イモビライザーの標準化やセキュリティシステムの進化、さらにドライバーの意識向上もあって年々着実に減少している自動車盗難事件。しかし、確かに減ってはいますが決してゼロにはなっていません。最新のクルマでは、盗難できないように様々な仕組みが導入されているのにもかかわらず、犯罪者側の手口も巧妙化しておりどんなに用心していても完全に防ぐには非常に困難なのです。

当然ですが、それは購入されたクルマだけに限りません。リース車両も同じように犯罪者のターゲットになりえるのです。ではもしリース車両が盗難にあったらどうすればいいのでしょうか?車両盗難被害の現況や万が一の対応の仕方、さらにリースの場合の補償などについて調べてみました。

車両盗難は
年々着実に減っている

警視庁が発表している統計データによると自動車の盗難認知件数は年々着実に減少しています。直近の2019年では1万件を大きく割り込み7,143件です。これは9年前、2,010年(盗難認知件数2万3,970件)に比べるとなんと1/3以下まで減少しているということになります。

犯罪の減少は非常に喜ばしいことですがこれもドライバー側の防犯意識が高くなっていることや、イモビライザーや盗難警報装置、さらに監視機能付きドライブレコーダーなどといった、自動車盗難を防ぐ装備の普及が進んでいるなど、盗難に対する各種対策が、功を奏しているからなのででしょう。

つまりは自動車窃盗犯にとって、簡単にクルマを盗める環境ではなくなってきているということになります。しかし、それでも自動車盗難はなくなっていません。特に海外で高値が売りさばける高級モデルや希少車などに関しては、むしろリスクは高まっています。常に盗難のリスクにあると思ったほうがいいでしょう。盗みにくいなら狙うのは高額でさばけるクルマにする、犯罪者の視点から見ればそうなるのはわかります。

今後盗難に特に気を付けなくてはいけないのが90年代の国産スポーツモデルです。それは、日産のスカイラインR32、R33のGT-RやマツダのRX-7、ホンダのNSXやインテグラタイプR、さらに三菱のランサーエボリューションなどといった人気モデルたちです。

これらのクルマはかつてアメリカ市場に投入されなかった(投入されたものもあります。)モデルたちで、アメリカ特有の25年ルールによって最近になってようやく輸入がゆるされたクルマです。

これらのクルマは映画ワイルドスピードや、ゲームのグランツーリスモの効果で、世界中で人気を博しながら、アメリカでは決して乗ることができなかったというもの。しかしようやく25年たってアメリカでも乗ることができるようになったのですから現在熱狂的なアメリカのマニアたちが現在こぞって買いあさっているのです。

そのため、現在日本国内にあるこういった90年代スポーツモデルがどんどん海外に輸出され驚くような高値で売買されています。つまり今海外に輸出すれば高値が期待できるということですね。そのうえこういった90年代のクルマは最新のクルマほど盗難対策がされていません。当然自動車窃盗犯にとっては格好のターゲットということになります。もしこういったクルマを大切に乗っているならくれぐれも気を付けてください。最低限セキュリティシステムは取り付けておくべきでしょう。

安全なはずのスマートキーでも
車両盗難の被害に合う?

かつての名車だけでなく最新のクルマも、もちろん安心はできません。いうまでもなくカーリース車両もです。特に今注意しておかなくてはいけないのがスマートキーを使用したクルマでしょう。最近特に増えていますよね。スマートキーはリモコンのスイッチによって開錠操作しなくても、キーをポケットに入れていたり、車内に置いておくだけでドアの施錠と解錠、エンジンスタートやトランクのロック解除などができる便利なもの。

このスマートキーはイモビライザーと呼ばれるセキュリティシステムとも連動しているので本来極めて高度な盗難防止効果を持つとされています。でも、このスマートキーの機能を悪用した自動車盗難事件が最近非常に増えてきているのです。

そもそもスマートキーが操作不要で持っているだけでドア開錠などができるのは、キーからクルマ向けて、常に微弱な電波を発信しているためです。

そして、キーを持った状態でクルマに近づきドアノブなどに触れると、クルマ側からも高周波と呼ばれる電波をスマートキーに発信。そして暗号情報などを含んだIDを照合して、そのクルマの正しいキーを持ったオーナーが近くにいるということを判断。OKとなればドアを開錠されエンジンスタートが可能となります。

電波が届く範囲はだいたい100〜130㎝前後。クルマに相当接近しないとドアの開錠もエンジンのスタートもできません。ですから正規のキーを盗むなどしない限り本来は盗難できないはずなのです。

最新の車両盗難手口
リレーアタックとは?

しかしそんなスマートキー搭載車を狙った盗難手口『リレーアタック』が増えてきているのです。リレーアタックはスマートキーならではの特性を悪用した盗難手口なのですがどのようにスマートキーを搭載したクルマを盗み出しているのかというとこのように行われています。

まず、窃盗犯は盗むべきターゲットのクルマを決めます。そしてそのクルマのオーナーがクルマから離れるのを確認し犯人グループのうち一人がそのオーナーに接近します。レストランやお買い物であれば他人が接近するのも不自然ではありませんし難しくありませんね。

先ほど説明したようにスマートキーからは常に微弱な電波が発信されているので、その電波を特殊な中継装置を使い受信します。そしてその特殊な装置でさらに電波を増幅してターゲットとなっているクルマの付近に待機する犯人グループのもうひとりに送信します。つまりスマートキーが発信している電波を特殊な装置を使ってリレーしているわけです。だからリレーアタックといわれるのです。

リレーされているとはいえそれは本来のスマートキーから発信された電波ですから当然クルマは近くに正規のスマートキーがあると誤認してしまいます。そして窃盗犯によってドアロックが解除されエンジンも始動されてしまい、そのままクルマを運転して持ち去られてしまう(盗まれてしまう)というわけです。

ちなみに外出先での盗難被害のケースを説明しましたが、自宅であってもリスクはあります。普段クルマのキーはどこに保管していますか? もし家の玄関近くにスマートキーを置いているならいますぐやめましょう。玄関に置かれたスマートキーの電波でも、場合によっては受信されてしまいリレーアタックの標的になってしまう可能性があるのです。実際に自宅車庫に停めておいたマイカーが盗難の被害にあったというケースもあります。くれぐれも気を付けてください。

リレーアタックを
防ぐにはどうしたらいい

ただ、こういった犯罪被害のケースが徐々に知られてきたことで自動車メーカーももちろん対策をはじめています。例えばスマートキーに節電モードを搭載し、ボタン操作で微弱な電波が飛ばないようにできるものなども増えてきているようです。

電波自体を飛ばさなければ当然リレーアタックはできませんね。簡単なことですがクルマを降りるたびに手動でボタン操作をするのはちょっと面倒かもしれませんし、急いでいるときにはつい忘れてしまう可能性があるので万全とはいえませんが、操作を習慣化すればリスクが確かに低くなるでしょう。

ただし、こういった機能を搭載したスマートキーはすべてクルマに採用されているわけではありません。ではそのような場合はどうすればいいのか? 非常に簡単な防犯対策があります。それはスマートキーを電波遮断するものにしてしまえばいいのです。

最近はリレーアタックを防ぐ専用の電波遮断ポーチなども売られています。さらにキーケースでも電波を遮断する機能を持ったものがあります。また、自宅であれば、金属製の缶に保管するというのもいいでしょう。こういったものにスマートキーを入れてしまえば電波が外に漏れだすことはありません。たったこれだけでリレーアタックが防げるのですからやらない手はないですね。もし、何も対策していないという方はすぐにいずれかのアイテムの導入をすぐに行ってください。

では、そのような対策をしておらず、使用していたリース車が盗まれてしまった! という場合どうすればいいでしょうか。どんな対応すればいいのか、また、リース料金などはどうなるのでしょう?

リース車両の盗難が発覚
どうすればいいのか

リース車両の所有者名義はリース会社ですが、使用者はリース契約者であり管理責任もいうまでもなくリース契約者になります。もし、契約しているリース車両が盗難にあったと気づいたら、まずはどうするか。とにかく落ち着いてすぐに警察に連絡しましょう。そして被害届を出します

届け出は最寄りの警察署または交番で行ってください。必要なものは、車検証(自動車検査証)など登録内容がわかる書類と印鑑です。また、本人確認が可能な公的な証明、免許書なども必要です。警察署では盗難された日時や場所などの状況や気づいた日時などを聞かれます。盗難届を提出し受理されると、盗難届の受理番号を取得できます。この受理番号が盗難届を提出したという証明になり、後にクルマが発見されたときに返還などの処理もやりやすくなります。

警察に届け出をだして車両が見つかればラッキーです。ただし、もし、盗まれたのがスマートキーを搭載した車両であった場合、組織的な犯行である可能性が高く盗難車が見つかる可能性は正直なところ低いといわざる得ないでしょう。それでもそのクルマの管理者としての責任があるのでとにかく、速やかに警察に盗難届け出は出してください。

ところで、盗難被害の届出の際には車検証が必要ですが、車検証は普段どこに保管していますか。書類入れなどに入れクルマのグローブボックスに保管されている方がほとんどではないでしょうか。事故などによって紛失や破損などということもあるかもしれません。万が一のことを考えて車検証のコピーは別途取っておき、別の場所に保管しておくことをおススメします。言うまでもありませんが、必ず車内とは別の場所に保管しておいてください。

カーリース車両が盗まれたら
高額の中途解約金が請求される

カーリース車両が盗難され、さらに盗難届を出しても見つからなかった場合。肝心のリース契約はどうなるのでしょう。ほとんどの場合契約が強制解約となり、リース会社から中途解約金を請求されることになります。事故などでリース車両を全損させたのと同じ扱いですね。

気になる中途解約金ですが、残っているリース料にクルマの設定残価を加えたものとなります。かなりの金額を一括で支払う義務を負うことになるわけです。クルマが盗難にあった上に、すでに手元にないリース車両のリース料金(+残価)の全額を一度に払えなんて厳しいですよね。

残念ながらカーリースを利用していればこのようなリスクは常にあるわけです。ですからそのようなことに備えて是非加入しておきたいのが盗難に対する補償がついたカーリース向けの任意保険です。

カーリース向けの
任意保険なら盗難補償もあり

通常の任意保険の車両保険でも自動車盗難の際の補償が受けられるものがありますが、多くの場合補償される金額が低く、カーリースの中途解約金の方が高くなってしまうケースが少なくありません。しかしカーリース向け任意保険の車両保険であればリース車の盗難までカバーされており、リースの中途解約金補償が受けられるのです。入っておけばこういった万が一のケースでも高額な違約金を払わずに済むわけですね。

カーリース会社によっては独自にカーリース向けの任意保険を用意しその費用をリース料金の中に組み入れられる場合もあります。用意されていなくても自動車保険会社に問い合わせせればリース契約向けの任意保険が用意されているはずなので別途加入するようにしましょう。

ただ、すべての車両盗難のケースで必ず保険金が支払われるというわけではありません。キーを車内に置いたままクルマから離れるなどクルマの管理を怠っていた場合、契約者の過失となり保険金が出ないケースもあるので気を付けてください。

盗難をカバーした保険に
加入していても万全の対策を

盗難の被害を防ぐには日ごろから用心深く、スマートキーなどもしっかりと管理しておいてください。まれにコンビニなどで車内にキーを置いたままクルマから離れている人を見かけますが、絶対にそのようなことはやめましょう。そのような管理をしていてはせっかく保険に入っていても無駄になってしまいます。

これは購入したクルマでもリース車両でも変わりませんが、クルマが盗まれてしまってからでは遅いのです。クルマを持つ(リースしている)ドライバーであればでき得る限りの対策を行いそのうえで万が一を想定し、しっかりとした保険にも加入しておくべきなのです。もしかしたら次はあなたが車両盗難の被害者になるかもしれません。とにかく用心を欠かさないように万全の対策を行っておきましょう。