日本におけるミニバンブームのきっかけを作った自動車メーカーといわれているのがホンダです。1994年に、当時のホンダの限られた開発環境と生産設備の中、オデッセイという画期的なミニバンをリリースしたからです。

オデッセイは乗用車的な高級感と、スポーティな走りを持つそれまでにないミニバンとして大ヒット。そして、このオデッセイが火付け役となって、日本国内における一大ミニバンブームが巻き起こったのです。

しかし、先日ホンダから、そんなミニバンブームの先駆者ともいえるオデッセイを2021年で生産を終了するという発表を行いました。決して売れていないわけではなく、また昨年マイナーチェンジを実施したばかりなのに、なぜ今生産を終了してしまうのでしょう。

そんな、惜しまれつつも生産終了が決まったオデッセイについて、生産が終了となる理由や、他にはないミニバンの元祖ならではの魅力などについてあらためて検証してみました。

日本におけるミニバンブームを
けん引してきたオデッセイ


(引用:ホンダ公式HP)

初代オデッセイが日本市場に投入されたのは1994年です。当時日本でもミニバンの人気が徐々に高まりつつあったなか、ブームに乗り遅れまいとホンダが投入したのが初代オデッセイでした。

しかし、当時のホンダには日産セレナやトヨタのエスティマ、マツダのMPVなどといった背の高いスライドドアを装備したミニバンを生産できる設備がなく、またベースとするシャーシなどもありませんでした。そこでホンダは苦肉の策として、セダンであるアコードをベースに、ヒンジドアを持つ背の低いスタイリッシュなミニバンを開発。市場に投入したのです。それが初代オデッセイでした。

まだまだワンボックスカーや商用車的なイメージの強かった当時のミニバン市場に、乗用車的な、それまでのミニバンとは一味違ったミニバンの登場は、むしろ市場からは新鮮な新しいミニバンであるとして受けとめられました。

重心が低く、後席もヒンジドアの乗用車的なオデッセイはセダンなどからの乗り換えにも違和感がなく、それでいて広々とした室内を持ち3列シートで多人数乗車もできると高く評価されホンダ自身が驚くほどの大ヒットを記録したのです。

そして、このヒットを受けてホンダは1996年にスライドドアを持つボックス型ミニバン、いわばファミリー向けのミニバンの本命ともいうべきステップワゴンを投入。こちらも大ヒットを記録。そしてバブル後に売り上げが低迷していたホンダを救ったのです。

2020年末にマイナーチェンジを実施
それなのに2021年で生産終了決定


(引用:ホンダ公式HP)

現在はSUVやコンパクトカー、軽自動車に乗っているという方の中にも、かつてはオデッセイに乗っていた、という方もきっといるのではないでしょうか。それほどまでに大ヒットしたクルマでした。

しかし、そのオデッセイも近年はその人気が落ちてきており、かつてほどの輝きはもはやありません。その理由として考えられるのはミニバンに変わってSUVの人気が上昇しているということもあるでしょう。また、背の低いオデッセイのようなミニバンよりもアルファードなど、背の高い、より立派に見えるミニバンの支持者が増えている、というのもあると思います。

とはいえオデッセイ自体のクルマとしての完成度は非常に高く、スペースも広く、走りだって一級品。それに燃費の良いハイブリッドだって選べます。さらに、オーナーからの評価も上々。決してクルマとして魅力がなかったわけではないのです。

特に昨年末にマイナーチェンジが実施されてからは、その人気は上向いており、評価も上がっていました。それなのにこのタイミングで生産終了となるのは非常に残念としか言いようがありません。

ただ、生産終了になるのは決して売れていないというわけではありませんした。実は別に明確な理由があったのです。では、その理由とはなんなのでしょう。

狭山工場の閉鎖に伴いオデッセイ他
レジェンド、クラリティも生産終了


(引用:ホンダ公式HP)

ホンダによるとオデッセイを生産していた狭山工場が閉鎖となり、寄居工場に集約させることに合わせて狭山工場で生産されていたオデッセイが生産終了になるとのことです。

同様に、狭山工場で生産されていたレジェンドやクラリティなども生産終了となるとのことです。生産拠点がなくなるのであれば仕方がありません。

ただ、狭山工場で生産されていたステップワゴンは、生産終了ではなく継続して生産されることが決定しているようですので、工場閉鎖がきっかけであったとしても、やはりオデッセイにかつてほどの販売台数が見込めないということも理由だったのではと想像できます。

ようするにオデッセイは、ホンダ車ラインナップ中でその存在意義を失ったということなのでしょう。ホンダは2040年までにエンジン車を全廃し、環境性能に優れる(とされている)EVやFCVに移行すると発表しています。

ホンダ車の中でも比較的大排気量のガソリンエンジン(2.4L)を積むオデッセイなので、そういった影響も多少はあるのかもしれません。とはいえオデッセイはまだまだ新車で購入可能ですし、カーリース契約を結ぶことも可能です。

生産終了が決定しているからといって現行のオデッセイが魅力のないクルマというわけではありません。むしろ、昨年末のマイナーチェンジによってその魅力は向上しており、実際販売台数も上向きになっていました。

生産終了あくまでホンダの都合。そのオデッセイのその他にはない個性に魅力を感じているなら、生産がまだ続いている今のうちに購入するなり、リース契約を結ぶなり手を打っておいた方がいいかもしれません。現行オデッセイのデザインやスペックをあらためて見てみると、非常に魅力的なクルマであることが分かるはずです。

マイナーチェンジでイメージ一新
Lクラスミニバンらしいゴージャスなクルマに


(引用:ホンダ公式HP)

ではいったいどのような魅力を備えたミニバンなのか、最終型となる現行のオデッセイに関して、スペックや装備を確認してみましょう。まず直近のマイナーチェンジですが2020年の11月6日に実施されています。昨年末に変わったばかりです。

マイチェン前から何より大きく変わったのはフロントマスクでしょう。フロントフードは70mm高く持ち上げられ、ヘッドライトもLEDの薄型タイプとするなど一目でデザインが一新されていることが分かります。

さらにリヤのコンビランプもフロントのライト同様にフルLED化。こちらはより大型化されており、また、テールゲートの角度もより垂直に近くなってボリューム感が増したように感じられます。

Lクラスミニバンとしてはどちらかというとすっきりとしたスポーティなイメージなったオデッセイが、マイナーチェンジでボリューミーかつLクラスミニバンらしいゴージャスなイメージへとデザインを大きく変更しています。それでいて決して下品になっていないのがさすがホンダといったところでしょうか。

おそらくライバルであるアルファード/ヴェルファイアに対抗すべき、大きなメッキグリルを採用し、重厚感のある強面顔に変えたのでしょう。マイチェンというレベルではなくまるで別のクルマに変わったかのような印象です。押し出し感は確実に大幅アップしています。

マイナーチェンジで装備や
安全性能なども大幅に強化


(引用:ホンダ公式HP)

インテリアにももちろん変更が加えられています。インパネ上部のソフトパッドのデザインが変更となり、木目パネルの配置も変え、質感の高い上質なインテリアとなっています。

さらに、メーターパネル内の液晶パネルが3.5インチから7インチに拡大。また、運転席側の収納式ドリンクホルダーが追加され、リッド付きインパネアッパーボックスの設定なども行われています。エクステリアほど大きく変更されているわけではありませんが、一目でその違いは分かるでしょう。

新たに設定された装備としては、ドアノブに触れることなく流れる光に手をかざすことで、パワースライドドアの開閉が可能となるジェスチャーコントロール・パワースライドドアを新採用(日本国内初!)

さらに、パワースライドドアが閉まり切るのを待たずに施錠が可能な予約ロックもホンダ車初採用。これらはどちらも標準装備となっています。

ほかには、安全機能としてHonda SENSINGに後方誤発進抑制機能を追加。そして、グレードは整理されて、上級グレードのアブソルートのみとなりパワーユニットもガソリンとハイブリッドの2種類(直噴ガソリンエンジンは廃止)。

価格は、ハイブリッドが419万8,000円から458万円で、ガソリン車は349万5000円から392万9,400円までとなっています。ライバルであるアルファードが359万7,000円から775万2,000円となっているので十分対抗できる価格です。というか装備内容などを考えればむしろお買い得と言えます。

こうしてみると、ホンダもマイナーチェンジと言いながら、ここまでしっかりと手をかけておいて、2021年で生産終了を決定してしまったのですね。本当に惜しい。とにかく、こんな魅力的なオデッセイが、新車で手に入れられる期間はあとわずかなのです。

生産終了でオデッセイの
価値が上がる可能性も?


(引用:ホンダ公式HP)

オデッセイは、今後もしかしたらレアなクルマとして人気を集めるかもしれません。特にマイチェン後の現行モデルは2020年11月から、2021年内までと、販売期間も非常に短いため、生産台数がそもそも少ない。そういった意味では希少性はまちがいなくあります。

例えば先日生産終了を発表した、同じホンダの軽のオープンスポーツカーS660なども2022年3月まで販売を継続するとされていましたが、生産終了が発表になると、注文が殺到。なんと2022年を待たずして完売となってしまいました。

そして、現在は中古車市場で中古のS660にプレミア価格が付き、高値で取引されています。もはや新車で手に入れる手段がないのなら新車よりも高い中古車でも手に入れたいという人たちが殺到しているのですね。

もちろんS660は軽のミッドシップスポーツカーというそもそもが特別な車なので、希少価値が格段に高い。さすがにミニバンであるオデッセイがそんなS660のように希少価値を持つとは思えませんが、レアなクルマとなるのは確かです。決して中古車の高騰がないとは言えないでしょう。

とにかく、2021年末を待たずして新車を手に入れることが困難となる可能性が高い。となればいずれにせよレアなクルマとなるのは間違いありません。

それは新車で購入するのでも、カーリースで契約するのでも同じです。例えば、現時点(2021年8月中盤)で、リースナブルのサイトをチェックしてみると、まだオデッセイのリース契約は可能なようです。とはいえ、今は在庫があっても、いつ完売となるかはわかりません。

もしあなたが、オデッセイに魅力を感じており、できればマイカーとして新車を入手したいというのなら、とにかく早めに、今すぐにでも行動することをおススメします。新車が入手できるタイムリミットはもう迫ってきているのです。

オデッセイの後を受け継ぐ
ニューモデルの登場にも期待


(引用:ホンダ公式HP)

長らく日本におけるミニバンブームを牽引してきた、自動車史に間違いなく残るであるホンダオデッセイ。残念ながら2021年でその役割を終えてしまうことになりました。ただ、ホンダとしても、現オデッセイオーナーが次に乗り換えるべきクルマ、受け皿となるニューモデルは絶対に必要なはず。

また、一部メディアには、遠くない将来に大型ミニバンを国内市場へ投入予定とも語っているという話も聞きます。そうなれば、オデッセイに変わる何かしらのモデルはきっと投入されることになるのでしょう。

ただ、そのクルマがオデッセイのようなミニバンになるかどうかは分かりませんし、またオデッセイの名前を受け継ぐかどうかも不明です。

もしかしたら、ガソリンエンジンやハイブリッドではない、EVやFCVの全く新しいピープルムーバーになる可能性もあります。いずれにしてもそんな新しいオデッセイ(の後継モデル)が投入されるのはまだまだ先でしょう。それがどんなクルマになるのか、オデッセイのように魅力的なモデルに果たしてなるのか是非その登場に期待しましょう。