皆さんはご自身が所有しているクルマがリコールの対象となったことはないでしょうか。リコールとは販売されたクルマに、設計や製造の過程で何らかの問題があったということが判明した際に、その問題部分をメーカーが無償で正常化(部品交換、補修など)するというもの。

リコールの対象となればディーラーなどからお知らせが届くのでユーザーはクルマをディーラーに持ち込むだけで無償での改修が受けられます。

そんなこと知っているよ!という方も多いと思いますが、ではそのクルマが購入したものではなくリース車だった場合はどうでしょう。かってにディーラーに持ち込んでいいのでしょうか?いったいどのように対応すればいいのでしょう。

ホンダN-WGNが
発売2か月でリコールに

先日ホンダから発売されたばかりの軽自動車「N-WGN」が突然の出荷停止となりました。理由は電動パーキングブレーキに問題があるということが判明したためです。2019年8月の発売開始からわずか2か月で出荷が停止となってしまったこともあって、新聞やニュースメディアでも取り上げられました。発表直後からかなり注目を集めていた期待のクルマだけあってホンダにとってもダメージは小さくありません。

そして、わずか2か月の間に販売されたN-WGNに関しては、リコールの対象となったためホンダによって無償によるブレーキの改修が行われています。

さらに、この影響はN-WGNだけではなくフルモデルチェンジが予定されていた新型FITにまで及びました。FITは2019年の東京モーターショーでお披露目となりすでにその姿をご覧になった方もいるはずです。

FITといえばホンダにとってドル箱。フルモデルチェンジに関しては相当に力を入れていたはずです。モーターショーで大々的に発表、直後に発売開始というシナリオだったはず。しかし当初2019年中に発売が予定されていたものが新型FITにもN-WGNと同じ電子パーキングブレーキの搭載が採用される予定だったため、急遽別メーカーのパーキングブレーキシステムへの変更が決定。そして発売が2020年にずれ込むことになったのです。

現時点(2019年1月10日)では、2020年2月に発売となるとされていますが、新型FITの購入を検討されていた方の中にはこの遅れにがっかりされたという人もいるのではないでしょうか。とはいえ、発売前に問題が発見できたわけですから決して悪いことではありません。それに過去の教訓をいかして不具合に対して素早く対応したのですからむしろこれから発売となる新型FITは安心して購入することができるクルマになったともいえるでしょう。

リコールは決して悪いことじゃない
いわばメーカーの真摯な対応

ホンダのN-WGNという話題のクルマがわずか2か月で出荷停止となりリコールを実施というのはさすがに異例ですが、新車がリコールの対象となるのはさほど珍しいことではありません。発売直後のクルマがリコールになるなんてホンダはけしからん!などと思う人も中に入るかもしれませんが、重大な事故などが起こる前に不具合を発表し、即座に出荷停止&リコールを実施したわけですから、むしろホンダは真摯に誠実な対応をしたといってもいいではないかと筆者は思います。

逆に過去には「リコール隠し」などが発覚し大問題になったケースもありました。結果そのメーカーは評価を大きく下げ業績も大きく低下することにもなったのです。それを考えると今回のケースでは、不具合を隠すことなくすぐに対応したのですから決してネガティブなことではないのです。

そもそもリコール自体は決して珍しいものではなく、皆さんの中にも過去に何度かマイカーがリコールの対象となったという人もいるはずです。それにもしかしたら今皆さんが今使用しているクルマが実はリコールの対象となっていて、それを知らずに乗り続けているという可能性もあります。

自動車のリコール場合、自動車メーカーはそのことを、国土交通省を通して発表します。安全性にかかわる大規模なリコールともなれば報道機関などでも大きく取り上げられますが、比較的影響の小さなリコールの場合でもディーラーなどからお知らせが届くはずなので、そのクルマのオーナー(または使用者)であればすぐにわかるようになっています。

また、定期的にディーラーに整備などを頼んでいればその際にリコールがあったことを教えてもらえますし、軽度な改修であればその場で実施してくれるはずです。

しかし、見逃してしまうケースもないとはいえません。お知らせがはがきなどで届いていた場合はそのはがきなどを捨てしまうなどということもあるでしょう。引っ越した時に住所の変更の登録をしていないせいでお知らせが届いていない可能性もあります。自分の使っているクルマがリコールの対象になっていないかどうか、気になる方は自動車メーカーのサイトなどで、自分のクルマの車種名、年式などから検索してみるといいでしょう。または、国土交通省の「自動車のリコール・不具合情報」で検索してみてください。

「自動車のリコール・不具合情報」

こちらから車名や型式などを入力して検索すると、簡単に調べることができます。またトップページには最新のリコール情報などが掲載されているのでチェックしておくとよいでしょう。過去に行われたリコールで、未改修の場合は重大な事故につながりかねないものなどもあるので、確認しておいて決して損はありません。

もしそのクルマが中古車で、リコール対応が行われたかどうかわからない場合はステッカーで確認できます。リコール改修後には自動車安全対策協議会のステッカーが貼られ、ステッカーにリコール届け出番号が表記されているのでどのリコールに対する改修が実施済であるかがわかります。貼り付け場所は平成18年12月31日までがリアウインドウガラス。それ以後は運転席ドアのドアロックストライカー付近に貼られているはずですので確認してみてください。ただ、このステッカー貼り付けていなくても罰則などはないので中にははがしてしまっているケースもあるようです。その場合は記録簿などを見ることで実施されたかどうかを判断するといいでしょう。

リコールの改修を受けていない
せいで車検が通らないことも

検索をしてみて、もし自分のクルマがリコールの対象となっていたら、早急にディーラーに持ち込みましょう。「現状特に不具合もないし、すぐに事故につながるような重大なリコールじゃないから別にいいや…。」などと放置するのはやめたほうが良いです。

確かにリコール対象になっているからといって、全てのクルマが即座に故障する、事故を起こすというわけではありません。保安基準と関連しない部分についてのリコールであれば車検にも関係はないでしょう。

しかし、安全に関わる保安部品のような「車検検査該当項目」に関する部分がリコール対象となっている場合は、リコール改修を行っていないと車検に通らないこともあります。例えば、過去大きなニュースにもなったリコールの中には、タカタのエアバッグリコールがありました。とても危険性が高いものということでもしそのリコールが改修されていなかった場合、そのクルマは車検が通りません。前述した「自動車のリコール・不具合情報」のトップページでも大きくアナウンスされています。つまりは現状走行に問題がなくても、そのクルマで公道を走れなくなってしまうのです。もっともそれ以前に重大な事故につながる危険性もあるのですからリコールに対応しないというのは言語道断です。

このようにリコールが発覚したら早急に対応するのが正しいのですが、そのリコール対象となったクルマが自分で購入したものでなくリース車だった場合はどうなのでしょう。リースを利用されている方はご存じのはずですが、リース車の使用者名義はリースを契約したユーザーですが、クルマの所有名義はカーリース会社です。

つまり、リース会社から一定期間クルマを借りて、マイカーのように使用しているという形。定額のリース料金をリース期間中負担することで、そのクルマの所有者として自由に使用することができ、また車検や保険、税金などの費用もリース料金に含まれているので家計の管理が簡単。さらにカーリースのメリットとしてうたわれているのがメンテナンスなどのクルマの管理をリース会社にすべて(任意の自動車保険の加入や消耗品などの交換は除く。)任せることができるということ。

クルマのメンテナンスや手入れはクルマいじりが好きな人にとっては苦ではありません。しかし、クルマを使用する方全てがそうではなく、あくまで移動のための手段として割り切っているならば、クルマの管理は手続きやメンテナンスなどは自分で行うのが面倒ということもあるでしょう。普段からクルマの点検なども任せっきりにしている場合、いざクルマがリコール対象となった場合、どのように対処すればいいのかわからない、などということもあるのではないでしょうか。

リコール対象となったら使用者の
ユーザーが自身で正規ディーラーに依頼

では、実際にリース車両がリコールの対象となった場合どうすればいいのか。簡単です。自分でその自動車メーカーの正規ディーラーに持ち込めばいいのです。リコールのお知らせはがきは車検証に記載されている「ご使用者」の住所に基づいて、その使用者住所に近い正規ディーラーから送付されることになっています。

ただし、リコールの改修や修理は全国にあるその自動車メーカーの正規ディーラーで受け付けているので、もし付き合いのあるディーラーがあればはがきに記載されているディーラーでなく、そちらに依頼してももちろん構いません。

どこに持ち込むか決まったらそのディーラーに連絡をとって、リコール改修の依頼をします。大規模なリコールの場合混み合う場合もあるので、早めに連絡を入れ、いくつか候補日などを提案し予約を入れましょう。そしてクルマを持ち込み改修、修理をしてもらいましょう。

リコールには期限はない
正規ディーラーがいつでも対応

このようにリコールは基本的にリース会社に依頼するのではなく、リース車を使用しているユーザー側で対応することになります。その理由は、リコールは自動車メーカーの責任によって行うもので、修理や車検などとは違ってその責任はカーリース会社ではなくメーカーにあるためです。

気を付けないといけないのが、リコールは基本的には民間の自動車整備工場では受け付けていないということ。リース会社によってはリース車のメンテナンスに自動車整備工場が指定されている場合がありますが、そこがメーカーの正規自動車ディーラーではない場合リコールに対応していない可能性が高いです。いまいちわからないという場合はリース会社に連絡し「リース中のクルマがリコールになったのですが、どうすればいいのですか」などと問い合わせてください。おそらく近くの正規ディーラーに持ち込んで対応してもらってくださいと言われるはずです。

ちなみにそのクルマを扱う(過去に扱っていた)正規ディーラーであれば、全国どこでもリコールの対応を行ってもらえます。さらにそれは中古車であってもかわりません。

そしてリコールの対応に関しては、期限などはありません。安全にかかわるものですし、自動車メーカーの責任として必ず行わなければいけないものなのでもしリコールの通知が届いてから何年も経過してしまったという場合でも、正規ディーラーに持ち込めばちゃんと無料で対処してもらえます。クルマの保証期間が過ぎていても関係ありません。その点は安心してください。