月々の負担が少なく、気軽に新車に乗ることのできる方法として、近年利用者が増加しているのがカーリースです。予算が厳しくて今まではレンタカーはカーシェアリングを利用してきたけれど、これなら新車が手に入る!と初めてのクルマとしてカーリースを利用する若いドライバーも増えているようです。しかし、カーリースの場合、基本はマイカーと同じなので使用中のちょっとしたトラブルは、リース契約者による適切な対応が求められます。例えばバッテリー上がりなどの場合その適切な対応とは何なのか?また上げってしまったバッテリーは勝手に交換していいものなのか?カーリースならではの疑問について調べてみました。

ちょっとした不注意で
バッテリー上がりは起きる

カーリースは、購入するのではなくクルマをリースし、まるでマイカーのように乗ることができるというもの。サブスクのクルマ版として特に若い世代から注目を集めています。なんといってもカーシェアリングやレンタカーとは違ってリース期間中は、自分のクルマとして好きなように乗ることができるうえ、面倒な税金、保険、車検などの手続きもリース会社に任せられる。さらに月々の支払いは定額で良いのですから魅力的に映るのも当然のことでしょう。

しかし、カーリース車両をマイカーのように使っていると、レンタカーやカーシェアなどではなかった思わぬトラブルに遭遇することもあります。その代表がバッテリーあがりでしょう。ヘッドライトの消し忘れなどちょっとした不注意でバッテリーが上がってしまうことは決して珍しくありません。その場合、どのように対応するのが正しいのか。またそれが原因でバッテリーがダメになってしまったらどうすればいいのでしょう。リース車のバッテリーは勝手に交換しても構わない?それとも何か問題があるのでしょうか。

カーリース車のトラブルは
指定工場で修理するのが基本

そもそもカーリース車両の場合、バッテリー上がりだけでなく故障した時もその対応には注意しなければいけません。その理由はカーリース車両の所有者はあくまでカーリース会社だからです。マイカーのように自由に使うことができますがあくまでそのクルマの持ち主はカーリース会社であり、リース契約者は使用者なのです。つまり、どのように修理をするのかはそのクルマの「所有者」、つまり持ち主であるカーリース会社の判断を仰ぐ、というのが正しい対応です。

カーリース会社によっては、整備や修理は契約をしている特定の業者で行う、と決まっている場合があります。もちろんそうでないケース(正規ディーラーに持ち込みでOKなど)もあります。バッテリー上がりの修理を含めてメンテナンスをどこでうけるべきなのか、もし把握していない場合、そのクルマのリース契約者が勝手に判断して、なじみの修理工場に持ち込んでしまうとのちのち問題になる可能性もあります。場合によっては改造と判断されペナルティとなり、違約金などが請求されるケースもなくはないのです。

また、メンテナンスリースの契約プランによってはバッテリーの交換サービスがはじめから含まれていることもあります。その場合、自分でバッテリーを購入して勝手に交換してしまうと逆に損することになります。自費で購入したバッテリー代を後から負担してもらえるということは、あまり期待できません。リース会社によっては緊急事態の場合、自費で修理を行い後から返金を受けられるというプランもあるようですが、すべてのリース会社ではないので、それを期待して勝手に修理やバッテリー交換を行うというのは避けたほうが間違いありません。

ドライブ先でのトラブルは
ロードサービスを利用する

ではどうすればいいのか?トラブルや無駄な出費を防ぐためには、まずは契約内容を確認しておきましょう。修理を指定工場で行ってくださいとなった場合は素直にその通りにするべきです。とはいえドライブ先で突然バッテリー上がりとなってしまったという時はどうすればいいのか。エンジンが始動しなければクルマを動かせません。当然指定の修理工場に持ち込むことだってできませんね。

その場合の正しい対応はロードサービスを呼ぶことです。JAFなどもありますがほとんどのカーリース会社ではリース利用者のためのロードサービスを用意しています。バッテリー上がり程度なら無料で対応してもらえるはずです。もしどこに連絡すれば失念してしまったという場合は、リース会社に問い合わせればいいでしょう。対応してもらえるロードサービスの連絡先を教えてくれるはずです。

あとは、ロードサービスの到着を待って、バッテリーを充電してもらえばとりあえずの問題は解決です。カーリース会社やロードサービス、または自動車保険会社など必要な連絡先は車検証やクルマのグローブボックスの中などに保管しておくことをおすすめします。

しかし、ロードサービスもすぐに対応してくれるとは限りません。雪のシーズンなどは利用者も多く、到着まで長時間待たされることもあるでしょう。そんなときは自力でバッテリージャンプを試みるのもいいでしょう。近くに救援してくれるクルマがいて、手元にジャンプケーブルがある場合に限られますがこれならロードサービスを待つ時間も必要ありません。そのやり方自体はとても簡単です。

「でも、カーリース車両なのにそんなこと勝手にやっていいの?」と疑問を持つ方もいるかもしれませんが、クルマやバッテリーに何か手を加えるわけでもありませんし、特に問題となることもないはずです。

バッテリーどうしを繋ぐための
ジャンプケーブルとは

ジャンプケーブルなんてもっていない、それって何なの?という方もいるかもしれません。簡単にいえばクルマのバッテリーどうしをつなぐケーブル(電線)です。ブースターケーブルなどとも呼ばれており、車載工具などには含まれていません。そのため別途購入しておく必要があります。

価格は数千円程度。一般的な乗用車用の12Vタイプとトラックや大型SUV(古いランクルなど)に対応した12V/24V兼用のもの、また、電圧だけでなく許容電流値(A/アンペア)によっても太さが違い、さらに高電圧のハイブリッドカー対応タイプなどもあります。

単に電気を流すだけのケーブルになぜいくつもの種類があるのかというと、エンジンの始動時に必要とする電流の大きさは自動車(のエンジン排気量)によって異るからです。だいたい目安としては50A(アンペア)以下なら軽自動車まで。80Aなら2500㏄くらいまでの乗用車。そして100Aなら大排気量の乗用車やディーゼル車、2tトラック。それ以上が大型のトラック、トレーラーなどに対応しています。

もし許容電流値が小さいケーブルを、大きな電流を必要とするトラックなどに使用すると最悪の場合、ケーブルが熱を持ち発火してしまうこともあります。そうなれば燃料に引火するかもしれません。大事故の原因となるので絶対に使わないでください。

じゃあ許容最大値のとにかく大きなジャンプケーブルならいいのかというと、そうともいえません。その分ケーブルが太く、重くなりトランクで邪魔になります。さらに価格も高くなるので、むやみに最大許容電流値が高く、太いケーブルを購入すればいいというわけではありません。自分のクルマにあった適切なものを選ぶのがやはり間違いないでしょう。

ジャンプケーブルは基本的に黒と赤の2本のケーブルがワンセットでケーブルの両側にバッテリーの端子やエンジンの部品などを挟むことができるワニグチクリップが付いています。2色になっているのはつなぎ間違いを防ぐためで、+極には赤色のケーブルを、-極用には黒色のケーブルをつなぐのが基本です。

バッテリーの充電が十分にある救援車が近くにいればそのクルマのバッテリーに片側をつなぎ、もう片側をバッテリーの上がったクルマにつなげることで電気を分けてもらうことができます。そしてエンジンの再始動やハイブリッドカーのシステム起動が可能となるわけです。新品のバッテリーであっても不注意で駐車中にヘッドライトを付けっぱなしにしてしまうことがあるかもしれません。そのような状況でもジャンプケーブルを用意しておけばいざという時安心です。ただし、いざという時にあわてないように、その正しい使い方を覚えておく必要があります。

つなぎ方は赤をプラスとプラス
黒をマイナスとマイナス

ジャンプケーブルはいざという時に正しく使用できないと意味がありません。パッケージに使い方などが記載されていますが、入手したらあらかじめどのように使うのか予習しておくといいでしょう。使用する際に必要なものはそのクルマに合ったジャンプケーブルと感電防止のゴム手袋です。バッテリーの端子が見えるようなら工具なども基本的に必要ありません。その使い方はとても簡単です。次の順番でつないでいきます。

  • ①車を近付ける

    バッテリーがあがったクルマと救援車(電気を分けてくれる車)のボンネットを向かい合わせ、ケーブルで届く範囲までできるだけ近づけます。作業のためのスペースも確保してください。

  • ②パーキングに入れる

    エンジンを停止したら双方のクルマともMT車ならニュートラルに、ATならPに入れます。さらにパーキングブレーキをかけましょう。

  • ③バッテリーの位置確認

    バッテリーの位置を確認します。一部のクルマではトランクにバッテリーが積まれていることもあるので見つからない場合はクルマの説明書を確認してください。

  • ④故障車のバッテリーにケーブルを接続

    準備ができたらバッテリーにケーブルを接続します。まずは故障車のバッテリーのプラス側端子側に赤いケーブルを接続します。

  • ⑤救援車側にもプラスを接続

    次に赤いケーブルの反対側を救援車のバッテリーの同じくプラス端子側に繋ぎましょう。

  • ⑥救援車側のマイナスに接続

    さらに救援車側のバッテリーのマイナス端子にマイナス用の黒いケーブルを接続します。

  • ⑦故障車のマイナス端子に接続

    そして黒いケーブルの反対側を故障車のエンジンブロックの塗装されていない金属部分(どこでも可)に繋ぎます。金属部分が見つからない場合はバッテリーのマイナス端子につないでもかまいません。

  • ⑧救援車のエンジンを始動

    救援車のエンジンを始動しエンジンの回転数を少し上げます。10分ほど待ったら故障車のエンジンを始動します。

  • ⑨ケーブルを外す

    エンジンがかかったら、故障車のエンジンは止めずにケーブルだけを外します。外す順番はつないだ時と逆、故障車のマイナス→救援車のマイナス→故障車のプラス→救援車のプラスです。ケーブルを外したら30分~1時間ほど走行し充電します。

  • 以上で完了です。

ジャンプケーブルは双方のバッテリーのプラスどうしを赤いケーブルで、マイナスどうしを黒いケーブルで繋ぎます。「赤プラプラ、黒マイマイ」と覚えておきましょう。軽微なバッテリー上がりであればこれでトラブルはほぼ解決するはずですが、できればあとでバッテリーの補充電を行っておくと安心でしょう。バッテリーの充電器はカー用品店などで手に入ります。また、カー用品店などでも補充電サービスを行っているのでそちらを利用してもいいでしょう。

ただし、ジャンプケーブルを使い、いったんエンジンが始動できたとしても、バッテリー上がりによってバッテリーが大きなダメージ受けている可能性もあります。またバッテリー上がりの原因がオルタネーター(発電機)の故障だった場合はさらに深刻で、エンジンを止めてしまうと再始動ができなくなってしまいます。もしそのような状態ならディーラーや修理工場などで点検や修理をしてもらわなくてはいけません。その際は、どこで修理や点検するべきかをカーリース会社に問い合わせることを忘れないでください。

ハイブリッドカーの場合は
バッテリージャンプに注意が必要

ジャンプケーブルを使った救援に関してですが、ハイブリッドカーの場合は注意が必要です。それはハイブリッドカーは他のクルマからバッテリー上がりの救援をしてもらうことは可能でもその逆は不可能だからです。その理由はスタート時に使用する電気の大きさが違うからです。

ガソリン車のバッテリーは、エンジン始動時に大きな電力によってスターターを回すのに対して、ハイブリッド車のシステム用バッテリーは、スタート時に必要とするのはコンピュータを起動させるだけの小さな電力だけ。つまり同じスタートでも流れる電気の大きさが違うのです。そのためジャンプケーブルによってハイブリッドカーとガソリンエンジン車のバッテリーどうしをつなげ、救援される側のクルマ(ガソリンエンジン車)のエンジンをかけてしまうと、その瞬間にガソリンエンジン車からハイブリッドカー側に大きな電流が流れてしまい、ハイブリッド車の電源系統やハイブリッドユニットが故障してしまう可能性があるからです。

必ずしも壊れるとは限りませんが、自動車メーカーでもハイブリッド車による他のクルマへのジャンピングによる救援を禁止しています。リースで使用しているクルマがハイブリッドカーならこのことをしっかりと覚えておいてください。