日本の夏の厳しい暑さは人間にとってもつらいものですが、クルマにとっても決して楽ではありません。人間は涼しい場所でリフレッシュできますがクルマはそうはいきません。そのため想像以上に暑さや日差しによるダメージが蓄積しているはずです。

例えばより高温となるエンジンはオイルの劣化も進みやすく、また冷却水なども暑さで蒸発することもあるでしょう。また、海の近くを走ったのであれば塩分や砂がボディに付着していますし、ゲリラ豪雨のあとの晴天でボディの塗装面にはウォータースポットやイオンデポジットができているかもしれません。エアコンなどの使用頻度も上がればバッテリーにも負担がかかっているはずです。

細かなことですがこういったダメージが蓄積すると、それが原因であとから大きなトラブルとなる可能性もあります。もし、故障やサビなどの発生があれば、致命傷です。特にカーリース車両の場合、車両へのダメージ=返却時の査定額のマイナスや、最悪違約金となることも。そうならないように、暑いなか頑張ってくれたクルマへのねぎらいの意味もこめて夏の終わり、本格的な秋がはじまる前にしっかりと洗車やメンテナンスをしてあげてはいかがでしょう。

クルマにとって厳しい
チョイ乗りの繰り返し

新型コロナのせいで2020年はいつもとはまるで違う夏になりました。イベントというイベントはすべて中止。旅行や帰省にも自由に出かけることができず、子供たちにとっても夏休みがあったのかなかったのか微妙な感じなのではないでしょうか。おそらく夏が満喫できた!などと感じている人はおそらくほとんどいないです。

ただし暑さに関しては別です。相変わらずというか、むしろいつもよりも猛暑となった気がします。外に出かける機会こそ減りまししたが正直ステイホームであっても本当に厳しい暑さでした。

そんな人間にとってもつらい暑さは、実はクルマにとっても相当に堪えるもの。帰省やロングドライブに使う機会はなかったかもしれませんが、ソーシャルディスタンスを保つために、ちょっとした買い物などにもクルマを使う機会が増え、むしろチョイノリ的な使い方でクルマを酷使したなんてこともきっとあるでしょう。

短距離走行に使っている分には大してクルマにダメージなんてたいしてないのでは?と思われるかもしれませんが、逆です。いわゆる1回の走行距離が短いチョイ乗りは、水温などの各部の温度が低い状態での走行を何度も繰り返すことになり、バッテリーの充電も十分に行えないなど実はクルマにとってはシビアな乗り方なのです。ということは、チョイ乗りを繰り返した2020年の夏は、むしろいつも以上にダメージが蓄積されている可能性があるのです。

それに猛暑でしたから日差しによる塗装へのダメージや、豪雨によるボディ各部へのダメージも当然あったでしょう。となればやはり夏の終わりにはしっかりとしてお手入れや、メンテナンスをしてあげるべきなのです。

小さなダメージも放置しておけば
最後に最悪の事態になることも

特にお使いのクルマがカーリース車両なのであればなおさらです。その理由はクルマのダメージがあとあと査定価格に響いてくるからです。カーリースでは、リース契約満了時のクルマの予想価値(残価)を予測し、その分を差し引いてリース料を決めています。これがいわゆる残価設定。

そして、リース契約満了時には、その返還車両を査定して査定額と契約時に設定した残価との差額を精算することになります。査定額が当初の見積もりよりも上回った場合にはキャッシュバックや次回のリース契約で使えるクーポンなどがもらえることもありますが、逆に査定額が残価を下回れば原状回復のためにその分の不足分を違約金として請求されます。

つまり、クルマにダメージがあればその分余計な費用負担が必要となるということです。事故のような大きなダメージでなくても、ボディの痛みやちょっとした不具合を放置していればやがてサビや致命的な故障につながる可能性もあります。夏のダメージを放置しておけばそのような最悪の事態になることだってないとは言えません。

だからこそ、季節の変わり目にはクルマの洗車やちょっとした点検を自ら行って、不具合の予防をおこなっておくべきなのです。そういったちょっとした手間をかけることでクルマに対しても愛情がわきますし、あとで余計な出費をせずにすむかもしれません。

暑さが残る中の洗車は体力的にも大変ではありますが、クルマのコンディションをリース満了時までしっかりキープするためにも、ここはちょっと頑張って、自分でできる洗車や簡単なメンテナンスを是非実施してみてください。

特に知識がなくても簡単に行えるのがオイルと冷却水のチェックです。最低でも量の確認を行いましょう、冷却水はわずかですが蒸発しますし、エンジンオイルは徐々に減っていくもの。特に負荷の多い夏場は減りが早くなる傾向があります。ちゃんと規定量入っているか確認して下さい。冷却水はリザーバータンクでチェックします。キャップに「COOLANT」や「冷却水」と書かれている白いタンクを探してください。半透明になっていて側面にメモリが刻まれているはずです。上下のラインの間に液面があればOKです。下限のメモリより下の場合はクーラント液を補充します。

エンジンオイルはレベルゲージで確認します。エンジンの近くにある黄色やオレンジの輪っかを探してください。エンジンを止めたらこの輪っか部分を引っ張ってレベルゲージを抜き取ります。抜き取ったら先端についているオイルをいったんキッチンペーパーなどで拭き取ります。拭き取ったキッチンペーパーを見て、オイルの汚れがひどくないか確認します。ある程度の汚れはあって当然ですが、金属粉などが目立つようであればエンジンに何かしら問題がある可能性があります。

汚れを確認したら、レベルゲージを戻し最後まで差し込んで再度引き抜きます。先端を見てください。上下に2つの小さな穴があるはずです。上の穴が上限値、下の穴が下限値でこの間にオイルの跡があれば量に問題はありません。下限値以下の場合はオイルを補充します。もしくはオイル交換を行った方がいいでしょう。

オイルや冷却水の点検をしたらせっかくボンネットを開けたのですからウォッシャー液の残量もチェックしましょう。減っていたら同じ種類のウォッシャー液を補充しておきます。その他オイルなどがエンジンルームににじんでいないかどうかなども確認しておきます。きになる点があれば整備工場やディーラーなどで本格的な点検を行った方がいいでしょう。

クルマのお手入れの基本は洗車
各部の点検もかねて手洗いがおすすめ

オイルやバッテリー、冷却水のチェックが終わったら、次は洗車をしましょう。クルマのお手入れの基本です。隅々まで掃除することで汚れが落とせるだけでなくさびやへこみなどのダメージを発見できる場合もあります。洗車する際に重要なのが洗車用品です。最低でもバケツ、洗車用シャンプー、シャンプー用のスポンジ、ワックス、ふき取り用のクロスや人工セームなどを用意しましょう。くれぐれもシャンプーが無いから台所の食器洗い洗剤を使おうなんてことはやめてください。食器用洗剤は泡が残りやすく水洗いに余計な手間がかかるので使わないのが正解です。

そしてシャンプー以上に重要なのが拭き上げや磨き用のクロスやウエスです。できれば専用の人工セームや拭き取りクロスなどを用意しましょう。あまりおすすめできないのは使い古したタオルです。理由は繊維が硬くなっているので使用すると塗装面に傷つけたり、繊維くずがボディに付着することがあるからです。これらに加えて徹底的にクルマを磨き上げるなら鉄粉取り用の粘土やコンパウンド、さらに樹脂パーツ用のツヤだし剤や、ホイール専用のシャンプーやクリーナーまで用意すると完璧です。

夏が終わってもしばらくは暑い日が続くので洗車をするなら天気は曇りがベストです。なぜならば、強い日差しが降り注ぐ中で洗車を行うと、シャンプーをしている間にボディが自然乾燥してしまうからです。自然乾燥させてしまうとそれら不純物がボディに残りウォータースポットやイオンデポジットなどの跡が残ってしまいます。どうしても晴れの日に洗車を行わなくてはならないなら、少なくとも日陰で作業は行いましょう。

シャンプー前にまずは水洗い
たっぷりの水で汚れを落とそう

クルマは上から下に洗うのが基本ですが、その前に泥がこびりついたホイールハウス内やフロア下を洗浄したほうが良いでしょう。なぜならその部分を最後に洗うと汚れが飛び散りせっかく洗ったボディを汚してしまうからです。

ホイールハウスを洗ったあとは、ボディの水洗いではなくシャンプーでホイールを洗います。ホコリや泥などの汚れだけでなくホイールにはブレーキダストの汚れがこびりついているので先に洗っておきますシャンプーはスポンジに直接つけるのではなく、泡立てたものを用意しておきます。空のバケツに適量のシャンプーを注ぎ、その上から水道水を勢いよく流し水流で泡立てましょう。こうすると空気をたっぷり含んだシャンプー液が出来上がります。ホイール洗い用にボディ洗い用とは別のスポンジを用意し、たっぷり泡でホイールを洗いましょう。アルミホイールなどは複雑なデザインを採用していることもあるので、ホイール専用のスティックタイプのスポンジなども用意しておくといいでしょう、ホイールを洗い終えたら水で流し、使ったバケツもしっかり洗います。なぜならバケツ内にブレーキダストなどが残っている可能性があるからです。

ホイールを洗い終えたら基本に則ってルーフからボディの下に向かい水を吹き付けて汚れを下に流し落とします。その際スポンジなどでこすってはいけません。水の圧力だけで汚れを流します。さらにボディの隙間や、モールやエンブレムなどのパーツの取り付け部分もしっかり洗いましょう。

全て水洗いをしたら水分が乾かないうちにボディをシャンプー洗いします。ホイールに使ったのとは別のスポンジでボディ上から下へと泡で汚れを包み込むようにして洗っていきます。スポンジでごしごしこするのではなく、やさしくなでるように洗っていきましょう。全て洗い終えたら、水で完全にシャンプーを流し落とします。シャンプーが渇く前に手早く流してください。

そしてすぐに水分を拭き取ります。この時も水分を自然乾燥するのはNG。さらにドアやトランクなどは開けて隅々まで拭き取ります。専用の人工セームや吸水クロスなどを使うと素早く拭き取ることができます

鉄粉取りで下地を整えてから
ワックスやコーティングを行おう

水分を完全に拭き取ったら次はワックスがけもしくはコーティングです。ただし、ボディの表面を指でなで、ザラザラとした感触があったら鉄粉取り粘土で鉄粉を取り除いておきます。鉄粉が残ったままワックスをかけてもツヤがでないだけでなく、残った鉄粉でサビが発生してしまうことがあるからです。特に周囲に鉄道や工場、交通量の多い幹線道路などがあるなら、鉄粉やブレーキダストがボディ表面のクリア層に食い込んでいる可能性があります。鉄粉取りねんどや、スプレー式の鉄粉取りクリーナーは商品の説明書の通りに正しい手順で作業を行ってください。

また、シャンプーで落とせなかったこびりついた汚れやクリア層に細かな擦り傷がある場合はボディクリーナーやコンパウンドを使って表面を整えましょう。

最後に保護とツヤ出しのためにワックスがけもしくはコーティングです。ワックスとコーティング剤の目的は、塗装面の保護と撥水(もしくは親水・疎水)、ツヤ出しです。ツヤはワックスのほうが優れているとされていますが、耐久性では間違いなくコーティング剤が上です。ボディ表面の保護が主な目的ならコーティング剤を使います。コーティング剤は、製品によって使用方法が違うので、付属している説明書を事前に読んでおきましょう。

塗り方のコツとしては一度にボディ全体に施工するのではなく、ボンネット、右ドア、トランクなどエリアを区切って、そのエリアごとに作業をすることです。そのほうがコーティングムラなども起きにくいのでおすすめです。最後に仕上げとして乾いたウエスで乾拭きすれば完了です。

シートには汗が染みついている
放っておくと悪臭の原因に

クルマのお手入れはボディ表面だけでなく、車内のケアも必須です。なぜなら夏はシートに素肌が密着するのでシートなどには汗が染みついており悪臭の原因となるからです。また、食べ物のカスやタバコ、ペットの毛、ホコリなども臭いの原因となるのでしっかり取り除きましょう。

まず徹底的に掃除機をかけます。家庭用の物を使用するか、コイン洗車場などの吸引力の高いものを使用しましょう。また、バッテリー式でも最近の家庭用のものはパワーも強力なのででそういったものを使ってもいいでしょう。

お勧めできないのは数千円で買えるシガーソケットから電源を取るクルマ専用の掃除機です。吸引力が十分ではなくシートの生地の奥に入り込んだホコリなどは吸い込めないので車内の掃除には正直あまり役に立ちません。

車内の掃除を行う前には荷物などをすべて片づけておきます。そしてフロアマットもすべて取り外し車外に持ち出します。フロアマットの汚れがひどい場合は、専用シャンプーを使って洗い、完全に乾燥するまで干しておきましょう。汚れがそれほどひどくない場合は、クルマから離れた場所(近いとホコリや砂がボディに付着してしまう)で、表面の砂や泥、ホコリ、食べ物や髪の毛などのゴミを叩き落します。布団たたきのようなもので軽くたたくといいでしょう。

さらにブラシをかけると奥に詰まった汚れも落とせます。そのあとに掃除機をかけ細かなホコリなども取り除いたら、最後にしっかりと湿気を取り除くために干します。完全に乾燥するまで干してください。フロアマットを干している間に車内を掃除していきましょう。

こびり付いた汚れは拭き掃除
最後に車内をしっかり乾燥

車内の掃除も上から下が基本です。まずは、天井をやさしく拭きます。洗濯用洗剤をバケツに適量とり、水で100倍程度に薄めてからウエスを浸し固く絞って拭いてきます。また車内掃除用のウェットシートというのもあるのでそちらを使ってもいいでしょう。ゴシゴシ擦ると素材が痛んだり、毛羽立ってしまうので力を入れすぎないように気を付けてください。

次にモップやブラシなどを使って、ハンドル周辺やダッシュボードの奥、メーター周りやエアコンの吹き出し口に溜まったホコリを取り除きます。見逃しがちですがドアポケットやドリンクホルダーなども確認します。そして先ほど天井掃除に使ったのと同じ洗剤液で拭き掃除をします。さらに、シートの表面の汚れも同じように拭き取りましょう。意外に汚れているはずなので、適宜ウエスをすすぎながら作業して下さい。

拭き掃除が終わったらシート下や座面、座面の隙間などに徹底的に掃除機をかけゴミを取り除きます。シートが終わったらフロアのカーペットにも掃除機をかけ隅にたまった汚れを取り除きます。食べかすなどが残っていると臭いの原因になるので、細かな部分も見落とさないでください。掃除機をかけ終えたら干しておいたフロアマットを車内に戻し、最後に換気をして車内をしっかり乾燥させましょう。

掃除をしても気になる臭いが残っている場合は専用の消臭剤などを使うといいでしょう。隅々まで消臭したいならスチームタイプを使ってみてださい。車内の奥まで広がり、エアコンの内部まで強力消臭することができます。ここまで徹底的に掃除をすれば見違えるほどクルマはピカピカになったはずです。

明らかな不具合やダメージを
発見したら早めに修理を

点検や洗車を行いもし明らかな不具合やダメージを発見した場合は、修理工場やディーラーなどにクルマを持ち込み点検と修理を行ってください。カーリース車両の場合は、先にリース会社に連絡をしてどこで修理や点検を行えばいいか確認してください。小さなダメージも放っておくと致命的なトラブルの原因となります。しかし早めに対処を行っておけば大きなトラブルも防ぐことができ、また、長くクルマのコンディションをキープすることもできます。季節の変わり目ごとの点検や、徹底的な洗車はクルマのためでもあるのでぜひ習慣づけておくことをおすすめします。