ドライバーとして、ウインターシーズンにやっておくべきことの一つが夏タイヤから冬タイヤ(スタッドレスタイヤ)への交換です。そしてタイヤの交換をしたら、ついでにやっておきたいのが外した夏タイヤ&ホイールの掃除です。

いつもの洗車ではホイールの裏側を洗うのはむつかしいですが外した状態なら簡単。また、ホイールやタイヤをきれいにしておけば次のシーズンに履き替えた時も気持ちがよいはずです。

さらに、装着されていた時には気が付かなかったタイヤやホイールのトラブルも、もしかしたら発見できるかもしれません。せっかくお手入れしやすい状態になってのですから、今の時期しっかりと掃除してあげてはいかがでしょうか。今回は、そんな保管の前にやっておくべきタイヤとホイールのお手入れの方法をご紹介します。

次のシーズンも活躍してもらうために
保管の前にしっかりとお手入れをする

12月ともなればすでに多くの方がタイヤを冬タイヤに交換し終えていることでしょう。地域によってはすでにかなりの大雪に見舞われていますし、雪による交通マヒなどもニュースに取り上げられていました。もしまだだという方がいたら急いで交換を行うか、最低でもタイヤチェーンの準備はしておきましょう。年末年始に雪で立ち往生などということになったら最悪です。

すでに交換済という方は、さすがに準備万端ですね。でも冬タイヤばかりに気が行ってしまって外した夏タイヤのほうは、大丈夫でしょうか? 正しい手順を踏んで保管されましたか? タイヤもそうですがアルミホイールなどもデリケートなもの。外したそのままベランダや庭の隅、駐車場やガレージの空きスペースに積みあげてなどいませんか? 

タイヤやホイールはクルマにとって非常に重要なもの。何かしら問題があれば即事故にもつながりません。次のシーズンにはまた活躍してもらうために、しっかり手入れして正しく保管するようにしてください。では正しい掃除やお手入れの方法、さらに保管はどうすればいいのでしょうか。

タイヤの洗浄は水洗いが基本
洗い終えたら点検も行おう

まずはタイヤ掃除の方法です。日ごろから洗車を念入りに行っていても、すぐに汚れてしまうのがタイヤ&ホイール。時に地面と直接接触しているタイヤが汚れるのは仕方のないこと。この機会にしっかり掃除しておきます。やり方はむつかしくありません。

基本は洗車と同じです。ただゴムでできたタイヤの場合は、水洗いだけで汚れがおちるなら水洗いだけで済ませるのがベストです。タイヤのコンパウンドはデリケートなのでシャンプーの使用や頻繁な水洗いはできれば避けておいた方がベター。あまり洗いすぎると油分が抜けてしまい劣化がはまってしまうからです。

特にシャンプーは種類によりますが洗剤成分がコンパウンドを劣化させてしまう可能性もあります。やりすぎは禁物です。でも、変色してしまうほど汚れがひどい場合はシャンプーを使い表面の泥やホコリなどを洗い流しておいたほうがいいでしょう。タイヤに泥や鉄粉などが付着したままにしておくのも劣化が進む原因になります。とにかく基本は水洗いで、洗った後は水分をしっかり拭き取りキチンと乾燥させるというのが重要です。

そして洗ったあとは点検も行いましょう。クルマから外した状態なら隅々までチェック可能です。まずはトレッドの溝が十分に残っているかを確認します。そしてスリップサインが出ていたら次のシーズンに入る前に交換を検討します。

また変摩耗がないか、サイドウォールにひび割れや傷などがないかもチェックしてください。傷やひび割れはタイヤバーストなど重大な事故の原因にもなるので、ダメージが大きい場合は交換が必要です。自分で判断ができないという場合はタイヤショップやディーラーに要相談です。

一通り点検して特に問題がなければ空気を少しだけ抜き、空気圧を落としておきます。タイヤの内圧を弱めてゴムの劣化を防ぐためです。使用の際に指定されている空気圧の1/2程度まで抜いておきましょう。これでタイヤへの負荷が軽くなり、保管期間にタイヤをしっかり休ませることができます。

タイヤを洗い、点検をしたらタイヤワックスも塗っておこうかな? と考えるかもしれませんが、その場合は使用するタイヤワックスに気を付けてください。市販のタイヤワックスには水性のものと油性のものがあります。

油性のものは表面がつやつやとなり効果も長持ちしますが、ゴムの成分に悪影響を与える可能性もあります。過度に使うとタイヤのひび割れにつながるのでどうしても使いたいなら水性のものを使うようにしてください。

ホイールにこびりついた鉄粉は
専用のクリーナーで落とす

そして、タイヤ以上に掃除がやっかいなのがアルミホイールです。クルマに装着されたホイールの内側にはブレーキが組み込まれています。このブレーキは金属でできたディスクやドラムと、ブレーキライニング(摩擦材)の摩擦によって制動力を発揮するというものです。クルマの運動エネルギーを摩擦による熱エネルギーに変換することでクルマを減速しているのですね。

つまりここでは、常に金属と摩擦材が激しくこすれあっているということです。硬い金属と摩擦材が激しくこすりあえば当然汚れ(ブレーキダスト。削れたブレーキパッドやブレーキディスクの粉塵)が発生します。

そして発生したブレーキダストは、一番近い場所にあるホイールに付着してしまうのですね。摩擦によってかなりの熱を持ったブレーキダスト(鉄粉)アルミホイールの表面にしっかりとこびりついてしまうわけです。

これは残念ながら避けられません。むしろこのブレーキダストが出れば出るほど、それだけブレーキの効きがよいともいえます。ヨーロッパ車は国産車に比べるとブレーキの性能が優れているといわれますが、その分ホイールの汚れがひどいことでも知られています。これは摩耗しやすい素材を使うことでブレーキ性能を上げているからです。しかし、ホイールのブレーキダスト汚れがひどい=ブレーキがよく利いているということの証明にもなるので、特に走りを重視しているヨーロッパ車オーナーはこの汚れに関してあまり気にしていない方も多い用です。

ただ、このブレーキダストはアルミホイールのコーティング面に突き刺さるようにしてこびりつくので、どれほどしっかりと洗車をしてもとにかく落ちにくいのが非常に厄介。どんなにしっかり洗っても、シャンプー程度では簡単には落ちてくれません。でも正しく手入れすれば落とすことは可能です。

アルミホイールの白い粉は
白サビによる腐食の可能性大

アルミホイールの掃除の基本ですが、これはまずシャンプー洗浄です。ボディ用のものとは別の、ホイール専用のシャンプーを用意しましょう。また、バケツやブラシなどもボディ用とは分けておきます。なぜなら、ホイールの洗浄に使ったバケツやブラシでボディを洗ってしまうと、付着した鉄粉でボディを傷つけかねないので絶対に共用しないでください。

洗い方はボディと同じで、まずホースなどを使い水洗いします。十分に水洗いしたらシャンプーをホイールに直接液剤を吹きかけるか、スポンジなどに一旦って取ってホイールの表面をこすりながら汚れを落とします。しつこい汚れにはブラシやスティックタイプのスポンジを使用しましょう。ただし、アルミホイールの塗装やコーティングはデリケートなので、柔らかめのものを使うようにしてください。

細かな部分は小さめの歯ブラシなどが便利です。ホイールを外した状態なら裏側の、普段手の届かない部分までしっかり洗えるはずです。洗い残しがないように隅々まで洗浄を行ってください。

洗い終えたらアルミホイールの点検を行います。最初に腐食が起きていないか確認します。洗っても落ちない白い粉状のモノが表面に見える場合、腐食(白サビ)が発生している可能性があります。この白サビは放っておくと徐々に表面が黒ずんでゆくので、早めに対処するのが正解です。落とすにはコンパウンドやブラシなどを使って削り落とすしかありません。ただし、慎重に行わないと表面に傷をつけてしまう可能性もあるので気を付けて下さい。

また、白サビを削り落としたら、アルミホイールの素材が露出してしまうので専用のコーティング剤で保護することも必要です。そうしないと、そこからすぐにまた白サビが発生してしまいます。こういった作業を自分でやる自信がない場合はタイヤショップなどに相談しましょう。ホイールを外した状態ならお店にも持ち込みやすいはずです。

ホイールに突き刺さった鉄粉は
専用のクリーナーで溶かす

洗浄後にアルミホイールをチェックして致命的なダメージがなければ次は、しつこいブレーキダストを落とします。このブレーキダストがアルミホイールの白サビの大きな原因なので定期的に落としておくとホイールも長持ちします。ただ、洗浄では簡単に落ちないので市販のホイールクリーナーを使ってください。

このホイールクリーナーは洗剤では落ちてくれないホイールについた鉄粉やサビを除去することができる薬剤です。チオグリコール酸アンモニウムなどが配合されており、パーマ液のようなアンモニアに似た臭いがします。

これをホイールに吹きかけると、ホイールの表面にこびりついた酸化したブレーキダストの鉄粉が化学反応を起こして溶けていきます。鉄粉に反応すると薬剤は紫色に変色します。洗うのではなく化学反応で除去しているのですね。あとはそれを水とスポンジで流し落とせばブレーキダストをとりのぞくことができます

強力な薬品なので液剤を流し落とした後は再度シャンプー洗車をしてください。液剤を取り除いておかないと、ホイールにシミができたり、変色してしまうこともあるので注意しましょう。

市販のホイールクリーナーの中には研磨剤(コンパウンド)が入っているタイプもありますが、これが原因でホイールの表面を傷付けてしまうこともあるので、よほど汚れがひどいのでなければホイールクリーナーは研磨剤の入っていないもののほうが良いでしょう。最後に仕上げとしてホイール表面にコーティングを行うと完璧です。コーティングしておけばブレーキダストなどの汚れもつきにくくなります。

そして、せっかくなのでホイールの裏側にもコーティングを施しておきましょう。これはホイールを外した状態でないとなかなかできないので、この機会にやっておくのが正解です。コーティングしても普段は見えませんが、ブレーキダストはホイールの裏側の方が付着しやすいのでホイールの保護としてとても有効です。

タイヤ交換は掃除と点検の良い機会
毎回のルーティンとして習慣づけを

タイヤとホイールの洗浄と保護を終えたら、次のシーズンまで正しい方法で保管しましょう。保管方法に関しては、以前紹介したこちらを参考にしてください。

参考サイト:リース車にスタッドレスを装着したら あまったタイヤの保管はどうする?

タイヤ&ホイールを車から取り外す機会は、スタッドレスタイヤへの交換などの機会がないと、なかなかありません。交換作業に加えて掃除と点検となるととても面倒な作業に思えますが、タイヤやホイールの普段はチェックできない場所まで確認できるよい機会です。やらないのはもったいない。できれば毎回のルーティン作業としてタイヤ交換と掃除&点検はセットで行う習慣づけをしておくのが良いでしょう。

タイヤやホイールはわずかなトラブルが大きな事故に直結する重要なもの。少し手間をかけるだけで、将来の安全が得られかもしれないなら安いものではないでしょうか。

もしすでに夏タイヤを外しており、そのまま何もせず保管されているなら、できれば面倒でも一度保管場所から取り出して掃除と点検をやっておくことをおすすめします。次のシーズンも安全で快適なカーライフを送りたいならそのほうが間違いなく安心です。