2018年に全くの新型車両として登場して以来、軽商用車としては異例ともいえるべき注目度を浴びているのがホンダのN-VANです。それもビジネスユースだけでなくパーソナルユースとしても人気を集めているというのは驚くべきことでしょう。2019年度の販売台数こそ同じ軽商用バンのハイゼット(6万7262台)やエブリィ(7万8102台)には及びませんが、それでも2019年の年間販売台数は4万335台ですから立派なものです。

先代にあたるアクティバンやバモスなどと比較(2017年度の年間販売台数は1万台以下)すればもうこれは大ヒットといって間違いありません。純粋な商用バンとして考えると積載性の面でライバルにはハンデがあるにもかかわらずここまで人気となっているのですからこれはホンダとしても予想外だったのではないでしょうか。

軽バンとは思えない
オシャレなスタイルで人気に


(引用:HONDA公式HP)

N-VANがなぜここまで人気となったのか、理由はいろいろありますが、なんといってもそのデザインが従来の軽バンとは一線を画しているというのが大きいのではないでしょうか。まるでツールボックスを思わせるようなシンプルなデザインに、ボディサイドのプレスラインやヘッドライトの凝ったディテールは実にスタイリッシュ。さらにバンならではの広々とした荷室を持ち、ライバルにはない助手席側センターピラーレス採用による大きな開口部まで採用しています。

商用車然としたライバルに比べるとオシャレなイメージがあってそれが新たなユーザー層を開拓したのでしょう。街中でも明らかに仕事用ではないオシャレにカスタマイズされたN-VANを見かけることも増えてきています。

そのように街中を走るオシャレなN-VANを見ていると、「軽バンだけどこれならマイカーとして使ってみてもいいかな」と次のクルマの候補として本気で検討されている方もきっといるのではないかと思います。そして当然ですがカーリースでも、N-VANを選ぶことができます。例えば子離れをきっかけに、家計的にも助かるカーリースで、経済性の高い軽バンであるホンダN-VANを選ぶ、確かにそれってとても賢い選択といえるかもしれません。

ただ、軽のそれも商用車であるN-VANをプライベートカーとして使うことになんの問題もないのでしょうか? 気を付けなくてはいけないことなどはないのでしょうか。また、もし選ぶとしたらN-VANでもどのグレードが良いのでしょう。N-VANをマイカーとして選ぶうえで気になることを調べてみました。

軽バンとして見ると
欠点も少なくないN-VAN


(引用:HONDA公式HP)

そもそもN-VANは商用ユースの軽バンです。ジャンルでいえば郵便屋さんや酒屋さんなどが配達に使っているワンボックスタイプの貨物車両の一つです。とはいえ見た目からはそのようなイメージはあまりありません。おそらくN-BOXやタントなどといった軽スーパーハイトワゴンに近いスタイルを持っているからでしょう。そういった仕事クルマには見えないオシャレな点もN-VANが人気となっている理由の一つなのでしょう。

でも、純粋な貨物車として考えれば、オシャレをとるよりもスペース効率の高い、スズキのエブリィやダイハツのハイゼットのような形としたほうが間違いなく合理的です。エンジンを床下や前席の下に搭載し駆動方式をFRとしたエブリィやハイゼットの方が無駄なスペースができずたくさんの荷物を積み運ぶことができますから。

しかしN-VANはボンネット内にエンジンスペースやトランスミッションを持つFFです。その点で非常に不利。実際N-VANの荷室長はライバルであるエブリィの1910mm(2名乗車時)に対して1510mm(2名乗車時)しかありません。40㎝も短いのですね。これは大きな欠点といえます。

それなのになぜFFを採用したのか。理由はN-VANが軽スーパーハイトワゴンのN-BOXをベースとしているから。エブリィやハイゼットは軽トラックとメカニズムを共用する純粋な貨物車両。そのため頑丈なシャシーを持ち、さらに駆動方式は重い荷物を満載してもトラクションがしっかりかかる運転席下にエンジンを搭載したFR(キャブオーバー)です。貨物車量であればFRやMR、RRなどの後輪駆動のほうが有利なので当然でしょう。

なぜ後輪駆動がいいのかというと、貨物車量の荷物スペースはクルマの後ろにあるからです。そこに重い荷物を満載すれば前輪側の荷重が減り、前側が浮いた状態になるわけです。前輪駆動のFFだとそれでは路面に駆動力が伝わりにくくなってしまうでしょう。後輪駆動なら逆に駆動輪に荷重がかかるわけです。平地ならまだしも上り坂となればFF車は前輪がスリップしてしまう可能性もあります。だからトラックやバンは基本後輪駆動なのですね。

ということは純粋に仕事用の軽バンとして考えるとFFのN-VANはあまり適していないということになります。荷物の配達などにガンガン使いたいなら、後輪駆動のエブリィやハイゼットを選んだ方が正解でしょう。

趣味車としてみると
FFだからこその美点が見えてくる


(引用:HONDA公式HP)

しかしN-VANはバンなのにFFです。単純に軽バンとして考えれば不利なのは明白です。ベースがN-BOXなので仕方がないのですが、やはりお店の配達車に、などと考えると不満がでるかもしれません。ちなみにN-VANの先代にあたるアクティバンはMR(ミドシップ)でした。ちゃんと後輪駆動になっていたんですね。

FFですが、もちろんN-VANを仕事用として使用されているケースも少なくありません。N-VANにはライバルにはないバンとして魅力的な機能を盛り込んでいますから。

2名乗車時の荷室長は確かにライバルに劣りますが、後席に加えて助手席も床面へ落とし込むように折りたためるという点がほかにはない点です。これらすべて折りたたむと運転席以外は完全に平らなスペースとなりL字型の長い荷室が出来上がります。こうすることで助手席まで荷室として使え軽い段ボール箱などならたっぷりと積み込むこともできるのです。

そして、この機能を便利に使えるように助手席側スライドドアにピラーを埋め込みました。こうすることで助手席ドアから後席スライドドアまでつながる大きな開口部を実現しその開口幅は1580mm。クルマの助手席側から大きな荷物などもスムーズに出し入れすることができます。絶対的なスペースこそ広くありませんが、このように効率的に使える工夫がされているのです。

また、このN-VANならではの特徴は、ビジネスユースだけでなく、ホビーユースにも魅力的なポイントとなっているのです。例えば助手席をたたんだ状態では最大で2.6mの長い荷物も積み込むことが可能です。この特徴を生かして車内にバイクを積み込み、サーキットなどに運ぶトランスポーターとして活用されいる方もいるようです。なんと大型のリッターバイクまで軽々と積載できてしまうといいますから確かに便利なのでしょう。また、キャビンとエンジンが完全に分かれているFFなのでライバルのよりも静粛性が高く、振動も少ないという快適性の高さがあるのも大きな魅力といえるでしょう。さらに、ほかにもホビーユースとして使ううえで優れている点があります。

特に手を加えなくても
すぐに車中泊仕様にできる


(引用:HONDA公式HP)

それは前述したように荷室を助手席スペースまで含めて完全にフラットにできるという点です。そのため特に改造などしなくてもそのままキャンプ用のクルマに使えてしまうのです。最大2.6mの長さを持つ完全なフラットスペースが簡単に作れるので相当な長身の方でも快適に眠れるスペースを確保できます。そしてそこにマットでも敷けば、車中泊用のクルマとしてとても快適に使えるでしょう。これはかなり魅力的なアピールポイントではないでしょうか。

最近は軽自動車をベースとしたキャンピングカーの人気が高まっていますが、その価格は思いのほか高い。さらに所有の軽バンを改造するのにも費用は結構かかります。かといってN-BOXやタントなどの軽スーパーハイトワゴンでは、シートなどがしっかりできている分、たたんでも完全なフラットにはならないので車中泊スペースを確保しづらい。

その点N-VANならわざわざ手を加えなくても、シートをたたむだけで人が十分に寝ることができるだけのフラットスペースが作れます。そこに純正のオプションなどを追加すればすぐにお手軽なキャンパーに早変わりするわけです。

こういったニーズがあることを考慮して純正オプションアイテムにも車中泊やキャンプ、アウトドアスポーツに便利な各種アイテムが豊富に用意されています。例えばこのようなものです。

https://www.honda.co.jp/ACCESS/n-van/special/selection/simulator/

N-VANを選ぶ際に、そういったオプションを装着してしまえばすぐに軽キャンパーが完成。カーリースではこういったディーラーオプションなども選択が可能ですし、さらにそのオプション費用まで毎月のリース料金に組み込むことができます。ですからあとから余計なコストもかかりません。これはうれしいですよね。

それにカスタマイズといっても純正オプションですからカーリースではNGとされている改造にも当たらず、返却時に違約金が発生することだってありません。つまり、カーリースのお得な契約で、憧れの軽キャンパーが手に入るというわけです。これは非常に魅力的だといえないでしょうか。

N-VANを趣味で使うなら
おすすめグレードは?


(引用:HONDA公式HP)

このようにホビーユースにピッタリのN-VANは、仕事用としてだけでなくプライベートのマイカーとして使用するのは非常に魅力的なのです。特にカーリースならランニングコストの管理が簡単で、税金や保険、車検などの面倒な手続きや費用もリース会社に任せられる。その分趣味に没頭するためのクルマとして存分に楽しめることができるはずです。

では、N-VANをマイカーとして使うとして、グレードは何を選べばいいのか?軽バンなのだから廉価グレードでいい?そんなことはありません。ライバルよりもデザインに優れたN-VANですが、全く素の廉価がグレードはさすがにチープです。特にボディカラーが白ともなれば仕事車にしか見えません。例えば自宅前にマイカーであるN-VANを停めていたら、ご近所さんから「今日は電気工事か何かですか?」などと聞かれたらいやですよね。

おすすめしたいのはエクステリアデザインも上質なプラススタイルシリーズ。それもよりスタイリッシュな『+STYLE COOL(プラススタイルクール)・ターボHonda SENSING』です。ロールーフ(といっても十分に高いです)にメッキグリルやカラードドアハンドル、専用バンパーにリアゲートスポイラーなどを装着しバンとは思えないほどスタイリッシュなエクステリアを持ち、さらにフルオートエアコンにスマートキー、オートライトコントロール付きヘッドライトなどバンとは思えない豪華装備も搭載。さらに、ターボなので動力性能に余裕があり、ロールーフなので重心が低い部カーブでの安定性も高い。高速道路を使った長距離ドライブもストレスはほとんどないでしょう。ターボではなくNAグレードのみですが軽バンとしては豪華な6MTを選べるというのも人によってはメリットになるかもしれません。

加えてN-VANは、歩行者や車両を検知できる衝突被害軽減ブレーキ車間距離を自動制御できるクルーズコントロール車線の中央を走れるようにパワーステアリングを制御する機能などがセットになった予防安全装備の「Honda SENSING」が全グレードに標準搭載です。運転支援機能まで標準というのは軽商用車ではN-VANくらい。これなら安心して家族を乗せることができるでしょう。このようにとても魅力的なN-VANなのですが、マイカーとして使うのにデメリットは何もないのかというと、そうでもありません。やはり我慢しなくてはいけないこともあります。

多人数乗車には適していない
その点を理解しておく必要がある


(引用:HONDA公式HP)

そもそもN-VANは軽バン、貨物車両です。兄弟車であり、乗用車であるN-BOXと同様の快適性を求めるのは無理があります。当然我慢しなくてはいけないことがあるのです。基本は荷物を積むためのクルマなので、シートが厳しい。運転席以外のシートはあくまでエマージェンシー用で座ることはできますが、快適とは程遠いもの。長時間ドライブは正直難しいでしょう。その分助手席と後席はダイブダウン機構が付いており簡単にフルフラットにできるわけでその点は妥協が必要なのです

特に後席はまるで板のようなシートでクッション性はほとんどなく背もたれも低くて大人が座るのはかなり厳しいでしょう。+STYLE COOLなら最低限のヘッドレストこそ装備されてますが、あくまで簡易的なものでしかありません。

助手席も運転席より明らかに小さい。ただオプションでクッションカバーなどが用意されているのでこちらを使えば多少はマシになるようです。

つまりN-VANは基本一人乗り。多少我慢してもらって2人乗りといった使い方に限定されてしまうでしょう。家族そろってみんなで出かけるというのはちょっと厳しいかもしれません。

しかし、子供たちがすでに独立しており、自分のための趣味車として使うのであれば全く問題ないといえるでしょう。むしろコンパクトで燃費も良く、荷物もいっぱい積めるのですから行動範囲も広がるのではないでしょうか。近場のキャンプくらいなら助手席も十分使えるので、夫婦でアウトドアにでかけるのにもきっと活躍してくれるはずです。

このように快適性の面では多少目をつぶらなくてはならないこともありますがそのことを理解しておけばとても魅力的な一台といえます。ミニバンを使っているけど後席に家族を乗せる機会もすっかり減ってきたなぁ…、などと感じているのなら、趣味にガンガン使えて、経済性も高いN-VANという選択も、一考の余地があるのではないでしょうか。純正オプションを選択して自分なりの一台にカスタマイズするのもきっと楽しいはずです。