皆さんはもうご存じでしょうか?2020年4月からクルマへのオートライト機能が義務化されたということを。されるではなくされたです。すでに新型車では2020年4月からすでに義務化は始まっていて、さらに継続生産車でも2021年10月からは乗用車に関してオートライトの装備が義務化となります。

そのことを知らないと「最近カーリースで新型車を契約したんだけどなぜか前のクルマみたいにオートライト機能がオフにできないんだよね…」などと、とまどってしまうかもしれません。

オートライトといっても以前は完全なオートではなかったのです。そう義務化される前は、任意でオートライトの自動点灯機能をオフにすることができたのです。でも安全基準が改正されたことで、オートライト搭載に義務化と、オートライトの機能に関して明確な基準が定められました。ようするにドライバーが勝手にオート機能をオフにすることができなくなったのです。

きっとヘッドライトのオン/オフは自分の判断で行いたい!という方もいるでしょうが、これからはそれができません。でもなぜわざわざオートライト機能を義務化したのでしょうか。また義務化となったことで何が変わり、どのような効果が得られるのでしょうか。

明らかに暗くなっているのに
ヘッドライトを点灯しないのはなぜ?

夕暮れ時となり、周囲が確実に暗くなっているのにもかかわらずなぜか頑なにヘッドライトを点灯しないクルマをいまだに見かけることがあります。また、意味がわかりませんがなぜかヘッドライトではなく前方を照らすことのできないポジションランプだけを点灯しているクルマなどもいますよね。それってなぜなのでしょうか?

もしかしたら街灯が明るいためヘッドライトを点けるのを忘れている?もちろんその可能性もありますが、正直危険なことこの上ありません。また、そうではなく、堂々と「自分はこの明るさで十分見えてているから大丈夫!」なんてとんでもないことを言う人も中にはいるようです。

でも、そういった方は勘違いしています。ヘッドライトは、運転しているドライバーの視界を照らすための安全装置ですが、もう一つ別の大切な役割があることを。それは歩行者など他者に自分のクルマの存在をアピールするというものです。つまり「しっかりと自分のクルマを認識してもらうためのライト点灯」によって、夕暮れや夜間の交通事故を減らすという目的があるのです。だからこそ、少しでも暗くなったら早めにヘッドライトは点灯するべきなのです。でもいまだにそのことを理解していない方が少なくない。非常に残念なことですが。

しかし、そのような、夕暮れ時になっても頑なにヘッドライトを点灯しない、というクルマは今後確実に減ってくるはずです。なぜなら2020年4月から「オートライト機能」の搭載が義務化されたからです。2020年4月以降に発売される新型の乗用車にはすべて搭載の義務化がスタートしており、またそれ以前に発売され、継続生産となっているクルマでも新たに生産される車両に関しては2021年10月からオートライトの搭載が義務付けられます。

つまり、今後新車を購入やリース契約した場合、それらのクルマはドライバーが意識しなくても暗くなれば勝手にヘッドライトが点灯されるようになるのです。

義務化されたオートライトは
機能をオフにはできない

オートライト機能自体は、別に新しいものではありません。義務化となる以前からメーカー独自に装備するクルマもあったので、すでに利用しているという方もきっといるはすです。なのでどのような機能かは当然知っている方もいるでしょう。でも知らない方もいるかもしれないのでオートライトとはどのような機能のライトなのか説明しましょう。

まずその名前に“オート“とついていることからわかるようにドライバーが操作しなくても自動で点灯/消灯を行ってくれるというもの。走行中のクルマのセンサーが周囲の明るさを検知してヘッドライトをコントロールしてくれるのでオートに設定しておけば(機能のオンとオフは任意で切り替えられた)周囲の明るさにあわせて自動的にヘッドライト(前照灯)の点灯や消灯を行ってくれます。つまりドライバーはライトに関して何も操作せずにクルマ任せにしておけるというものです。

ただ、従来のオートライト機能はメーカーや車種によってライトの点灯タイミングに差があったり、どれくらい暗くなったら点灯させるのかということに関しても明確な基準がありませんでした。さらに大きな違いがオート機能をドライバーが勝手に切ることができたということでしょう。自動ではなく手動でコントロールできたのですね。

しかし、新たに義務化されたオートライトは道路運送車両の保安基準の改正に合わせてそれに適合するように設計されドライバーが勝手に機能をOFFできないようになっています。そのほかに細かな部分で機能に違いもあります。

最も異なるのは、走行中に一定の暗さになると強制的に点灯するという点。もう一つが前述したように走行中にドライバーが手動で消灯できないというものでしょう。このような機能はオートライトが義務化されたことでメーカー、車種関わらず機能は統一されることになります。

ではオートライト機能に関する新保安基準とはどのようなものなのか?主なものが以下になります。

  1. 周囲の照度が1,000ルクス未満になると、2秒以内にライトが点灯する
  2. 周囲の照度7,000ルクス以上になると、5秒から300秒以内にライトは消灯する
  3. 走行中、手動によるON・OFFはできない(ただし、駐停車中はライトの消灯が可能)

とにかくオートに設定しておけばトンネル内や夜間は自動的に点灯し、エンジンオフと同時に消灯してくれるわけです。また停車中にライトを消灯しても走行を始めると自動的に機能はオンになります。とにかく走行中は必ずオンになるというわけです。

最も危険な時間帯が
暗くなりはじめる夕暮れ時

ではなぜオートライトが義務化になったのか?その理由は簡単です。日が落ち徐々に暗くなる夕暮れ時(17時~19時ごろ)は、一日の中でも歩行者が死亡する交通事故が多発している危険な時間帯。これは調査によって明らかになっています。しかし、前述したように周囲が暗くなっているにもかかわらずヘッドライトを点灯しないドライバーが少なくありません。

そこで、この時間帯の死亡事故を防ぐことを目的にオートライトを義務化することとなったのです。合わせて、メーカーによってばらばらだったオートライトの機能に前述した①~③ように基準を作り、より安全性の高いオートライトをすべてのクルマの装着させることになったのですね。

暗さ、明るさというのは個人の感覚によってかなりの差があります。また、道路交通法では、ヘッドライトを点ける時間帯を「日没から日の出までの夜間」と定めているのですがこれも非常にわかりにくい。そのため、周りがライトを点灯しているのにもかかわらず、いつまでも無灯火のまま走り続ける人がいるのです。それでは非常に危険です。

しかし、義務化されたオートライトでは明確に1000ルクス以下になったらライトが点灯するようになりました。時間帯などは関係なく周囲が暗くなったら勝手に点灯してくれるのです。これなら自分だけライトをつけ忘れてしまう、などということもなくなるでしょう。おせっかいな機能とも思えますが自分だけではなく周囲のドライバー、歩行者、自転車などの安全を考えれば義務化されるのも当然といえるかもしれません。

思ったよりも明るく感じ1000ルクス。
しかし危険度は大

ちなみに1000ルクスとはどれくらいの暗さなのか?1,000ルクスの目安は晴天時の日の入り1時間前の明るさ。いわゆる薄暮時ですね。と言われてもなかなかピンとこないと思います。実際にはどのような感じなのか、JAFでは照度計を使って実験しています。こちらを参考にしてみてください。

参考サイト:https://jaf.or.jp/common/safety-drive/car-learning/safety-light/autolight-1000lux?_ga=2.167865634.2007014217.1598323372-443198384.1597376029

どうでしょう。思った以上に明るく感じませんか。ちなみに他の環境での1000ルクスとは例えばデパート店内の明るさが500~700ルクスほどで、オフィスで500ルクスとされています。ということは薄暮時の1.000ルクスはやはり結構明るいといえるかもしれません。

しかし、屋外と屋内の明るさは全く別物です。屋外での1000ルクスは歩行者や他車からしてみれば視界は確実に低下していると感じるもの。クルマなどは風景に溶け込んでしまい認識しづらいのです。だからこそそういった時間帯に事故が多発しているのですから。

でも、ヘッドライトを点灯すれば一気に目立つ存在となります。ちょっと暗くなったな、と感じたら早めに点灯すればいいのですが、そのちょっと暗くなったな、という感覚がまちまちなので明確な基準を設けたのです。事故を防ぐのが目的で導入された新安全基準なのですから多少早めくらいがちょうどよいのですね。

すでに販売&リースされている
クルマに装着の義務はない

義務化されたということは、すでに販売、またリース車として使用されているクルマや中古車も今後はオートライトを装着しなくてはいけないのか?大丈夫です。そのようなことはありません。あくまでこれから発売される新車(と継続車)に関して装着が義務化されたというものです。ですのでオートライトがないから「車検が通らないのじゃないか?」などと心配することはありません。安心してください。とはいえオートライトが付いていないのであれば、自ら積極的に早めのヘッドライト点灯を心掛けるようにするべきですね。

新安全基準のオートライトは、確かに安全な交通環境を作るために効果的なものかもしれませんが、すべてのクルマに装着されてはじめてその効果が完全に発揮されるもの。しかし、普及するまでにはまだまだ時間がかかるでしょうからそれまでの間、極力悲しい事故を起こさないためには、すべてのドライバーが安全運転を心掛け、そして早めのライト点灯を実践するべきです。

日頃から「目がいいから、夕暮れになってもついライトつけ忘れちゃうんだよね」なんてことを言っている方は、自分の行動をちゃんと見直してください。あなたが見えていたって(おそらくちゃんとは見えていないはずです)周りがあなたのクルマを認識できているとは限りません。だからこそ早めにライトを点灯するべきなのです。

もし、どのタイミングで点灯すればいいのかわからないのなら、今後は例えば、対向車に発売されたばかりの新型車がいたら、そのクルマのヘッドライトを観察しましょう。自分ではまだ大丈夫だと思っていても、その対向車のライトが点灯していたら自分のクルマのヘッドライトも合わせて点灯するようにしてください。それが適切なライト点灯のタイミングです。あなたがちょっと行動を変えるだけで、他のクルマや歩行者のリスクもきっと軽減できるはずです。