ミニバンやSUV、軽自動車に人気が集中する中、2018年上半期、売上ナンバーワンの大ヒットを記録したコンパクトカー日産の「NOTE(ノート)」です。日産車が売上ナンバーワンを記録するのはかつてのサニー(すでにカタログにはない過去の車種。ノートの先祖にあたります。)以来でなんと48年ぶりといいますから、驚きます。CMなどで日産がこのことを盛んにアピールしているのも当然のことかもしれません。

 

しかし、気になるのはなぜ2018年にノートが大ヒットを記録したのかということ。この現行型となるE12型ノートが発売となったのは2012年です。そう、2018年においてすでに6年も経過している決して目新しいクルマではないのです。通常のサイクルでいえばすでにモデルチェンジしていてもおかしくないクルマなのに、なぜ今になってナンバーワンになれたのか?

ノートe-POWERは経済債の高さ
だけではなくワンペダルドライブも話題に


(引用:日産公式HP)

その理由は2016年に行なわれたマイナーチェンジと同時に追加された、「e-POWER」というシリーズ式ハイブリッドモデルにあるのだと思われます。実際ノートにe-powerが追加された直後からノートの売り上げが急増し、一時期はノートの全グレードのうち7~8割がe- e-POWERとなったといいますからほぼ間違いないでしょう。

ノートe-POWERはハイブリッド、つまりはエコカーです。でも、プリウスやアクアなどと違って、エンジンをクルマの駆動力としては一切使用せず、発電専用に使うというシリーズ式ハイブリッドというのが大きな特長となっています。そのため経済性が高い上に、さらにEV同様の力強い走りが味わえるということで話題を呼びました。それが190万1880円~というリーズナブルな価格で手に入るのですから注目されるのも分かります。

さらにもうひとつノートe-POWERが注目されたポイントがあります。それが「e-POWER Drive」と名付けられたワンペダルドライブです。ワンペダルドライブとは簡単にいえばアクセルペダル一つで運転が(ほぼ)完結できるという仕組みです。

操作方法はとても簡単です。まず、通常のクルマのようにアクセルペダルを踏むとクルマは普通に加速します。ではブレーキはどうするのか、そのままアクセルペダルを戻すだけでOKです。すると今度はクルマにブレーキがかかりスムーズに減速します。

この減速は回生ブレーキ(駆動輪の回転エネルギーで発電機を回し、その回転抵抗によってブレーキをかける。)によって行われ、アクセルペダルの戻し方で減速度をコントロールすることができます。

アクセルペダルを踏んでいた状態から、ペダルを全閉するとブレーキを強く踏んだと同様に減速(最大マイナス0.15G)され、最終的にはクルマを停止することも可能(緊急時はフットブレーキも併用する。)です。そして、そのままのアクセルを閉じていれば停止状態もキープできるので、通常の運転時はブレーキ操作がほぼ必要なく、アクセルペダルだけで運転が完結してしまうというわけです。

従来のクルマとは違う独特なドライブ感覚が味わえる上、慣れるとストレスもなく運転がむしろ楽になるということで注目を集めました。ネットでノートe-POWERのオーナーによる感想検索してみてもおおむね好評。どうしても慣れないという方もいるようですが、その場合はノートe-POWERも通常のクルマの用にアクセルで加速、ブレーキで減速、停止からブレーキを離すとクリープ走行もしてくれるという操作も可能なので特に問題はないようです。

新型リーフにはさらに進化した
ワンペダル、「e-Pedal」が搭載


(引用:日産公式HP)

そんなノートe-POWERの「e-POWER Drive」を、さらに進化させたのが新型リーフに搭載された「e-Pedal」です。アクセルペダルだけのワンペダルでクルマを操作できるという点は同じですが、わざわざこのように名称を変えているにはもちろん理由があります。

ポイントはアクセルを閉じた時のブレーキングの仕組みです。ノートe-POWERは、前述したようにワンペダルドライブ時の減速には回生ブレーキだけを使用しています。でも、リーフの場合は、ワンペダルドライブ時でも回生ブレーキに加えて通常の油圧ブレーキも併用して減速しているのです。

発電機の回転抵抗だけでなく通常のブレーキも一緒にかけうまくバランスさせることによってより安定したブレーキコントロールが可能しているのです。そのためアクセルペダルの操作だけで走れるシーンが増えています。

回生ブレーキだけを使っている場合、アクセルオフで減速されるのはあくまで駆動輪であるフロントタイヤ(FF車の場合)のみ。しかし、リーフの場合は油圧ブレーキを併用するので駆動輪だけでなく4輪全部にブレーキがかかるので、滑りやすい坂道などでも安定してブレーキをコントロールしながら走ることが可能になっているわけです。

日産によると、通常の走行の約9割が「e-Pedal」のワンペダルドライブだけでカバーできると言いますからかなりのものですね。その減速度はエンジンブレーキの約4倍にもなり、最大マイナス0.2Gに達するのだそうです。

ノートe-POWERの「e-POWER Drive」でもその減速度はマイナス0.15Gですから、相当なものですが、「e-Pedal」は約1.35倍減速ほど強力というわけです。つまり日産車の中でも最も進化したワンペダルドライブが可能なのが新型リーフの「e-Pedal」ということですね。同じようなワンペダルですが、このように中身は結構違っているのです。

ワンペダルドライブは万能じゃない
コントロールや急ブレーキには要注意

リーフのe-Pedal もノートのe-POWER Driveも、とても便利な機能ですが、いままでのクルマの運転方法と相違点があるため、運転するドライバー側ではその独特の操作感に慣れる必要があるでしょう。ワンペダルでもじわじわとアクセルペダルを戻せば、ゆっくりと減速することは可能ですが、アクセルペダルからいきなり足を離してしまうと、ブレーキペダルを強く踏んだ時と同様に急ブレーキがかかります。そのため交差点の白線ぴったりに上手く停止させるというのはすぐにはできないかもしれません。

また普段から低燃費走行を心がけ、アクセルペダルをスイッチのようにオン、オフでコントロールされている場合、その操作方法の違いに戸惑うこともあるはずです。

実際どうしても慣れないという声も聞かれます。それにレンタカーなどで別のクルマを運転した際に操作方法の違いを忘れ危ない思いをしたというケースもあるようです。

また、通常の走行がアクセルペダルだけでほぼコントロールできてしまうということは、アクセルからブレーキペダルへの踏み替えの頻度が減るということ。そのことがブレーキペダルの操作を遅らせることにならないのでしょうか?例えば目の前に歩行者が飛び出してきたなどの際、おそらくアクセルペダルの全閉だけではブレーキは間に合いません。ブレーキペダルを強く踏まなくてはいけませんが、そのような動作がとっさに出来るかどうか不安ですよね。もしかしたら以前ならできたいたのにワンペダルに慣れてしまったことで、遅れてしまうかもしれません。

おそらく自動ブレーキがある程度はカバーするでしょうが、現在の技術では万全ではありません。この辺は人間の方でその違いを理解して正しく使いこなす必要があるでしょう。

一定の速度で淡々と走り続ける
高速道路ではかえって不便ではないのか?

もう一つは、気になったのが高速道路などを走行する際です。高速道路ではアクセルによる速度のコントロールは一般道ほど頻繁には行いません。一定の速度で淡々と走ることのほうが多いでしょう。その場合、ワンペダル車は、アクセルペダルを常に踏み続けていないといけないというのがストレスにならなにのでしょうか。

通常のクルマで高速道路を走行する際、下り坂などではアクセルをオフにして惰性で走り続けるということはありますよね。その方が燃費にも優しいですから。

でもワンペダルドライブのクルマでおなじようにしてしまうと、普通に考えればブレーキがかかってクルマが減速してしまいますよね。つまり走行中は常にアクセルペダルを踏み続けていなくてはいけないということになります。なんだか足が疲れそうですよね。

でもこれに関しては、問題ありません。その時だけワンペダルドライブではなく、通常のアクセルで加速、ブレーキで減速となるノーマルモードで走ればいいでしょう。

また、日産車ですから、同一車線自動運転技術のプロパイロットのインテリジェントクルーズコントロール(セットした車速、約30~100km/hの間で、車速に応じた車間距離を保つように車間制御を行って走行する。)を使えばいいのです。これならアクセル操作は不要です。

ただ、渋滞などの場合は、万が一のことを考えて停車したらブレーキ踏むクセつけるようにしておいたほうがいいかもしれませんね。

いずれにしてもワンペダルドライブは、ドライバー側で操作の慣れや、考え方の切り替えが必要なようです。ただすでにオーナーとなっている方には、おおむね好評のようなので、ワンペダルドライブ機能は他の日産車にもさらに広がっていく可能性はあります。また、他のメーカーでも今後は同じような機能が搭載されるかもしれません。気になる方は一度レンタカーや、ディーラーの試乗車でその独特の操作感を体感してみてはいかがでしょう。