国内では2016年に一旦販売終了となりつつも、2018年に見事復活! そして、それ以来多くのSUVファンの心をつかんで、今や定番の人気SUVとして、常に販売台数ランキング上位をキープし続けているのがトヨタのRAV4です。

RAV4の人気の理由の一つはそのスタイリングでしょう。いかにもオフロード車的な武骨さがありつつも、それでいて本格クロスカントリー4WDほどハードではなく都会にも似合う。その上車内も広くて乗り心地もよく、燃費の良いハイブリッドだって選べる。都会派クロスオーバーSUVでは物足りない、と考える方にとってこれほど万能でピッタリなSUVはないでしょう。売れているのも当然なのです。

そしてそんなRAV4にそのオフロードイメージをさらに発展させたユニークな特別仕様車が設定されました。それがRAV4「Adventure“OFFROAD package”(アドベンチャーオフロードパッケージ)」です。いかにも走破性が高そうな名前を持つこのアドベンチャーオフロードパッケージはいったいどんな特別仕様車なのか? またオフロード走行に適しているというのは本当なのか? 検証してみました。

2020年はトヨタの
新型クロスオーバーSUVが大人気に


(引用:トヨタ公式HP)

2020年は新型コロナの影響もあって新車販売が軒並み前年度割れとなるなど、厳しい結果となりました。あれだけ売れていた軽のスーパーハイトワゴン系もその売れ行きに陰りが見えるなど明るい話はあまりなかったのですが、そんな中でも唯一気を吐いていたのがクロスオーバーSUVというジャンルです。ライズやハリアー、ヤリスクロスといった新型クロスオーバーSUVが注目を集めこれらはどれも売れ行きが好調でした。

ちなみにこれ全てトヨタ車です。クルマが売れない状況の中、さすがトヨタですね。気が付けば2020年はクロスオーバーSUV市場で圧倒的なシェアを獲得していたのです。

このトヨタのSUV快進撃のきっかけはなんだったのか? いろいろ意見はあるでしょうがおそらく2018年に復活し、国内に再投入となったRAV4からではないでしょうか。

それまでのソフトな印象の乗用車的なSUVから、土のにおいのする武骨なイメージへとそのスタイリングを大きく変えたことが功を奏したのでしょう。登場以来販売は好調で、2020年の販売台数ランキングでも15位を獲得。前年度比でも101.6%を記録するなど、厳しかった2020年も人気に陰りが見えるどころかさらに販売台数を伸ばしたのですから凄いです。

RAV4のヒットをきっかけに
クロスオーバーSUVのトレンドが一変


(引用:トヨタ公式HP)

このRAV4のヒットをきっかけに、クロスオーバーSUVのトレンドも、都会に似合うクーペ的なSUVから、ちょっとしたオフロードも走れそうなハードテイストな(それでいてクロカン4WDほどハード過ぎない)SUVへと変わっていったような印象があります。

そんなトレンドの先駆けとなった新型RAV4もすでに登場から2年。そして、さらにその人気を加速させるため、昨年2020年10月にユニークな特別仕様車も投入されました。それがRAV4「Adventure“OFFROAD package”(アドベンチャーオフロードパッケージ)」です。

もともとオフロードのイメージの強い(実際には乗用車的なパッケージングなのですが)RAV4を、さらにハードに仕立てた非常にユニークな特別仕様車。では何がそんなにユニークなのか、どんな特徴を持っているのか、次のパートから詳しく解説していきましょう。

車高を10mm上げロードクリアランスを確保
本格的なオフロード走破性を獲得


(引用:トヨタ公式HP)

RAV4の特別仕様車アドベンチャーオフロードパッケージとはいったいどのようなクルマなのか。SUVの特別仕様車というと、車高を下げてエアロパーツを装着したドレスアップカー的なものが多いのですが、それはとは全くの真逆です。その名前の通り、オフロード走行に適した特別な仕様となっているのが大きな特徴です。

具体的には、専用のダンパーを装着して車高を10mm アップし最低地上高210mm確保。そして、タイヤにオフロード走行にも対応できるオールテレインタイヤを装着

さらにルーフレールも、ルーフラックやルーフボックスなどが装着しやすい機能性にすぐれたブリッジ型ルーフレール(専用デザインのアドベンチャークロスバー/46,200円を別途オプション設定)を採用しています。

そのほかマットブラック塗装の18インチアルミホイールや、グレーメタリック塗装のフロントスキッドプレート専用のリアマークなどエクステリアもオフロードイメージで統一されているのですね。

インテリアに関しても、専用の合成皮革シートにレーザー刻印のマークを刻まれ、スイッチやカップホルダー、各種トレイにレッドステッチが施されるなどワイルドな雰囲気を演出する仕様となっています。

この中でも一番のポイントはやはり車高とタイヤですね。10㎜ですが車高を上げてロードクリアランスを確保し、さらにタイヤもあえてインチダウンしたうえで、オフロードでの走破性に振ったオールテレインタイヤを装着したというのは、メーカー純正特別仕様車としては非常に珍しい内容です。

ダイナミックトルクベクタリングAWDで
滑りやすい路面でも安定した走行が可能


(引用:トヨタ公式HP)

見た目は狙い通りかなりオフロードよりとなっていますが実際の走りはどうなのか? これに関してもかなりのポテンシャルが期待できるようです。このアドベンチャーオフロードパッケージはもともとあるアドベンチャーグレードをベースとした特別仕様車。アドベンチャーグレードは、ガソリン2Lの4WDのみの設定で、このアドベンチャーグレードの4WDシステムは「ダイナミックトルクベクタリングAWD」と名付けられた最新の4WDシステムが搭載されています。

これはグリップの良い舗装路などではFF(前輪駆動)として働いていますが、滑りやすい路面などでは必要に応じて電磁クラッチが作動して瞬時にリヤにも駆動力を配分するというもの。いわゆる生活四駆と同じようにも思えますが、大きく違っているのが、前後の駆動力を100:0から0:100まで可変させることができるということ。

さらにリヤ(アクスル)にも動力分割機構が備わっているという点も大きな違いです。これによって後輪左右のタイヤが電磁クラッチでコントロールすることができ0~100%の範囲で左右の駆動力を適切にコントロールも可能。これによってコーナーで安定した旋回ができるだけでなく、滑りやすい路面やオフロードでも駆動力を確実に伝えることができるというわけなのです。

このようにもともと優れた4WDシステムを搭載しているところに、さらにそのポテンシャルをアップするためにタイヤに225/60R18サイズのオールテレインタイヤを装着。オールテレインタイヤはいわゆるオフロード専用タイヤではなく、舗装路から悪路まで幅広い路面に対応できるバランスの良いタイヤですが舗装路用のタイヤと比べればその悪路でのグリップ力は格段に上です。それにサイドウォールなども万が一のダメージにも強い作りになっています。

また、扁平率が55から60に上げられ衝撃吸収性やタイヤの接地圧を高めているというのも大きなポイントでしょう。本気でオフロードの走破性を上げるためのタイヤセレクトです。トヨタが特別仕様車でここまで本気でオフロード仕様に仕立ててしまったというのですから本当に驚きです。これにはクロスオーバーSUVに否定的なクロカン4WD派もかなり惹かれるものがあるのではないでしょうか。

万人向けではないけれど
個性的な特別装備は他にはない魅力


(引用:トヨタ公式HP)

RAV4の特別仕様車「Adventure“OFFROAD package”」を詳しく調べてみると、本気のオフロード仕様となっているのがよく分かりました。マットブラックでトーンを抑えたエクステリアや、赤いステッチで個性を演出したインテリアも確かに魅力的ではありますが、やはり一番のポイントはオフロード走行性能をアップさせた足回りの変更でしょう。

それでいて価格はベースモデルのAdventureに対してプラス14万円の346万円です。正直これは破格と言っていいと思います。

オフロード走行の機会のない方にとっては、そのオフロード走行のポテンシャルの高さは正直あまり実用的ではないかもしれませんが、RAV4ならではの他のクロスオーバーSUVにはない個性を、さらに発展させたとコンセプトには多くの方が魅力を感じるはずです。

決して万人向けではないかもしれませんが、レアな特別仕様車として将来的にリセールバリューも期待できそうです。これからRAV4の購入やリースを検討されているなら、ちょっとこの「Adventure“OFFROAD package”」にも注目してみてはいかがでしょう。筆者的には是非おすすめしたい一台です。