乗用車はマイカー向け、商用車は仕事向け、あなたはそのようにはじめから決めつけてはいませんか?でもそんなルールがあるわけではありません。商用車をマイカーとして使ったって別に構わないのです。

例えば個人向けカーリースでは、乗用車だけでなく商用車も数多く用意されています。つまり自宅用のマイカーとして商用車をリースしたってかまわないわけです。

また、そのように商用車のリース車を選びそれをマイカーとしてうまく活用しているかたも実際にいます。そこには何かメリットなり魅力があるはず。それは何なのか?今回は商用車リース車のマイカー利用について検証してみましょう。

商用車は仕事専用!
ファミリーカーには使えない?

個人向けのカーリースでマイカーを選ぶ際、ほとんどの場合選択肢として上がるのはミニバンやSUV、セダンなどといった乗用車でしょう。ファミリーカーとして家族や友人を乗せるのが目的ならそれが妥当な選択です。

しかし、個人向けカーリースでは、そんな乗用車以外にもライトバンやワンボックスバン、トラックなどの商用車も用意されています。もちろん仕事用のクルマとしてリース車を利用したい方がいるからです。それをわざわざマイカーとして選ぶ方はそうは多くないはずです。乗用車ではなく商用車は貨物車なのですから。

カーリース会社のサイトに商用車が並んでいてもおそらく多くの方はこう考えるはずです。

「商用車は業務用だから企業が社用車として使用するものだし、自分には関係ない…」

確かに商用車は荷物を運ぶことを主な目的としたクルマです。設計や装備内容もファミリー向けのマイカーとしては向いていないかもしれません。でも、頑丈さは間違いなく乗用車以上。それにシンプルなボディはスペース効率も最高。それでいて今どきの商用車は装備だって乗用車に匹敵するほど充実しています。必須の安全装備も標準化が進んでいますし燃費に優れたハイブリッドカーだって選べる。そう考えると、商用車が意外に魅力的な存在に思えてきませんか?

メッキギラギラでやたらデコラティブな最近のミニバンに、そろそろ食傷気味の方もきっといるはずです。でも商用車なら質実剛健でシンプルかつ実用性も満点です。まさにプレーンな素材ですから自分なりの一台にドレスアップする楽しみも味わえるでしょう。

例えばハイエースなどは商用車グレードがファミリーカーとしても人気ですし、ライトバンの人気車種であるプロボックスをあえてマイカーとして使用する方も増えています。なんだかちょっと魅力的で面白い選択だと思いませんか。

でも、商用車をマイカーにするなんて…。と思う方もいるでしょう。確かに日本では商用車のイメージはあくまで仕事用ですからそう考えるのも仕方がありません。でも、海外では実はこういったこと決して珍しいことではないのです。例えばアメリカです。アメリカでは、貨物車をマイカーとして使用するのがむしろ常識。多くのドライバーがマイカーとして商用車を利用しているのです。

商用車ピックアップトラックが
アメリカでは一番人気

それはなぜか?アメリカでは商用車、貨物車であるピックアップトラックが圧倒的な人気を誇っているからです。広い国土を持ち、買い物も週末にまとめ買いが当たり前、さらに都市部を除けば整備されていない道路も決して少なくないそんなアメリカでは、悪路に強く大きな荷台に大量の荷物も積め、なおかつタフなピックアップトラックこそベストなチョイスだからです。

今では世代を問わずピックアップトラックこそクールなクルマというイメージもあるといいます。そのためアメリカでは高級車以上の豪華装備を満載したゴージャズで高価なピックアップトラックが驚くほど売れているのです。

それを普通にファミリーカーや、スポーツカーがわりに乗りこなすという文化がアメリカではしっかり根付いているのです。では実際のところアメリカではピックアップトラックがどれくらい売れているのか?

アメリカの2020年上半期自動車販売ランキングを見てみると、1位はフォードのFシリーズです。そして2位がシボレーのシルバラードで3位がラム(ダッジから独立したトラックブランド)のピックアップとなっています。この3車日本ではなじみがありませんがすべてピックアップトラックです。上位1~3位がなんとすべてピックアップトラックなのです。

世界では環境問題が叫ばれているのに燃費の決して良くはない巨大なピックアップトラックが売れまくっている。ちょっと違和感がありますが、アメリカではいまだにこれが当たり前です。

実用目的にも使用されているのでしょうが、基本的には乗用目的。豪華でパワフル、憧れのクルマという位置づけです。こういった考え方なかなか面白いですよね。

とはいえ巨大なピックアップトラックを、日本で同じように、マイカーとして乗るのは無理があります。でも、商用車、貨物車をマイカーとして使用する、ということはおかしくはない、賢い考えではないかとは思えてはきませんか。

人も乗れて荷物も運べる。耐久性抜群でランニングコストも安い。商用車をマイカーとして選ぶ、その選択にダメな理由は見当たりません。とはいえ乗用車と商用車について実際のところ何が違うのか、そもそも肝心のことをちゃんと把握されている方は少ないはず。そこでその違いについていったん整理してみましょう。

ステーションワゴンとライトバン
形はほとんど同じ。何が違う?

日本で個人向けの商用車といえばピックアップトラックではなくライトバンでしょう。ライトバンは車種こそ減っていますが、かつてはステーションワゴンとライトバンに同じボディを使用し、複数の車種をラインナップしていた自動車メーカーも少なくありませんでした。

例えばトヨタのカルディナとカルディナバン、さらにカローラワゴンとカローラバンもそうです。日産もアベニールとアベニールカーゴ、ウイングロードとADバンなどがありました。こういった兄弟車は見た目がほとんど一緒でした。クルマにあまり詳しくない人なら見わけもつかないでしょう。そもそもボディシェルがおなじなのですから当然といえば当然ですね。でも乗用車のステーションワゴンと貨物車であるライトバンには明確な違いがあります。それはなんなのか?

基本的には商用車は貨物車ですから、ライトバンの場合、主役は荷物です。つまり人を乗せるよりも荷物をたくさん載せることを目的としています。そのため、後席スペースよりも荷室が大きくとられています。

また、補強が入るなど荷室部分の作りも頑丈になっておりフロアは鉄板むき出し。さらにそれを支える足回り、サスペンションも固められているため、汚れを気にせず重い荷物でもガンガン積み込むことができます。

後席はあくまでおまけです。人を乗せることはできますが板のような座面と直角に近い角度まで起きた背もたれ。足元スペースも狭く正直快適ではありません。まさに貨物車輌です。

それに対して乗用車であるステーションワゴンは、主役は人間です。人を快適に運ぶことが主目的なのです。そのため快適な後席スペースを持ち、それにプラスして広い荷室も確保されているといます。後席スペースと荷室のバランスも圧倒的に後席スペースのほうが広くとられておりシートの作りも上質です。その分荷室が狭く(それでも十分広いですが)、また重量物を積み込めるような作りにはなっていません。

ライトバンと同じように重量物を積み込めば、ソフトで快適なサスペンションが底つきしてしまうこともあります。そのような使い方は想定されてないのです。ステーションワゴンは乗用車なのですから当然です。

商用車は実用車
装備面で見劣りする部分も

このような構造的な部分の違いに加え、商用車は装備に関して、多くの場合は乗用のモデルよりも見劣りする(例外もあります)ことが多いです。例えばオーディオはAM/FMラジオだけだったり、エアコンもマニュアルのみなんてことも珍しくありません。廉価なベースグレードではパワーウィンドウやオートドアロックさえ付いていないものもあります。

最近は安全に関しては厳しい目で見られるので自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)などは標準化が進んでいますがそれ以外の先進安全装備はオプションであったり、車種によってはオプションでも用意されていなこともあります。インテリアなどもシンプルでちょっと荷物が当たったくらいではダメージを受けないようプラスチックの素材そのものだったりするなど、装備面に関しては一部を除いてかなり見劣りすることが多いといえるでしょう。

さらに最大のネックは居住性です。運転席はまだしも後席が狭いのです。これは法規上どうしようもない部分もあります。商用車、貨物車は荷室フロア面積が1㎡(軽自動車は0.6㎡)以上なくてはならず、後席使用時は後席の面積より荷室面積の方が大きくなければなりません。

また、後席使用時、後席乗員重量より荷室に積載できる重量のほうが大きいこと、という規定があるのです。そのためスペースが確保しにくいのです。

トヨタのハイエースや日産のキャラバンなど広さに余裕のあるワンボックスバンなどの例外はありますが多くの場合後席に快適な居住スペースは期待できません。ライトバン系ではシートの座面が短く背もたれも低い。さらに背もたれは直角に近い角度でリクライニングもできず、シート表皮は汚れが拭き取りやすいチープなビニールがほとんど。そこに家族を乗せることになれば、おそらく苦情が出ることでしょう。

基本が貨物車なのでしょうがないともいえますが、同乗者の快適性をトッププライオリティとしてクルマ選びをするならば商用車は選択肢から外れてしまうかもしれません。

ランニングコスト安さも
商用車ならではの大きなメリット


(引用:トヨタ公式HP)

でも、コストの面では商用車にアドバンテージがあります。まず車両価格が安い。プロボックスの中でも乗用車的に使える充実装備のグレード“F”は1.5Lのガソリンエンジンでバンパーやミラーなどもボディ同色塗装。オートエアコンにメッキ装飾などがディーテルに施され前後ファブリックシートも装備。それでいて172万7,000円です。そして最も安いベースグレードのDX 1.3Lなら139万9,200円。

同等の車格といえるステーションワゴンのカローラフィールダー(カローラツーリングはベースグレードでも200万円オーバーなので比べるならフィールダーとなります)と比較すると、フィールダーはエントリーグレードで169万8,400円、主力グレードで181万8,300円。プロボックスの方がリーズナブル(装備の差があるので一概には言えませんが)です。さらにプロボックスならハイブリッドが185万3,500円から用意されているというのも魅力的ですね。

そして、車両価格よりも大きな差は税金です。自動車税はプロボックスの場合ライトバンで最大積載量1トン以下排気量1,000超、1,500cc以下となり、さらに5名乗車できるので乗用客車としての割り増しがあって年間1万4,300円となります。

対してフィールダーは乗用車ですから排気量1,000超、1,500cc以下の区分となり自動車税は年間3万500円(2019年10月1日から自動車税引き下げ)です。その差額は1万6,200円

また、車検ごとにかかる税金、重量税に関しては乗用車であるカローラフィールダーが2万4,600円(2年)なのに対してプロボックスは6,600円(1年)。比べると差額は同じ2年で1万2,600円となります。結構な差ですね。

加えて任意保険に関しても商用車、貨物車なら年齢条件がない。つまり割高となってしまう若いドライバーであれば、乗用者よりも安く契約できるというわけです。これは非常に大きなメリットでしょう。

カーリースの場合、税金の支払いも月々のリース料金に含まれるのでこういった税金は直接負担するわけではありません。しかし、その分は払っていないわけではなく、リース料金に加味されている。つまり税金が安ければそれだけ月々のリース料金の負担も軽くなるはず。長い目で見れば支払総額を抑えることができるのです。

広い荷室にシンプルな内装
車中泊仕様のベースにもぴったり

シンプルな商用車だから好きにドレスアップできるというのも魅力といえるかもしれません。ただ、カーリースの場合は、改造が原則禁止なのでできることは限られます。でも、例えば車中泊車として使うというのはどうでしょう。広くフラットな荷室にベッドになるマットや取り外しできる棚などを組み込むと簡易キャンパーに使えます。

乗用モデルだとシートをたたんでも完全なフラットにはなりませんが商用車なら貨物スペースなので完全フラット。内装もシンプルなので荷室のスペースギリギリまで活用できます。余計な装飾も少ないので好きなアイテムを簡単に取り釣ることもできるでしょう。それでいて本格的な改造ではなく、車中泊仕様程度であれば原状復帰もできる。カーリース車でもおそらく問題ないはず。

乗用のミニバンやSUVを車中泊仕様に改造するよりも、ワンボックスやライトバンに就寝スペースを組み上げる方が簡単ですし、効率も良いはずです。価格が安く、月々の支払いを抑えることができるならば、予算の余裕でそういった楽しみ方も広がります。

またキャンプや釣り、マリンスポーツやウインタースポーツなどといったアウトドアが趣味なら、荷室までカーペット張りの乗用モデルよりも汚れてもすぐに拭き取れるビニール張りの商用車のほうが使い勝手もよいはず。

こうして考えると特に趣味に使いたいならマイカーとして商用車を選ぶことの良さが少しずつ見えてきます。だからこそ、あえてバンをマイカーとして選ぶ方が徐々に増えているのではないでしょうか。

車検は一年ごと。乗り心地も固く
快適性には我慢も必要

とはいえ、もちろんデメリットもあります。例えば車検です。軽自動車を除いて商用車は基本毎年車検を受けないといけません。そのわずらわしさはあるかもしれません。

また、乗り心地なども乗用車にはかないません。重い荷物を積んでも車体が耐えられるようにサスペンションなどが固いうえ、シートクッションも厚くはないのでどうしても快適性で劣ります。その辺は我慢を強いられる部分もあります。

それに見た目はやはり商用車。自宅の車庫に商用車が止まっていれば「何か工事でもやっているのかな?」などとご近所さんに思われてしまうかもしれません。そういったネガティブな面も確かにあるでしょう。

でも、今の乗用車にはないクルマとしての素の魅力が味わえるのは商用車ならではのもの。他人と同じものはイヤ、個性的なクルマをマイカーとして使いたい!などと考える方は、家族の説得や、使う上での工夫は必要ですが商用車をマイカーとして検討してみてはいかがでしょう。

個人向けのカーリースでも多数の商用車が用意されています。いつもはスルーしているかもしれませんが、この機会に一度目を向けてみてはいかがでしょう。意外に自分の使い方にマッチした一台が見つかるかもしれません。