ホンダの大ヒットコンパクトミニバンといえばフリードです。5ナンバーのコンパクトサイズに、広々とした室内空間と多彩なシートアレンジを持つマルチに使えるフリードはホンダの中でも屈指の大ヒット車です。

そんなフリードですが、兄弟車としてフリード+(プラス)というクルマがあるのをご存じでしょうか。外観は全く一緒なのですが中身がちょっと違うバリエーションモデルです。

でもいったい何が違っているのでしょうか? 単なるグレードの一つではないのか? またフリードとフリードプラスお得なのはどちらなのか? 詳しく検証してみました。

フリードシリーズが
累計台数100万台を突破!


(引用:ホンダ公式HP)

先日ホンダからフリードシリーズの累計販売台数が100万台を突破したとアナウンスされました。初代モデル登場が2008年5月ですので、登場から13年で爆発的に売れたということになります。これはすごいことです。

ちなみに現在販売されているフリードは2016年に発売となった二代目モデルです。基本的なコンセプトは初代と変わらず、5ナンバーサイズの扱いやすいコンパクトなボディに広い室内空間と多彩なシートアレンジを持つ使い勝手も抜群の小型ミニバンとなっています。

加えて現行モデルは、燃費もよくなり経済性にも優れ、先進安全機能も満載。またミニバンながらホンダ車らしいスタイリッシュなデザイン外観も持っておりもちろん扱いやすさも一級品でファミリーカーとして魅力満点。だから登場から5年も経過しているのにもかかわらずいまだに売れ続けているのでしょう。

それを裏付けるように2021年上半期の軽自動車を除いた自動車販売台数ではフリードは見事第9位でした。これは、ホンダの登録車としては2021年上半期で一番売れたということになります。ホンダにとっての主力車種ともいえる新型FITよりも売れているのです。現行フリードはモデル末期と言われながらそれだけ売れているのですから本当に驚きです。

ホンダというと軽のスーパーハイトワゴンであるN-BOXの人気(軽自動車を含めると2021年上半期の販売台数2位がホンダのN-BOX)ばかりが目立っていますが実はホンダの隠れたベストセラーカーがフリードなのです。

見た目は全く変わらないのに
中身が違う兄弟車とは


(引用:ホンダ公式HP)

フリードはカーリース車としても非常に人気の高いクルマです。特にファミリードライバーにとっては、このちょうどいいサイズ感と優れた使い勝手は大きな魅力と映るのでしょう。解放感満点の快適な室内と優れた安全性は家族で使うにもちょうどよく、広いスペースを生かしてアウトドアなどの趣味に使うにも適していますし、また流行りの車中泊にもぴったり。そのため、幅広い層から人気を集めているようです。

そんなホンダフリードですが、兄弟車としてフリードプラスというモデルというかバリエーションが用意されていることをご存じでしょうか。グレードの一つという扱いとなっているので、つい見逃してしまいがちですが調べてみるとこれが意外に魅力的なクルマとなっているのです。

その見た目はフリードと全く変わらないので何がどう違うのか理解されていない方も多いでしょうが、実はボディの後ろ半分がまるで別物で、キチンと造り分けられています。では具体的にどのような点が違っているのでしょうか。

3列シートの6/7人乗りがフリード
2列シートの5人乗りがフリードプラス


(引用:ホンダ公式HP)

フリードとフリードプラスの違いは、実はシンプルです。3列シート版がフリードなのに対し、2列シート版がフリードプラスとなっています。

「それじゃ単なるグレードの一つじゃないか!」

そう思われるかもしれませんが、わざわざ+(プラス)と別の車名にしているくらいなので、単に3列目シートを取りさっただけではないのです。

フリードの派生車種としては先代モデルにはフリードスパイクというクルマがありました。このフリードスパイクがようするに今のフリードプラスの先代に当たります。

フリードスパイクはフリードをベースに3列目シートを取りさり広々とした荷室を確保したクルマ。クルマとしての基本はベースのフリードと変わりませんでしたが、グリルやヘッドライト、バンパー、フェンダーといったフロント周りのデザインを専用とすることで、見た目の印象を大きく変えていました。

また、リアシートはワンモーションでダイブダウンすることができ、広くフルフラットなスペースを簡単に作ることができ、ラゲッジスペースには棚やスポットライト、ドリンクホルダー、ビルトイン式テーブルなどまで備わっていたのです。さらにリアクォーターウインドウをガラスではなくパネルでふさぎその裏側にサイドポケットを設けるなど、レジャーでの使い勝手を大きく向上させた仕様でした。

そんなレジャービークルともいえる旧フリードスパイクの後継車がフリードプラスというわけです。フリードプラスはフリードスパイクとは違ってベースとなったフリードと外観的には差別化されていません。その点ちょっと物足りなさを感じる部分はありますが、荷室に関しては先代のフリードスパイク同様にしっかりと作りこまれています。

ちゃんと2列目シートの後ろからバックドアにかけては、フロアの構造ごと設計し直しており、その使い勝手も大きく異なっているのです。

2階建てのラゲッジスペースは
大人二人が楽々寝られるほどの広さ


(引用:ホンダ公式HP)

まずバックドアの形も開口面積も違います。よく見るとバックドアがクルマのフロアぎりぎりから開くようなデザインとなっていることがわかるはずです。実はほんのちょっと(30㎜)だけ全長もフリードより長い。これはバックドアとリアバンパーの構造の違いによるもの。そしてそんなバックドアをガバッと空けると大きな開口部が現れます。

高さ1,255㎜で幅が1,080㎜ととにかくでかい。さらも開口部の地上高は335㎜とこれまた低い。ベースとなったフリードの開口部は高さ1,110㎜×幅1,080㎜、そして地上高は480㎜。車体が同じなので幅こそ変わりませんが天地方向に145㎜も大きいのです。この差はかなりのもの。フロアも非常に低いので重い荷物や高さのあるものでもストレスなく積み込むことができるでしょう。バックドアを全開にして、後ろからフリードプラスのラゲッジスペースを除くと、その大きさと奥行きの余裕にきっと驚くはずです。これならどんな大きな荷物だって積み込むことがきっとできるはず。

そして、ただ広いだけでなく、天地方向の余裕を生かして荷室をフロアボード(取り外し可能)で分け上下二階建て構造にしています。そのため荷物を効率的に収納することができる。

さらにこのフロアボードはリバーシブルになっていて反転させると濡れた荷物でも気にすることなく積み込むことができるワイパブル仕様(撥水になっていて水分を簡単に拭き取れる)になっているので、スキーやスノボ、マリンレジャーなどのスポーツギアも汚れを気にせず乗せることが可能です。カーペット敷きのフロアではこうはいきません。

加えてこのフロアボードは非常に丈夫な構造となっていて耐荷重はなんと200kg。大人を乗せてもびくともしません。セカンドシートをダブルフォールダウンで収納して「おやすみモード」にした時にはこの上に大人二人が余裕で寝ることができます。

おやすみモード時の荷室スペースはほぼフラット。奥行きも185cmあるので大柄な男性でも足を延ばして余裕で寝転がれる広さを確保

ちょっと残念なのはわずかながら段差ができてしまうこと。先代のフリードスパイクは、後席をたたむだけでほぼ段差のないフルフラットにすることができたのでその点だけが少しだけ残念です。

しかし、ちょっと工夫して段差埋めるように薄いマットなどを敷けば快適な就寝スペースを作ることもできます。ホンダからはフリードプラス用の純正アクセサリーとしてこんなアイテムも用意されています。

参考サイト:https://www.honda.co.jp/ACCESS/freed/interior/luggagecushionmat/?from=camp

こんなマットを敷けばかなり快適な寝心地を得ることができそうです。そして、このようなおやすみモードとしていても荷室が二重構造になっているのでフロアの下面スペースに十分な荷物用スペースが確保できるというのも素晴らしいですね。

車中泊をするとなった時にいちいち荷物を外に出して整理する必要がありません。二階建ての一階部分に詰め込んでおけばいい。車中泊やキャンプなどに使い勝手の良いとても優れたラゲッジスペースとなっているのです。

フリードプラスはフリードよりも
少しだけ価格は高めの設定


(引用:ホンダ公式HP)

そして気になるのは価格ですね。フリードプラスはフリードよりもシートが1列分減っているので当然価格に関しては安いのか…、というと実はそうではありません。比べてみると若干ですが高めとなっています。

フリード(CROSSTAR、Modulo X除く)が199万7,600円~279万8,400円なのに対してフリードプラスは218万2,400円~282万400円です。

199万7,600円のフリードはシリーズ最廉価グレードなので除くとして、ほぼ同じ装備のグレード同士で比べるとフリードプラスのほうがだいたい2万円ほど高くなっています。

シートが1列少ないのに、値段がちょっと高いというのが不思議ですが、車体後方スペースやバックドア、そして2列目シートの構造などが別物となっていますし、荷室用ユーティリティーボード、ユーティリティーナット、テールゲートランプ、タイダウンフック(FF:4ヵ所/4WD:2ヵ所)、DC12Vのラゲッジルーム内アクセサリーソケットといったフリードプラス専用の装備などが追加されていることを考えれば妥当でしょう。

3列目シートが不要であるなら、こういった便利装備が追加されていた方が間違いなく便利なはずですし、どれも、キャンプや車中泊といったレジャー用途には役立ってくれるでしょう。そしてフリードプラスをさらに魅力的なクルマにしてくれています。追加装備だけでも2万円以上の価値は十分あるでしょう。

3列目シートが本当に必要なのか
一度冷静に考えてみるべし


(引用:ホンダ公式HP)

フリードプラスがフリードとどう違うのか、また、その特徴や魅力などがご理解いただけたでしょうか。クルマとしての基本的な部分や見た目はほぼ同じですが、比べてみるとそれぞれ明確に個性があることが分かったはずです。

もし、フリードの購入、もしくはリース契約を検討中で「もしかしたら使うかもしれないから…」そんな消極的な理由で3列目シートを装備したフリードを選ぼうとしているなら、一度今までのカーライフでどれだけ3列フルに使ったことがあるのか考えてみてください。

もし、過去を振り返えってみて、常にシートをたたみっぱなしでほとんどそんな機会はなかった、のであればむしろ3列目スペースを広く合理的なラゲッジスペースとしたフリードプラスのほうがあなたにはあっているのではないでしょうか。

キャンプグッズやアウトドアスポーツアイテムをたっぷり積めて、いざというときには快適な車中泊スペースも得られるフリードプラス、むしろこちらを選んだ方があなたと家族のカーライフの楽しみをより広げてくれるかもしれません。