クルマのタイヤは消耗品減ってきたり劣化が進んだらすぐにでも交換するべきものです。でも、そうはいってもタイヤ交換にはかかりの費用がかかります。少しでもタイヤ交換の頻度を減らしつつ、なおかつ安全なカーライフを送るにはどうすればいいのだろう? そんな悩みを持つ方のためにぜひおススメしたいのがタイヤローテーションです。

タイヤローテーションを適切に行うと、タイヤは通常よりも長持させることが可能です。ではそれはどのようにすればいいのか、だれにでもできることなのか、また、その際の注意点などはないのか、詳しくご紹介しましょう。

タイヤのコンディション管理は
ドライバーとしての義務

タイヤのコンディション管理はクルマを使用するドライバーとして最も気を付けなくてはいけないものの一つ。それは所有しているクルマであっても、カーリース車両であっても変わりません。どんなに高性能な最新モデルであってもタイヤに問題があれば、性能は発揮できないどころか安全面にも大きな影響が出てしまいます。

タイヤ交換をケチって摩耗しているタイヤを使用し続けたばかりに事故を起こしてしまった、なんてことがあっては最悪ですよね。

とはいっても、タイヤの管理なんてどうすればいいのかわからないという方も少なくないでしょう。特にカーリースをメンテナンスリースで契約されている方の中には、クルマの管理やメンテナンスをすべてリース会社に任せていて自分では一切やったことがないという方もいるかもしれません。

でも、クルマの日常点検はドライバーに義務付けられているもの。道路運送車両法第47条では「使用者の点検及び整備の義務」というものがあって “自動車の使用者は、自動車の点検をし、及び必要に応じ整備をすることにより、当該自動車を保安基準に適合するように維持しなければならない“と定められています。やらなければ罪に問われる、というようなことはありませんが、安全にクルマを利用し続けるにはやっておくべきことであるのは間違いありません。

特に、タイヤに関しては、そのダメージや劣化などが即座に事故などの大きなリスクにつながるものですから、日ごろからチェックは欠かさないようにするべきでしょう。

やってみると簡単! タイヤの日常点検のポイントとは

では、タイヤの点検とはどのようなことをすればいいのか? 特に難しいことはありません。次のような項目をチェックすればいいのです。

  1. 空気圧は適正値か
  2. 摩耗していないか、残り溝は十分か
  3. 偏摩耗はおきていないか
  4. 傷やひび割れはないか
  5. サイドウォールに膨らみはないか

このうち空気圧に関してはエアゲージが必要ですが、なければガソリンスタンドなどに立ち寄った際に確認すればいいでしょう。空気圧が落ちていたらその場で空気を入れることもできます。そして、他の項目は目視でチェックが可能です。日ごろからこういったチェックを行っておくと、何か異常があった場合にも気付きやすいので週に一度、せめて月に一度はチェックを行う習慣をつけておくことをおススメします。

それにタイヤをあらためて点検してみると、普段気にしていなかったことに気づくこともできるはずです。例えば摩耗のことなどです。新品のタイヤだったはずなのに、しばらく乗っている間にクルマの前後で摩耗の度合いに差ができているということなどがきっと発見できるはずです。

でも、なぜそのようなことが起きるのでしょう。普通にクルマに乗っていただけなのに。また、そうなった場合、摩耗している側のタイヤだけ交換するなんていうのはありなのでしょうか?

駆動輪とそうでないタイヤで
タイヤへの負荷が大きく違う

まず前輪と後輪でタイヤの摩耗度合いに差ができてしまうのはなぜなのか。その理由は簡単です。FFなら前輪側、FRやMRの場合は後輪側、前か後ろのどちらかのタイヤにしかエンジンの駆動力が伝わっていないからです。

では、4WDなら前後輪に駆動力が伝わるので前後で同じようにタイヤは摩耗するのか、というとそうとも限りません。まず、4WDであっても常に前後に駆動力が伝えらえているとは限らないからです。

コンパクトカーやミニバンなどの4WDはたいていFFをベースとしたいわゆる生活四駆とよばれるものです。生活四駆は4WDなのですが、普段は前輪にしか駆動力がかかっていない(一部にはわずかに後輪に駆動が配分されているものもあります)のです。そして前輪のタイヤが空転したときにだけ後輪に駆動力が配分されます。つまり基本はFFなのです。

また、ジムニーなど本格的なクロカン4WDはパートタイム4WDでこちらは普段はFRで後輪だけに駆動力が伝わっており、悪路や滑りやすい路面の時には手動でFRから4WDに切り替えて4WDとして走行します。

つまり、基本はFR。ということは4WDであっても常に均等に前後に駆動力が伝えられているわけではないのです。当然4WDであってもタイヤの摩耗度合いは変わってきます。

基本は前輪駆動のFFなら前輪側、FRやMRなど後輪駆動車は後輪側の摩耗が早いとされています。特にFF車の場合は、駆動に加え方向舵の役割も前輪が担っているので前輪側の負担が極端に大きく摩耗も格段に速くなります。そのためコーナリングなどではタイヤショルダー部分に大きな負荷がかかりショルダー部分がどうしても偏って摩耗しやすいという特徴があります。

さらにエンジンなどの重量物も前輪側にあるうえ、減速や停止の際にも荷重が前輪にかかる。どうしても負担が大きくなり、前輪ばかり摩耗してしまうのです。

ではFRはどうなのかというと後輪駆動車なので駆動力を後輪、コーナリングは前輪と、受け持ち分かれています。そのためFF車ほど極端に差はありませんが、駆動力を伝える後輪側が減りやすいという傾向があります。特にハイパワー車は駆動力を伝える後輪側の負担が大きくなるため、後輪側の摩耗が早く進む傾向があります。そのため、いずれにしてもタイヤの摩耗は前後で差が起きてしまうものなのです。

タイヤの摩耗に偏りがあっても
交換する際は4本セットが基本

では、明らかに前後でタイヤの摩耗の度合いが違っているのを発見した場合どうすればいいのか? そのままにしておくと、例えば後輪のタイヤはまだ十分に使えるのに前輪はすでにスリップサインが出て交換必至ということになるかもしれません。そうなった場合、前輪タイヤの2本のみ交換でいいのか? 減っていない後輪は交換する必要がないのであれば、それでいい気がしますよね。

でも、そのような交換パターンは基本的には推奨されていません。タイヤは4本一緒に交換するべきものと言われています。なぜなら、前後のタイヤでコンディションに大きな違いがあるとグリップ力に差ができて走行時のバランスが崩れてしまう可能性が高いからです。

そのようなタイヤの状態で、急制動やきついコーナーを曲がろうとした場合、制動距離が伸びてしまったり、ABSの効きに悪影響を与えてしまうかもしれません。また、コーナリングでクルマの姿勢が乱れて最悪スピンしてしまうかもしれません。ですから、タイヤを新しく交換するなら4つすべて一緒に変えるというのがベストなのです。

とはいえ、減っていない側のタイヤを交換するというのは正直もったいない気がしますよね。それに金銭的にも負担が大きい。ではどうすればいいのか。そこでおススメしたいのがタイヤのローテーションなのです。

定期的にタイヤの位置を変えることで
タイヤの摩耗を平均化する

タイヤのローテーションとはなんなのか? 簡単にいえば、定期的にタイヤの装着位置を入れ替えてやるというもの。FF車で前輪の摩耗が激しいのであれば摩耗の少ない後輪を前輪に履き替え、負担の小さい後輪側には、前輪に装着していたタイヤへと履き替えるわけです。こうすることでタイヤの摩耗度合いを意図的に均等化するというわけです。

摩耗しはじめたタイヤを、負担の少ない側に移動して、逆に摩耗の少ないタイヤを、負担の大きな側に移動する。これを定期的に行うことで、より長くタイヤ使えることになる上、偏摩耗なども防ぐことができます。当然、前後でタイヤサイズの同じクルマでしかできませんが、スポーツカーなどを除いて、ほとんどのクルマは前後で同じサイズのタイヤが装着されているのでそういったことが可能なのですね。

ではどういったタイミングでタイヤローテーションを行えばいいのか? おススメは冬タイヤと夏タイヤの交換タイミングです。冬に入り夏タイヤからスタッドレスなど冬タイヤに交換する際に外した夏タイヤ4本それぞれにガムテープやマスキングテープなどを貼り、それぞれに右前、左後などそれまで取り付けていた位置をメモ書きしておきます。

そして冬のシーズンが終わって、再び夏タイヤに履き替えるタイミングで、右前とメモのあるタイヤを右後輪に、左後と書かれてタイヤを右前輪にといった具合に入れ替えて装着しなおせばいいのです。

自分でスタッドレスタイヤの交換を行っていない場合も、メモ書きしたタイヤをショップに渡して、左右輪を前後で入れ替えて装着して下さいと依頼すれば前後ローテーションを行ってくれるはずです。これなら楽ですよね。

それにタイヤローテーションは5,000㎞から1万km走行を目安に行うのが良いとされています。カーリース車の場合、年間走行距離に制限があることがほとんど、それがだいたい1万km/年ですから、このパターンであればだいたい6,000㎞~7000㎞走行時に夏タイヤと冬タイヤの交換となるはずです。ちょうど良いタイミングですね。

駆動方式の違いでタイヤの
ローテーションパターンも変わる

タイヤローテーションの方法ですが、駆動方式によってセオリーがあります。それはなぜかというと駆動方式によって駆動輪と方向舵を受け持つタイヤが変わってくるからです。以下のように入れ替えるのがセオリーと思って下さい。

FF(前輪駆動)車であれば図のように左前輪→左後輪、右前輪→右後輪、左後輪→右前輪、右後輪→左前輪というふうにタイヤを入れ替えます。

FR(後輪駆動)車または4WD(4輪駆動)車の場合は、左後輪→左前輪、右後輪→右前輪、左前輪→右後輪、右前輪→左後輪と入れ替えます。

また、ジムニーやランドクルーザーなど装着されているタイヤと同じサイズのタイヤ(テンパータイヤではないもの)がスペアタイヤとして装着されている場合は、そのスペアタイヤを含めてタイヤローテーションを行います。こうして摩耗度合いを平均化することでより長持ちするようになります。

注意が必要なのは装着されているタイヤが方向性パターンである場合です。方向性パターンタイヤは回転方向が決まっているので上記の図のように左右での入れ替えは厳禁です。その場合は右前輪を右後輪に、左前輪を左後輪にというように、左右を入れ替えず前後でローテーションを行うようにしてください。

さらに、FRやMRの本格スポーツカーなどの場合、前後でタイヤサイズそのものが違っている場合があります。その場合はタイヤローテーションができません。

「でも、左右輪どうしでならできるのでは?」と考えるかもしれませんが、そのようなスポーツカーの場合装着されているタイヤが方向性パターンであることがほとんどです。前述したとおり方向性パターンタイヤは回転方向が定められているので、左右の入れ替えも厳禁。サイズが同じなので入れ替えることはできてしまいますが本来のパフォーマンスを阻害してしまいます。摩耗したら素直に交換するようにしましょう。

その場合は前述したように摩耗が進んだ駆動輪側2本だけでなく4本を一度に交換するのがベストです。費用はかかってしまいますがスポーツカーとは本来贅沢な乗り物。仕方がないと納得しましょう。

DIYでのローテーションに
自信がないならプロに依頼するべし

費用をかけずにタイヤを長持ちさせる手段としてタイヤローテーションはとても有効なメンテナンスです。ただし、すでに長距離を走行していて、極端に摩耗が進んだタイヤでいきなりタイヤローテーションするのはおススメできません。摩耗に偏りがあって、走行に支障をきたすことがあるからです。タイヤが摩耗してきたなというタイミングで早めにローテーションを行うのが良いでしょう。

また、タイヤ交換作業に自信がなく、またガレージジャッキやジャッキスタンドなどが手元にない場合は、DIYでの作業は避けた方がいいかもしれません。車載のパンタグラフジャッキではタイヤ一輪しか持ち上げることができませんし、ジャッキだけでクルマを支えるのは非常に危険です。

その場合は、素直にタイヤショップやディーラーなどプロに依頼するようにしてください。それが賢明です。