頑丈で荷物もたっぷり積める。シンプルでちょっとした傷くらいなら気にならない。そんな理由からか最近商用車であるプロボックスをアウトドア用にカスタマイズして乗ることが流行っています。確かにシンプルな四角いスタイルはアウトドアにお似合いそうですし車両価格だって手ごろ。なにより実用性は当然のごとく抜群です。

そして、そんなプロボックスに実はハイブリッドモデルが用意されているのをご存じですか? 商用車にハイブリッドって珍しいような気もしますが、よく考えるとガンガン走る商用車だからこそむしろ燃費の良いハイブリッドこそベスト

そして、このプロボックスハイブリッドこそ、アウトドアユースのパーソナルカーとしてもかなり魅力的な一台なのです。ではそんなプロボックスハイブリッドはいったいどんなクルマなのか、何が魅力なのか詳しく検証してみましょう。

カローラバンの後継車として
2002年に登場したプロボックス


(引用:トヨタ公式HP)

プロボックスは乗用車ではなくバリバリの商用車です。そのためデザインがシンプルで、今どきあまりない真四角なクルマとなっています。しかしそれがかえって新鮮に見えて、シンプルゆえにカスタマイズのベースにもしやすくコンパクト(全幅1,695㎜×全長4,245㎜×全高1,525㎜でシエンタと同じくらい)ながら車内も広い。あらためて見るとキャンプや車中泊などにもピッタリなクルマです。そのため、最近はそんなプロボックスを仕事用ではなく、パーソナルカーとして使うという人が増えています。

そんな本来とは違う目的で人気を集めているプロボックスですが、もちろん本来の商用車としてのポテンシャルも相当に高い。だからこそベストセラーカーとなっているのでしょう。

きっと、マイカーでは所有していないけれど社用車などで毎日使っているという方もきっとたくさんいるはずです。

そんなプロボックスですがその誕生したのは意外に最近で21世紀となってからの2002年の7月です。カローラバンの後継モデルとしてトヨタから新規車種として投入されました。同時にコロナバンの後継車としてサクシードというプロボックスよりちょっとだけ全長の長い兄弟車(現在は絶版)も投入されています。

先代に当たるカローラバンは乗用車であるカローラワゴンをベースとした4ナンバーのライトバンでした。特徴はバブル期に設計されたラウンドフォルムを持つスタイリッシュなデザインです。バニングなどのカスタムとしても人気を集めました。確かに見た目は格好良かったのですが純粋な商用車、貨物車としてみた場合、積載性はそのボディフォルムからして決して高くはありませんでした。その点に不満を持つオーナーも少なくなかったといいます。

そこで新たに投入されたのがプロボックスです。プロボックスははじめから商用のライトバンとして設計されたクルマです。一時期は乗用グレードのワゴンも設定されていましたが、あくまでメインは4ナンバーのバン。そのため実用性や積載性を重視した設計がなされていたのです。

現行のプロボックスは
2014年に登場した2代目モデル


(引用:トヨタ公式HP)

そのスタイリングは先代に当たるカローラバンとは真逆の真四角なデザインを採用。リアゲートも切り立っていてサイドから見てもウインドウはほぼ垂直。いかにも荷物が積めそうな雰囲気です。

そして、実際荷物の積載性は抜群で、耐久性にも優れ、さらに走りもなかなかのもの。そのバンとしてのポテンシャルの高さから大ヒットとなり、もはや国産の4ナンバーライトバンといえばプロボックス、と言ってもいいほどの存在感を放っているのです。

ちなみに、現行モデルは2014年に登場した2代目モデルです。スタイリングが先代とあまり変わっていない(細かな部分では結構変更されているのですが)ので、プロボックスがフルモデルチェンジ(公式にはマイナーチェンジですがその内容から考えればほぼフルモデルチェンジ)をしているということを知らない方もいるかもしれません。

プロットフォーム(車台、シャシー)は初代ヴィッツから2代目のヴィッツに変わり、全長が4,195mmから4,245mmへと少し伸びましたがコンパクトなのは変わらない。

そして、思いのほか走りのポテンシャルが高く、侮れない速さを持ちます。ドライバーであれば、街中や高速をかっ飛ばしているプロボックスを見かけたことが一度はあるはずです。そんな意外なほど速いプロボックスはいったいどんなパワーユニットを搭載しているのか。

2018年に商用バンとしては珍しい
ハイブリッドを設定

もちろん商用車なので特別なパワーユニットは搭載していません。設定されているのは1.3Lと1.5Lの直列4気筒ガソリンエンジン、そして、2018年のマイナーチェンジをきっかけに1.5Lエンジン+モーターのハイブリッドシステムが追加されました。このハイブリッドシステムはベースがヴィッツですので、ヴィッツハイブリッドやアクアと同一のTHSⅡです。

最高出力74ps/4,800rpm、最大トルク11.3kgmの1.5L直4エンジンに、最高出力61ps、最大トルク17.2kgmを発生するモーターを組み合わせたものです。なので走りも基本的には両車に似ています。

ただ、プロボックスハイブリッドはヤリスハイブリッドやアクアよりも車重が80kgほど重い。そのためパフォーマンス的には少し不利なのですが、モーターのみで最大トルク17.2kgmですからそれでも十分な力を備えています。

スタートはモーターのみで走りだし、少し走行するとエンジンが始動してハイブリッド走行となる。速くはないですがスムーズですし動力性能に不足はありません。またガソリンエンジンモデルに比べてハイブリッドなので静粛性が高いというのもポイントでしょう。

乗り心地はというと、さすがに商用車ですので足回りは硬め。また荷室が空の状態ではリアがちょっと跳ねる感じがあります。乗用車のような快適な乗り心地とはいきません。

プロボックスハイブリッドの最大積載量は2名乗車時で350kg。これだけの荷物を乗せた状態で安全に走ることができるようにサスペンションセッティングがなされているから仕方がありません。

しかし、その分キャンプ道具などを荷室に満載した状態でも、安全に走ることができるというメリットもあります。

ハイブリッドはばね上制振制御で
乗り心地はガソリン車よりもソフト


(引用:トヨタ公式HP)

それと、ハイブリッドはガソリンエンジンモデルよりも比較的乗り心地がソフトです。これはハイブリッドには「ばね上制振制御」機能が搭載されているからでしょう。この機能は、路面の凹凸に応じて、モーターのトルクをリアルタイムに制御することで、車体の上下の揺れ(ピッチング)を抑制して、滑らかでフラットな乗り心地に貢献してくれるといったもの。プリウスなどにも搭載されているものですね。そのため快適性は思いのほか悪くありません。

また、ハンドリングですが、これは意外にきびきびしています。ステアリング操作に対するクルマの反応も素直で、狭い道でもストレスなく走ることができる。この辺は都会から田舎道まであらゆる環境で使われることを想定しているクルマだけあって非常に軽快

また、高速道路でも安定していて運転していてストレスがありません。営業車として長時間運転する機会も多いでしょうからこの辺もしっかり作り込まれている。プロボックスハイブリッドは「商用車だから遅い」、「乗り心地がトラックみたい」などということもないわけです。

燃費は22.6㎞/L。ハイブリッドとしては
ちょっと物足りない?


(引用:トヨタ公式HP)

さて、気になるプロボックスハイブリッドの燃費ですがWLTCモード燃費で22.6㎞/Lです。さすがに車重が100kg軽いヤリスHYBRID Xの36.0㎞/Lには及びません。数値だけ見るとハイブリッドとしてはちょっと物足りなさを感じますが、同じプロボックスの1.5Lガソリンエンジンが17.2㎞/L、1.3Lエンジンが16.6㎞/Lなのでこれでも十分に優秀な数値といっていいでしょう。

その分ガソリンタンクの容量はヤリスハイブリッドやアクアよりも6Lも大きい42Lもあります。これなら長距離ドライブだってお手の物。これはプロボックスが商用のバンということでより余裕のある航続距離が求められるからなのでしょう。

お得意様周りや配達、営業や支店から支店への移動といった移動の多い商用車ならではのポイント。パーソナルユースでキャンプなどに使うときにもこのタンク容量の余裕は間違いなくありがたいはずです。

ラゲッジスペース(荷室)ですがこちらはさすが商用車。リヤシート使用状態で573L(VDA法)、リヤシートをたたむと1089Lもあります。ハイブリッド用バッテリーの分ガソリン車よりも少し容量が小さいですが、その差はわずか8~20Lほど。積載重量も50kgほど少なくなっていますがこれでも十分すぎるでしょう。

リヤシートをたたんだ状態で、荷室長1810㎜×荷室幅1420㎜×荷室高935㎜のスクエアでフラットな床面のスペースが確保できるので大概のものが積めて、またよほど長身でなければ楽に寝転がることができる。これを見てもキャンパーたちに人気だというのもうなずけますね。

インテリアや装備は
さすがにちょっと寂しいかも


(引用:トヨタ公式HP)

数少ないネックはインテリアや装備がちょっと質素ということでしょうか。特にインテリアは乗用車的な豪華さはありません。それでもパーソナルユースも想定しているであろうプロボックスハイブリッド最上級グレードFならば、フロントシートのヘッドレストは一体ではなく別体式で乗用車っぽい。全席パワーウインドー(廉価グレードは後席がレギュレーター、いわゆるぐるぐるハンドルです)も付きます。

さらに、リヤシートもちゃんとファブリック(廉価グレードはビニール)ですしヘッドレストもつく。背もたれが起き気味なので座っていてとても快適、とはいえませんが十分人を乗せることができます。倒してしまえばフラットな荷室が作れるのでこれで十分でしょう。そうそう荷室の床もカーペット敷(廉価グレードはビニール)です。

インパネ回りではエアコン操作部やシフトパネルにシルバーの加飾が施されるなどちょっとだけ豪華。さらに、基本がお仕事用のクルマらしく運転席周りにノートパソコンやお弁当箱が置けるインパネテーブルやスマートフォン用のマルチホルダー、そして大容量の1L紙パックがすっぽり入る大型ドリンクホルダーに、A4バインダーにぴったりのインパネトレイなどといった実用装備が満載。こういった装備はキャンプや車中泊にも役立つでしょう。

エクステリアもFならばちょっとだけスタイリッシュ。ホイールにはシルバー塗装のホイールキャップが装着され、アウトサイドのドアハンドルやドアミラー、バックサイドガーニッシュがボディと同色塗装となります。

さらに、リア5面の窓ガラスがスモークとなっていて、ドアミラーに電動格納も付いてくる。加えてオプションですがカラードバンパー(1万6,200円)を選ぶこともできます。

未塗装の樹脂パーツがボディと同色となるだけで商用車っぽい雰囲気も薄まるのでこちらは是非装着したいところ。余裕があれば、さらにオプションのTRDのフロントスポイラー(塗装済3万7,400円)を加えるとこれがかなりスポーティで格好いい。おすすめです。

今どきのクルマとして欠かせない予防安全装備に関してですが、プロボックスは全グレード「Toyota Safety Sense C」が標準装備なので安心。レーザーレーダー+単眼カメラ方式プリクラッシュセーフティシステムやレーンディパーチャーアラート、オートマチックハイビームに先行車発信警告機能など、予防安全装備満載とはいえませんが、必要なものはちゃんと搭載されています。

このように、あらためて詳細にスペックやら装備をチェックしてみると、プロボックスハイブリッドは意外なほどパーソナルユースにも適した、特にアウトドア用ビークルとしてかなり魅力的な一台になっています。

プロボックスハイブリッドは
最上級グレードでも200万2,000円


(引用:トヨタ公式HP)

さて、キャンプや車中泊にぴったりで、(ちょっと我慢は必要ですが)ファミリーユースにも使える魅力的なプロボックスハイブリッドですが、その価格はいくらなのか。

プロボックスハイブリッドのもっともベーシックなグレードDXコンフォートは189万900円です。そしてもっとも上級なグレードFは200万2,000円です。装備内容に差はありますがヤリスハイブリッドやアクアと比べるとちょっと安い設定。

ちなみに同じプロボックスの1.5Lガソリンエンジン車と比べると27万円くらい高いという金額。実に絶妙な価格といえるでしょう。

とはいえ動力性能や静粛性、乗り心地、さらに燃費などを考えると、パーソナルユースでプロボックスをマイカーに選ぶなら、やはりプロボックスハイブリッドのFグレードが最も適しているといえるのではないでしょうか。

ミニバンやコンパクトカーにはない優れた積載性と耐久性を持つプロ仕様のライトバンをマイカーとして使う。さすがに万人におすすめとはいきませんが、人とはちょっと違ったマイカーが欲しい! という方はちょっと注目してみてください。じわじわとブームが広がりつつあるプロボックスの沼にはまってみるのもなかなか面白いかもしれません。