クルマの大敵であるサビ。一度発生してしまうと徐々に広がり、それを放置すれば最後には取り返しのつかないことに…。そうならないためにもサビは発生させないのが一番です。そしてもしみつけたら早急に何らかの処置を施しましょう。それは自分のクルマでもカーリース車両でも変わりません。

とはいえサビは鉄でできたボディを持つクルマでは避けがたいもの。どんなに気を付けてもサビてしまう可能性はあります。自分のクルマならあきらめるという手もありますが、気になるのはリース車両にサビが発生してしまった場合です。リース終了後返却時の査定に影響はでるのでしょうか。またリース期間中サビが発生するのを防ぐにはどうすればいいのでしょう。なにか効果的な対策があるのでしょうか。

クルマが鉄を使用している限り
避けられないリスクがサビ

クルマのボディの主な材質はスチール(鉄)です。より軽量なアルミやカーボン、樹脂のABSやポリカーボネートなども使われていますが、多くのクルマのボディはスチールでできています。それはスチールが強度に優れ、加工がしやすく、破損した際の修正も容易でコスト的にも手ごろだからです。

このようにスチールは、金属としてとても優れた素材なのですが、金属である以上避けられないリスクがあります。それはサビです。

特にスチールは基本的に鉄ですから、むき出しの表面が空気(酸素)や水に触れると、またたくまにサビが発生してしまいます。クルマの場合、もちろんサビが発生しないように塗装やコーティングなどの処理はほどこされていますが、その表面にちょっとした傷や経年による塗装の劣化や剥がれ、また潮風や融雪剤などに触れると、どうしてもサビが発生しやすくなってしまうのです。

スチールを使用している限り、クルマとサビは切っても切れないものといえるでしょう。サビが発生してしまうと、やっかいなのは少しずつそれが広がっていってしまうということ。最初はごく小さなサビであったとしても、放置しておくとすぐに広範囲に広がり、気が付けばボディやシャシーなどの大きなダメージとなってしまうことも珍しくありません。

そして最悪の場合、パーツの奥深くまで腐食が進行し、車体に穴を開けてしまったり、サスペンションアームなどのパーツが折れてしまうなどということもあるのです。そうならないためには、できるだけサビさせないようにしつつ、サビを発見したら早急に対処しなくてはなりません。

カーリース車両の場合
サビが原因で違約金を払うことも

それは購入したクルマでも、カーリース車両でもかわりません。ただ、カーリース車両の場合は、特にサビには気を付けたいところ。その理由は違約金です。

カーリースでは、リース契約満了時のクルマの予想価値(残価)を予測し、その分あらかじめ車両価格から差し引いてリース料を決めています。これが残価設定です。そして、リース契約満了時に返還車両の査定が実施されて、査定額と契約時に設定した残価との差額を精算することになります。

もしその査定額が当初の見積もりよりも上回った場合にはキャッシュバックや次回のリース契約で使えるクーポンなどがもらえます。しかし、逆に査定額が残価を下回った場合には原状回復のためにその分の不足分を違約金として請求されることになります。リースの場合だかこそクルマの価値ができるだけ下がらないようにリース期間中大切にクルマを扱う必要があるのです。

もし返却時にサビなど目立つダメージがあれば、清算の際にその分の違約金が発生するはずです。それは、ボディ表面が明らかにサビている、というようなものだけでなく、ボディの下回り、普段は目に見えない部分のサビに関しても同様です。特に下回りのサビは普段みえないからこそ、進行が進みやすく気が付かないうちにアンダーフロアやサスペンション、マフラーといったパーツに重大なダメージを与えていいて査定の際に致命的な問題が発覚することもありえます。

そうならないためにも、日ごろからクルマのコンディションに特に気を配っておかなくてはいけないのがカーリース車両なのです。サビが発生してから対処するのではなく、サビが発生しないように日ごろからクルマを手入れしておく。もし海の近くや降雪地でクルマを使用するなら、それ相応のメンテナンスや対策も施しておくべきでしょう。

鉄はサビているのが
最も自然な状態って本当?

ところでそもそもサビるとはいったいどういうことなのでしょう。例えば鉄サビですがこれは簡単に言ってしまえば鉄の酸化物です。つまり鉄(Fe)と酸素が結びついたもののこと。鉄分子が一部イオン化し、酸素と水と反応することで、酸化鉄となったものです。

なぜサビるのかというと、実はこの酸化鉄の状態こそが鉄にとっては最も自然な状態だからです。どういうことなのか? 実は鉄をはじめ金属のほとんどは自然界の酸化物や硫化物等の鉱石を還元操作することによって人為的に作られたものです。つまり、鉄の元である鉄鉱石は本来酸化物、つまり酸化鉄なのです。つまりサビるとは人為的に作られた金属が、大気中の酸素や、水などによって本来の自然な状態に還るイオン化現象のことをいうのです。

そのように本来酸化した状態こそ自然な姿であり安定した状態なので、金属、特に鉄はサビやすいという性質をもっているというわけです。ただ、その状態が自然だといっても放置すれば、やがて形を保てなくなりもろく崩れてしまいます。だからこそそうならないようにクルマのボディには塗装やメッキなどが施され、スチールの表面が水分や酸素と直接触れないようにしてサビを防いでいるのです。

しかし、サビを防ぐ塗料やメッキにわずかでも傷ついてしまえば鉄は空気や水に触れることになりそこからすぐにサビが発生してしまいます。さらにサビの発生やその進行を速めてしまうものとして気を付けなくてはいけないのがです。潮風や冬場の路上に撒かれる融雪剤にはそんな“塩“が含まれています。それがクルマのボディに付着するとサビを発生しやすくなり、さらに進行を速めてしまうのです。塩がクルマをサビさせるという話はおそらく皆さんも聞いたことがあるでしょう。

ただ、塩そのものがサビを発生させるというわけではありません。問題は水です。

サビは鉄と空気(酸素)が結びついて発生しますが、鉄と水、酸素が組み合わさるとその作用はさらに急速に進みます。クルマの下回りの金属部分表面に融雪剤などの塩分が付着するとどうなるか。塩分には空気中の水分を吸って溶けるという性質があります。そして空気中からサビに不可欠な水分を調達して、それを保とうする特性も持っています。

そのため、金属表面に塩分を含んだ水分が付着すると、ただの水よりも、水分がより蒸発しにくい状態になってしまい水分と酸素が、鉄の表面に長く付着し続けることになります。その結果的に鉄がサビやすくなるということなのです。

標準仕様は寒冷地仕様よりも
下回りがサビやすい

「塩がサビの原因なら、自分は海沿いに住んでもいないし、降雪地域でもないなら大丈夫!」と考えているようなら、それは早計です。なぜなら帰省やスキーやスノボなどに出かける際にそういった降雪地域を走る機会もきっとあるはずですまた、結婚や転勤、転職などによってそういった地域に引っ越しすることがあるかもしれません。

さらに注意が必要なのは雪のほとんど降らない地域から、降雪地域に引っ越ししたというケースです。そういった場合は融雪剤によるサビに対して、より注意を払う必要があるのです。それはなぜなのか。理由は雪の降らない地域で購入(リース)されたクルマのほとんどが、寒冷地仕様になっていないからです。

クルマの寒冷地仕様とは寒さが厳しい環境の地域でもクルマが快適にかつ問題なく使用できるように特別な装備を搭載したクルマのことです。気温が低い時にエンジン始動性や暖房の効きやすさを高めたり、低温時でも快適にクルマを運転することができるような装備がはじめから装備されています。さらにこの寒冷地仕様はクルマの下回り(アンダーフロア)に、標準仕様よりもより防錆機能の高い塗装や、防錆コーティングなどもあらかじめ施されています。

また、エンジンアンダーカバーをボディの下面に装備し、エンジンルーム内への雪の侵入を低減するようになっています。つまり、融雪剤が撒かれている道路を走っても、サビにくいようにはじめから特別な処理が施されているのですね。

降雪地域ではこういった寒冷地仕様のクルマが一般的となっていますがそうでない地域では、別途寒冷地仕様にしてほしいと注文しないとそのような仕様にはなっていないのです。つまりは融雪剤に対して無防備ともいえるわけです。

雪道を走ったらすぐに洗車を
こまめな手入れがサビ防止のコツ

もし、そのように寒冷地仕様でない、防錆処理が十分にほどこされていないクルマで、頻繁に雪道を走ればどうなるか。簡単に想像できますね。他のクルマよりもサビが発生しやすくなってしまいます。地域によっては融雪剤が冬の間、常に撒かれていることもあります。つまり融雪剤の影響を冬のシーズンの間ずっと受け続けることになるわけです。下回りに融雪剤に対応できるようなしっかりとした防錆塗装が施されていなければ当然ですがサビのリスクは大幅に高まります。

ではサビを避けるにはどうすればいいのか。その対処は実は簡単です。まめに洗車をすればいいのです。高速道路など多くの融雪剤が撒かれた道路を走った場合にはできれば翌日、遅くても2~3日以内に洗車を行いましょう。街乗りであっても融雪剤が多く撒かれているような場所を走った場合は一週間以内に洗車を行って下さい。

その際、特に影響の大きい下回りを重点的に洗います。家庭の水道とホースでは融雪剤を完全に落とし切るのは難しいのでコイン洗車場のスプレーガンを使用するか、家庭用の高圧洗浄機などを使って念入りに塩分を落としてあげてください。寒冷地仕様でないクルマの場合、冬のシーズンはとにかく、できる限りまめに下回り、足回りを洗うようにするのが間違いありません。忙しいから今度でいいか…、などとさぼっていると、気が付けば下回りがサビだらけなどということになっている可能性もあります。サビは一度発生してしまうと完全に取り除くのは困難です。だからこそできる限りサビさせないように手入れをしましょう。

サビ対策にアンダーフロアの
コーティングや塗装もおススメ

さらに、念を期すなら車体のアンダーフロア部分に下回り塗装や、コーティングをしておくのも良い選択です。市販でもスプレー式の防錆剤が販売されているので、作業場所やジャッキなどが用意できればDIYで塗布することも可能です。

ただし、完全に油汚れや塩分などを除去してからではないと効果が期待できないので、万全を期すならプロに頼むのが一番です。リース車の場合はその際、あらかじめリース会社にアンダーフロア塗装を行って問題ないか確認しておいた方がいいでしょう。塗装だからダメとなる可能性はないとは思いますがもしNGとなった場合は塗装でなくコーティングをすればいいでしょう。これなら見た目にも変わりません。

ただしコーティングの防錆効果は塗装よりも落ちます。コーティングを施しても、毎シーズン冬の前にサビが発生していないがチェックするのが良いでしょう。もしサビが発生していたらサビを落としてもらい再度コーティングを行います。こうすておけば万全です。

ネットで検索すると塩害用防錆塗装やアンダーフロア塗装、アンダーフロアコートなどクルマの下回り専用の塗装や、コーティングのメニューを用意しているショップなどが多数見つかるはずです。値段はそれなりにしますが、その分効果も高いので検討してみてください。

ただ、コーティングや塗装を施していても、サビの可能性は完全になくなるわけではありません。念のためこまめに洗車することは忘れないでください。季節柄寒くて大変ですが、冬場の洗車習慣をつけておくのが、サビには一番効果的な対策となるはずです。