガンリンエンジンモデルのWLTCモード燃費は20.7㎞/L。さらに4WDガソリンターボモデルのWLTCモード燃費は17.4㎞/Lとなっています。

比べてみると、やはりハイブリッドの燃費が圧倒的です。ガソリンエンジンモデルだって2WDグレードなら20.7㎞/Lなので相当優秀ですがこの差は非常に大きいといえるでしょう。特にガソリンの価格が高騰している今、このロッキーハイブリッドの優れた燃費は相当に魅力的なのではないでしょうか。

ロッキーハイブリッドは、
ハイブリッドながら価格設定はお手頃


(引用:ダイハツ公式HP)

ロッキーのハイブリッドグレードには2つのグレードが設定されています。それが「Premium G HEV」と「X HEV」です。そしてそれぞれの価格はX HEV が211万6,000円でPremium G HEVが234万7,000円です。どちらも2WDモデルのみとなっています。

ガソリンモデルの2WDエントリーグレードのLが166万7,000円なので、それから比べるとちょっとお高く感じてしまいますが、ハイブリッドでこの価格なら十分お手頃といっていいでしょう。

ちなみに全グレードがe-POWER(シリーズハイブリッド)の日産ノートは202万9,000円~で、トヨタのヤリスハイブリッドは199万8,000円~。コンパクトSUVのヤリスクロスハイブリッドが228万4,000円~となっています。

ライバルと比べてロッキーのハイブリッドが特に安い!とはなりませんが、コンパクトSUVのハイブリッドとしてみるとなかなか絶妙なプライスで十分戦える設定です。

ロッキーの個性的なデザインと、手ごろなサイズ、そして優れたパッケージングに魅力を感じているなら、新しく設定されたロッキーハイブリッドは購入の検討に値する一台となるのではないでしょうか。

ロッキーハイブリッドには4WDの設定がない
4WDが欲しければガソリンターボの一択


(引用:ダイハツ公式HP)

ただ、前述しましたが残念なことにロッキーのハイブリッドには4WDが設定されていません。SUVならやっぱり4WDが欲しい! という場合は1Lターボモデルを選ぶことになります。ライバルのヤリスクロスハイブリッドには4WDグレードもちゃんと設定されているので、その点はちょっと惜しいですね。

ただ、4WDが欲しいなら、ガソリンエンジンの1Lターボがちゃんと用意されています。こちらは1Lターボの4WDでWLTCモード燃費は17.4㎞/Lと決して燃費だって悪くありません。

燃費よりも4WDの雪道走行などでの安心感(ロッキーの4WDはオンデマンド式なので走破性などはあまり期待できませんが)を重視するのであれば、こちらを選ぶのも得策です。価格も208万6,700円~と、ハイブリッドよりも価格はお手頃なので検討の価値は十分にあるでしょう。

それに、ハイブリッドの苦手な高速走行では、ガソリンエンジン車は燃費も伸びるので、燃料費の差も狭まります。カタログ燃費で比べてみてもハイブリッドの高速道路モードWLTC燃費は26.1㎞/Lで、ガソリンターボの高速道路モードWLTC燃費は18.9㎞/Lです。さらにガソリンエンジンの2WDなら高速道路モードWLTC燃費は22.9㎞/Lと高速道路走行ならガソリンエンジンもハイブリッドにかなり迫ります。

もし、日ごろから高速道路を使用した走行が多いのであれば、ガソリンエンジングレードを選ぶ方がトータルコストでは費用が抑えられるということになるかもしれないので、自分のクルマの使用環境をしっかり考えてから選ぶべきだと思います。もし購入を本気で検討しているならそういったこともチェックしておくべきでしょう。

これでダイハツ車にも魅力的な
ハイブリッドという選択肢が加わった


(引用:ダイハツ公式HP)

もともと人気車であったロッキーに、ハイブリッドモデルが加わったということで、今後はさらに販売台数を伸ばすことになるのでしょう。もしライバルひしめく合うコンパクトSUVの中で、コスパに優れた経済性の高い一台を選ぶとなったら、その筆頭としてロッキーハイブリッドは加えておくべき一台になるのは間違いありません。

最後に、ロッキーにハイブリッドが加わったということは、いうまでもありませんが兄弟車であるトヨタのライズにも同じくハイブリッドが加わったということになります。まあダイハツが製造している基本的には同じクルマなのでそれも当然ですね。

ただ、トヨタ車のハイブリッドと言えばTHSが当たり前でしたが、これで、トヨタ車(作っているのはダイハツですが)の新たなハイブリッドシステムとしてシリーズハイブリッドが加わったということになるわけです。

ようはトヨタなら、ハイブリッドシステムの違いでクルマを選ぶこともできるということになるのです。もし機会があれば、トヨタディーラーなどで、例えばヤリスクロスハイブリッドとライズハイブリッドでその走り味の違いなどを比べてみるのも良いかもしれせん。プリウスなどでハイブリッド車にはなじみがかるという方もシリーズハイブリッドでは意外に新鮮な感覚が味わえるかもしれません。